【辛い腰痛を解消】多裂筋の重要性と効果的なストレッチ&トレーニングを紹介!
公開日:2024.08.14
文:服部 恵実(理学療法士・ピラティスインストラクター)
あなたは「腰が痛くて悩んでいる」「腰痛を改善するストレッチはないの?」とお悩みではないでしょうか。腰痛と関連のある筋肉はいくつかありますが、その中でも特に「多裂筋」という筋肉は重要な筋肉です。
当記事では、腰痛と多裂筋の関連性と腰痛改善のためのストレッチ&トレーニングを紹介します。あなたの辛い腰痛を解決するためにお役立ていただけますと幸いです。
目次
多裂筋とは?簡単な役割と解剖学を解説!
多裂筋は、腰痛と関係があり重要な筋肉ですが、「初めて聞いた」「どんな筋肉なの?」と疑問に思う方も多いでしょう。そのため、まずは多裂筋の役割と解剖学について簡単に解説します。
【中学生でもわかる】多裂筋の解剖学
多裂筋は背中の筋肉のうちの一つで、頸(くび)から腰にかけて背骨のすぐ横を走っています。上下の背骨を結び、名前の通り多くの細かな筋肉が走っていることが特徴的です。
下記に具体的な走行を説明します。
・仙骨後面
・全腰椎の乳様突起
・全胸椎の横突起
・第4〜5頚椎までの関節突起
・腰椎以上軸椎までの棘突起
特に、腰部のボリュームが大きいと言われています。
【知っておきたい】多裂筋の役割
多裂筋の代表的な役割は、背骨を安定させ姿勢を保持する働きがあります。
また、先ほど解説した解剖学からもわかるように、背骨を細かく動かす働きもあります。動く方向は収縮の仕方によって異なり、両側の多裂筋が働くと背骨は伸展し、片側が働くと回旋や側屈するのです。
多裂筋と腰痛の関連性とは?
解剖学と役割からもわかるように、多裂筋は脊柱の安定性にとても重要な筋肉です。よって腰部の多裂筋が萎縮したり、脂肪変性することで、腰椎の安定性が低下し腰痛に繋がる可能性があるのです。
実際に、多裂筋の萎縮が腰痛患者の約80%に認められると研究からも言われています。1)
まずはここから!腰痛改善のための多裂筋ストレッチ
腰痛の原因は様々なので、個々の要因にあった対応をしてくことが重要です。ここでは多裂筋が萎縮していることが腰痛と関連している方に向けての対処方法を紹介します。
使えていない筋肉は硬くなっていたり、他の組織との滑りが悪く働きにくい状態になっている可能性があります。そのため、まずは多裂筋のストレッチを行いましょう。
チャイルドポーズ
首から腰にかけて走っている多裂筋を伸張させながら、背中に呼吸を促すことでゆっくりと多裂筋を緩めていきます。
⒈まずは正座の姿勢になりましょう。
⒉前屈をし、おでこと手のひらを床につけます。
⒊背中が広がることをイメージし、呼吸を続けましょう。
キャットアンドカウ
次に、背骨を動かす運動を行なっていきます。多裂筋は背骨と背骨を結ぶように細かくついている筋肉です。背骨を一つずつ動かすことを意識して行っていきましょう。
⒈まずは四つ這いの姿勢になります。肩の下に手首、股関節の下に膝がくるようにセットしましょう。
⒉息を吐きながら、お尻の穴を下に向け、背骨を全体的に丸めます。
⒊息を吸いながら、お尻の穴を天井に向け、背骨を全体的に反らしていきましょう。この時、お腹の力が抜けて腰を反らないように、しっかりと手で床を押しながら行います。
【最重要】腰痛改善のための多裂筋トレーニング
腰痛予防や改善のためには、多裂筋が機能することが重要です。ストレッチをして動かしやすい状態をつくることができたら、多裂筋を使うエクササイズを行っていきましょう。
多裂筋エクササイズ(うつ伏せ)
次にうつ伏せ姿勢で行います。腰部多裂筋はウエストラインの高さでボリュームが大きくなるので、可能な方は触って確認しながら行ってみましょう。
現在すでに腰が痛い方は、やり方を間違えると悪化する可能性があるため、指導者のもと行うようにしてください。
1.うつ伏せになり、足幅は拳1個分にしましょう。
⒉膝を伸ばしたまま、足を持ち上げます。
⒊ウエストラインの背骨の横に力が入る感覚を感じます。
多裂筋エクササイズ(四つ這い)
最後に四つ這いでの方法を紹介します。
1.四つ這いの姿勢になります。肩の下に手首、股関節の下に膝がくるようにします。
⒉右手と左足のように対側の手足を上げていきましょう。体が左右にぶれたり、腰が反ったりしないように意識しましょう。
⒊可能な方は、足を外に開く(股関節外転する)とさらに多裂筋の活動が高まります。
日頃から意識したい!腰痛予防に効果的なセルフケア3選
