生活(自立)訓練事業所で働くOTの仕事 生活に密着した訓練ができる!
公開日:2023.02.23

文:鎌田康司(作業療法士)
私は現在、障害福祉サービスの生活訓練(自立訓練)事業所で、成人の精神障害者の方の支援に携わっていますが、生活訓練事業でOTとして働くことにとても魅力を感じています。すでに10年近くも勤務していますが、今でもやりがいに溢れています。
全国的にもまだまだ数少ない事業所で働く数少ない作業療法士ですが、そんな私が大好きな生活訓練事業について、たっぷりご紹介していきます。
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生活訓練(自立訓練)事業について
まず、私が現在勤務している生活訓練事業の概要についてご説明いたします。
「障害福祉サービス」のなかに自立訓練事業があり、「機能訓練」「生活訓練」「宿泊型自立訓練」の3種類の事業があります。
いずれのサービスも、障害のある方に対して自立した生活が営むことができるよう、必要な訓練を行うことが目的となります。
機能訓練は「身体機能」の維持・向上を図ることが目的ですが、生活訓練と宿泊型は「生活能力」の維持・向上が目的となります。
以下はそれぞれの特徴を図に示したものです。
| 機能訓練 | 生活訓練 | 宿泊型自立訓練 | |
|---|---|---|---|
| 訓練内容 | 身体機能 | 生活能力 | 生活能力 |
| 主な対象者 | 身体障害 | 精神障害 | 精神障害 |
| 主な従事者 | PT、OT、STなど | SW、OTなど | SW、OTなど |
機能訓練のサービスは障害福祉サービスで、セラピストが実施する身体障害リハビリテーションをイメージして頂けるとよいかと思います。
頚髄損傷、難病、高次脳機能障害、視覚障害などの障害者に対し、リハビリテーションを実施するサービスですが、ほかのサービスと比較しても、事業所数の少なさが課題かもしれません。
生活訓練と宿泊型自立訓練はいずれも、生活能力の維持・向上を主な訓練内容として支援を行いますが、宿泊型の場合、居住の場を提供することが大きな違いとなり、自宅を離れ、一定期間施設に宿泊を行いながら自立を目指した訓練を実施します。
対象者の6~7割は精神障害者で、従事者は社会福祉士、精神保健福祉士などのソーシャルワーカーや作業療法士のほか、生活支援員として資格の定めのないスタッフも多く従事しています。
訪問支援と通所支援について
ここからは私が現在従事している生活訓練について、さらに詳しくご紹介をしていきます。生活訓練事業では、「訪問支援」と「通所支援」の2通りの支援が可能です。各事業所によって、訪問に力を入れて支援を行っている事業所、訪問は実施していない事業所もあり、その形態はさまざまです。
訪問支援と、通所支援のそれぞれの内容は次のようになります。
訪問支援
利用者の居宅を訪問し、普段その方が生活している環境の中で、必要な訓練を実施する1対1での個別支援が「訪問支援」です。
主な対象者である精神障害者の方のなかには、自宅から外出することが難しい方や、掃除や料理などの家事、金銭の管理や行政手続きなどの支援を必要としている方がいます。
例えば統合失調症の方の場合、幻聴などの陽性症状により嫌がらせを受けてしまい、不安や恐怖を抱いている場合もありますし、陰性症状により外に出る気力や意欲が低下してしまっている方もいます。
今までのサービスは事業所に通所してもらうことが前提だったため、このような方には、来てもらうことしかできませんでしたが、訪問支援は、その方の普段生活している環境で、普段使用している物を使用して訓練を行うため、訓練した内容が、そのまま生活に活かせるのが大きなメリットです。
例えば掃除機の使用に関しても、メーカーや機種によって、紙パック式なのかサイクロン式なのか、お手入れの方法、実際に吸い込めているかなどさまざまです。その方の普段使っている物を知り、その方の使い方を知ることで必要な支援も見えてきます。
掃除機はほんの一例ですが、そのようにその方の普段暮らしている生活に密着し、「環境を知る=アセスメントする」ことが、生活能力の維持・向上を図るうえでとても重要なことが理解できるでしょう。
