行政で働く管理栄養士・栄養士とは?仕事内容や給料も
管理栄養士や栄養士の代表的な職場として病院や学校、保育施設などが挙げられますが、管理栄養士・栄養士はその他にもさまざまなフィールドで活躍できます。その1つが、保健センター、保健所などの「行政機関」です。
行政機関で働く管理栄養士や栄養士は「行政栄養士」と呼ばれています。当記事では、行政機関で働く管理栄養士・栄養士の主な仕事内容、給料事情、勤務形態などについて詳しく紹介します。管理栄養士・栄養士として、地域住民の健康に貢献したい方は、ぜひご覧ください!
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目次
行政機関で働く管理栄養士・栄養士とは?
管理栄養士・栄養士の職場には、病院や学校のほかに保健所、保健センターなどの行政機関もあります。行政機関で働く管理栄養士・栄養士は「行政栄養士」と呼ばれ、地方公務員として勤務することになります。
行政栄養士の具体的な勤務先は、都道府県や市町村が管轄する役所や保健所、保健センターなどです。主な役割は「地域住民の健康の維持・増進に貢献すること」であり、地域住民が抱える健康問題の解決に取り組んだり、健康政策を立案したりします。
行政栄養士の業務の対象は「すべての地域住民」で、年齢層は乳幼児から高齢者までさまざまです。そのため、行政栄養士は一人ひとりに適した健康サポートを臨機応変に行うことが求められます。
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行政栄養士の主な仕事内容
行政栄養士を目指す方は、あらかじめどのような仕事を任されるかを把握しておきましょう。
職場によって行政栄養士の業務内容は異なりますが、住民への栄養指導や講習会の開催、飲食店の衛生指導、学校給食の栄養管理の支援などを務めるのが一般的です。
ここからは、厚生労働省の「地域における行政栄養士による健康づくり及び栄養・食生活の改善の基本指針」をもとに、行政栄養士の仕事内容をより詳しく紹介していきます。
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担当地域の健康・栄養状態を分析する
行政栄養士の重要な仕事の1つは、地域住民の健康や栄養の状態について把握し、問題があれば解決に向けて適切な栄養指導を行うことです。そのために、行政栄養士は住民の暮らしや食習慣などを幅広く調査し、健康診断結果などとあわせて総合的に健康・栄養の状態を分析します。
健康・栄養状態の悪い地域が見つかった場合、行政栄養士は自治体や医療機関などと連携しながら改善に向けた支援を行い、地域差をなくすように努めます。
(出典:厚生労働省「地域における行政栄養士による健康づくり及び 栄養・食生活の改善の基本指針について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/eiyou_b.pdf)
生活習慣病の発症・重症化を予防する
多くの生活習慣病は、食生活などをあらためることで、発症や重症化を予防できる可能性があります。栄養指導や啓蒙活動によって、生活習慣病の予防に貢献することも、行政栄養士の重要な役割と言えるでしょう。
行政栄養士が生活習慣病リスクを抱えた住民に栄養指導を行う際は、対象者に食習慣と健康の関係を正しく理解させ、自発的な行動変容を促すことが重要です。
(出典:厚生労働省「地域における行政栄養士による健康づくり及び 栄養・食生活の改善の基本指針について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/eiyou_b.pdf)
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子どもと高齢者の健康を守る
子どもと高齢者の健康は、行政栄養士が特に守らなければいけないものの1つです。そのため、乳幼児の発育状況を調査して、肥満や栄養不良などの問題を特定したり、妊娠前の母親の栄養状態を改善して、低出生体重児の減少を目指したりすることも、行政栄養士の役目となります。痩せや肥満といった問題を抱える児童が見つかったら、教育委員会などと連携しながら解決に向けた対応について調整します。
また、行政栄養士は、栄養指導や講習会の開催などを通じて、高齢者の健康増進や身体機能の維持、介護予防などにも努めます。
(出典:厚生労働省「地域における行政栄養士による健康づくり及び 栄養・食生活の改善の基本指針について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/eiyou_b.pdf)
食を通した社会環境の整備
行政栄養士は「食」を通して地域の社会環境の整備も行います。具体的には、下記のような取り組みが挙げられます。
- ●学校や病院、福祉施設など、大量に給食を提供する施設の栄養管理状況を把握し、適切な支援・指導を行う
- ●ヘルシーメニューの提供に取り組む飲食店の普及拡大を推進する
- ●地域における栄養ケアなどの拠点を整備する
- ●地域の保健・医療・介護・福祉の質を高めるため、管理栄養士・栄養士の育成を行う