腰痛予防、改善のためのストレッチとエクササイズを紹介しましたが、それ以外にも日常的に意識できることはあります。
日々の積み重ねが体にも影響を与えますので、ぜひ今から紹介するセフルケアを取り入れてみてください。
こまめに立ち上がる
同じ姿勢をとり続けることは、筋肉を硬直させたり椎間板への圧が高まるため、腰痛のリスクも高まります。特に座っている姿勢は、椎間板内圧と呼ばれる背骨の間のクッションの役割をしている組織に対する圧が高まりやすい姿勢と言われます。その結果、椎間板の損傷や変性を引き起こす可能性があるのです。
よって、長時間に渡り同じ姿勢で座るのではなく、こまめに立ち上がることをお勧めします。
良い姿勢を意識する
良い姿勢を意識することで、多裂筋の収縮は入りやすくなります。
耳の後ろ、肩、大転子(太ももの横のでっぱり)、外くるぶしの2〜3cm前が一直線上にある姿勢を目指しましょう。
骨盤に関してさらに詳しく解説すると、両側の腰骨の前の骨(ASIS)と恥骨を結んだ三角形が、床に垂直になるように合わせます。
最終的には、意識をしなくても良い姿勢が取れることが理想的です。
手を振って早歩きをする
本来、手を振り歩くことができていれば、背骨が捻れ自然と多裂筋が使われています。しかし、スマホを見ながら歩いていたりすることで、手の振りが行われないと体の捻りが不足するため、多裂筋を十分に使えていないことが多いのです。歩く際にはしっかりと手を振り歩きましょう。
また早歩きを含む歩行運動が、慢性腰痛患者の痛みを改善したり、腰痛の予防に効果的だということも言われています。2)3)
よって外を歩く際には、しっかりと手を振りながら早歩きをすることをおすすめします。
まとめ
今回は、腰痛の改善に重要な多裂筋について、解剖学やストレッチ方法を解説しました。
あまり聞きなれない筋肉だったかもしれませんが、腰痛とは切っても切れない重要な筋肉です。マッサージなどで一時的に腰痛が改善をしたとしても、多裂筋が使えていないと再発するケースも散見します。
ストレッチを行うことで多裂筋を使いやすい状態にし、鍛えることで腰痛の改善、予防を目指しましょう。
さらに、日頃からできる腰痛予防の習慣も紹介しました。忙しいあなたが腰痛に悩むことなく過ごせるように、ぜひ取り入れていただき腰痛の改善に繋がれば幸いです。
参考文献
1)Kjaer, P., Bendix, T., Sorensen, J. S., Korsholm, L., Leboeuf-Yde, C. “Correlation between multifidus fatty atrophy and lumbar disc degeneration in low back pain.” European Spine Journal, 2007.
2)Hurley DA, Tully MA, Lonsdale C, et al. Walking Exercise in the Management of Chronic Low Back Pain: A Clinical Trial. American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation. 2015;94(4):241-251.
3)Shnayderman I, Katz-Leurer M. Physical Activity and Chronic Low Back Pain: The Role of Walking. Journal of Rehabilitation Research & Development. 2013;50(1):1-10
服部 恵実
大学卒業後、理学療法士として大学病院に勤務。集中治療室や救命救急病棟にて手術後や集中的な全身管理が必要な方などを始め、計33診療科でのリハビリテーションを担当。その中で予防医療の重要性を痛感したため心臓リハビリクリニックへ移り、生活習慣病の再発予防を運動や食事など多方面からアプローチを行う。さらに本質的な予防医学を伝えていくには病院外で活動していく必要性があると感じ、ピラティスインストラクターへ転向。現在は、インストラクターや医療従事者向けの講師やオンラインサロン運営を行なっている。
Instagram:@_emiitreat_
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