また、この後説明する通所支援に向けて、訪問支援で関わりながら、関係性の築けたスタッフと一緒に通いに移行することが可能なのも、生活訓練事業の強みです。
通所支援
通所支援は、利用者の方が施設や事業所に通い、プログラムや作業に参加してもらう支援になります。
通所支援も対象の障害によっては、生活能力の維持・向上を図るために行われるものになります。
生活を送るには、食事や身だしなみ、体力やコミュニケーション能力、余暇活動や就労スキルなどさまざまな能力が必要となりますが、対象となる方の困っていることや希望することなどのニーズを確認しながら、生活訓練の目標を設定し、訓練を行っていきます。
支援を必要とする方々が集うことで、「自分だけではない」という安心感を得たり、自分の存在を他者に受け容れられるようになることで自分自身も受け容れられるようになります。
大切なのは、人と人との相互作用と、その方にもともと備わっているストレングス(強味)や能力を活かすことです。さらに、具体的な体験を通した目標設定の見直しを繰り返しながら、希望や願いが叶えられるように支援を行うことが重要になります。
利用期限(24か月)であることの意味
生活訓練の利用期限は最長で24か月となっており、期限の定めがあることから「通過型」のサービスともいわれます。
利用期間は人によってさまざまで、目標を達成して数か月で終了となる方もいれば、24か月フルに利用する方もいます。
期限があることに対し、私は初めの頃は、「もう少し長い経過で支援ができれば」「サービス終了後に向けて支援を行うことは難しい」など、ネガティブに捉えていた時期もありました。しかし今は、期限があることをポジティブに捉えられるようになりました。
それは、期限の中で支援できることには限界がありますが、だからこそ、その期間の中で本当に必要なことが何なのかを見極め、モニタリングを重ねながら、お互いのビジョンのすり合わせ、目標の達成に向け伴走することができるからです。
また、サービスの終了が近づくにつれ、これからのことを具体的に考えられるようになることや、動き出すことができるようになる方も多く、期限という区切りがあるからこそ、できる支援もあると感じています。
生活訓練で働くOTの役割とやりがい
こうした訓練によって、今までできなかったことができるようになったり、必要ないと思っていたものが必要だと思えるようになったり、考えられなかったことが考えられるようになったりします。
本人も、気づけなかった小さな変化を重ねていくことで大きな変化につながるため、そのような支援ができることは、仕事の大きなやりがいになっています。
生活訓練事業で勤務する作業療法士はまだ多くはありませんが、居宅を訪問してその方の暮らしを知り、通所ではその方とその方の周りの人がもたらすさまざまな影響を活用することができるなど、自宅や事業所などで、生活に密着した支援を展開できることは、生活訓練だからこそできる関わりだと感じています。
地域で働くOTとして、1人ひとりの暮らしを考えたい
今回は私が勤務している生活訓練事業についてお話をしました。もちろん、事業所によって大切にしていることも、関わり方もさまざまですが、生活に密着した支援が行える生活訓練事業は、日々の仕事の中でやりがいを感じることがとても多く、私の大好きな事業です。
地域で働く作業療法士として、1人ひとりの暮らし・生活を構成するさまざまな作業に目を向け、その作業のもたらす効果や、意味や重要性について、今後も考え続けていけたらと思っています。
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鎌田 康司
得意分野は精神科、高齢者、訪問看護、障害福祉サービス、施設マネジメント、地域ケア。
介護老人保健施設で勤務後、精神科単科の病院で院内作業療法を経験。患者さんの実生活を知るため、地域の訪問看護ステーションに転職。今は生活訓練という障害福祉サービスの管理者として、精神障害や発達障害、知的障害の方たちの地域生活のサポートをしている。3人の子どもがおり、子育てと家事にも奮闘中。
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