- ●食育を推進する
上記のように「食」に関係する取り組みを日々行いながら、地域全体の健康づくりを推進することも行政栄養士の重要な仕事です。
(出典:厚生労働省「地域における行政栄養士による健康づくり及び 栄養・食生活の改善の基本指針について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/eiyou_b.pdf)
災害時・非常時の栄養管理
行政栄養士は、地域で災害、食中毒、感染症、飲料水汚染などの非常事態が起こった場合の栄養食事管理も行います。特に、地震や台風などの災害が多い日本では、災害発生時における健康危機管理への対応がとても重要です。行政栄養士は、停電や断水が発生したときに備えて食料を備蓄したり、各関連機関と調整しながら救援体制を整備したりします。
近年では、子どもから高齢者まで、アレルギー疾患を抱える方も多いため、災害時や非常時に、食物アレルギーへの配慮が必要な住民に専門的な栄養支援を行うことも、行政栄養士の重要な役割です。
(出典:厚生労働省「地域における行政栄養士による健康づくり及び 栄養・食生活の改善の基本指針について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/eiyou_b.pdf)
仕事内容から指導ポイント・職場探しまで
行政栄養士の現状
行政機関で働く管理栄養士・栄養士は公務員となるため、民間の企業や施設に勤める管理栄養士・栄養士とはさまざまな点で扱いが異なります。
ここからは、相違点を3つピックアップしながら、行政栄養士を取り巻く現状について詳しく紹介します。
行政栄養士の配置
厚生労働省が発表したデータによると、2020年時点で、保健所および市区町村の地域保健事業に関わる行政栄養士(管理栄養士・栄養士)は計4,309人でした。行政機関別の人数は、下記の通りです。
【行政機関別】保健所および市区町村の地域保健事業に関わる行政栄養士 | |
---|---|
(1)都道府県の保健所 | 716人 |
(2)政令市・特別区(保健所を含む) | 925人 |
(3)(2)以外の市町村 | 2,668人 |
また、同データによると、行政栄養士のなかの栄養士数は直近3年間でほぼ変化がありませんが、管理栄養士数は年々増加しています。
その理由として挙げられるのは、「地域包括ケアシステムの整備が進んでいること」です。地域包括ケアシステムを構築するうえでは、高齢者の栄養管理、栄養指導の役目を担う管理栄養士(行政栄養士)の存在が欠かせません。そのため、行政栄養士を積極的に配置する動きは、今後も継続されるでしょう。
(出典:厚生労働省「令和2年度地域保健・健康増進事業報告の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/c-hoken/20/dl/R02gaikyo.pdf)
行政栄養士の給料
総務省が発表している2021年のデータによると、各手当を含めた行政栄養士の平均月給は388,685円です。
(出典:総務省「令和3年地方公務員給与の実態」/https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/kyuuyo/r03_kyuuyo_1.html)
ただし、この金額はあくまでも行政栄養士を含む薬剤師・医療技術職(地方公務員)の平均値であり、実際には保有している免許が管理栄養士・栄養士のどちらなのか、どの職場でどのようなポジションを担っているのかなどによって、大きく異なることに注意しましょう。なお、一般的には、管理栄養士免許を取得しているほうが給料は高くなる傾向にあります。
行政栄養士の勤務時間や待遇
行政栄養士の職場は都道府県・市区町村の役所、保健所、保健センターや自治体が運営する介護施設など多岐にわたり、雇用形態や待遇などの勤務体制もそれぞれ異なります。
下記は、一般的な行政栄養士の募集例です。
勤務時間 | 午前9:00~午後18:00 |
---|---|
休日 | 土日祝・大型連休(GW・お盆など)・年末年始 (年間休日数:110~125日) |
待遇 | 社会保険完備・育児休暇有・資格手当有など |
具体的な条件は職場によって異なるため、求人情報で事前にチェックしておきましょう。不明な点、気になる点などがあれば、応募あるいは面接時に確認するようにしてください。
職場別の仕事内容・平均給与・資格の取得方法も
まとめ
行政機関で働く管理栄養士・栄養士は「行政栄養士」と呼ばれます。行政栄養士の主な仕事内容は、健診結果の分析や栄養食事指導、地域住民の健康管理、食を通した社会環境の整備、災害時・非常時の栄養管理など、多岐にわたります。
また、行政機関で働く管理栄養士・栄養士は地方公務員となるため、民間の企業や施設に勤める場合とは給料や勤務形態が異なります。
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※当記事は2022年12月時点の情報をもとに作成しています
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