医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

マイナビコメディカル
マイナビコメディカル

医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

糖尿病療養指導士ってどんな資格なの? ~資格取得者がたっぷり解説~

公開日:2023.06.09 更新日:2024.01.11

糖尿病療養指導士ってどんな資格なの? ~資格取得者がたっぷり解説~

文:菊池佳世
(理学療法士)

私は理学療法士の免許を取得後、7年目で日本糖尿病療養指導士の資格を取得しました。

現在、理学療法士が関わる疾患は多岐にわたり、分野の細分化が進んでいます。高齢化とともに重複障害が増えていますが、それらのなかで糖尿病は最も多い疾患といえます。

糖尿病と糖尿病予備軍を含めた人口は約2,000万人(2016年国民健康・栄養調査)にも達しています。さまざまな障害や疾患の要因となる糖尿病の理解を深め療養を理解することは、内部障害の理学療法診療だけでなく、幅広い分野で活かすことができるはずです。

そこでこの記事では、日本糖尿病療養指導士の資格概要や、私が取得したきっかけ、メリットについて説明したいと思います。

日本糖尿病療養指導士とは糖尿病療養のエキスパート

日本糖尿病療養指導士認定機構は、「日本糖尿病学会」「日本糖尿病教育・看護学会」「日本病態栄養学会」が協力して2000年に設立されました。
目的は、糖尿病患者さんの健康と福祉の向上と、糖尿病療養指導についての豊かな知識と経験をもつコメディカルスタッフの育成です。
その目的のためにつくられた資格が「日本糖尿病療養指導士(Certified Diabetes Educator of Japan)」で、「CDEJ」と略されます。

CDEJは糖尿病治療でもっとも重要となる、「患者さんが病気を自己管理すること」をサポートするスタッフです。理学療法士のほか、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師が、医療法で定められたそれぞれの医療職の業務に則って、エキスパートとして療養を支えます。
現在、18,591名のCDEJが全国各地で活躍しており、そのうち1,273名が理学療法士です。

糖尿病は本人も知らないに間に進行してしまう病気です。救急車で搬送されて初めて糖尿病だとわかることもあります。初期は無症状のため、病気になってすぐに大変な思いをすることはありません。
結果として、健康診断などで高血糖を指摘されても受診をしなかったり、治療を継続しなかったりする人が多くいます。
そのため、多職種が同じ認識をもち、糖尿病はなぜ治療が必要なのか、どのように療養すればいいのかを説明しながら患者さんにかかわることで、病気や合併症の受け入れを促すことができると考えています。

しかし、あくまでも理学療法士は法で定められた範囲での業務しかできず、血糖を測定すること、インスリンを注射することはできません。そのため、糖尿病の知識をもち、理学療法を行いながら糖尿病の理解を深めるお手伝いをすることになります。

資格取得はリスク管理のため

糖尿病療養指導士ってどんな資格なの? ~資格取得者がたっぷり解説~

私は養成校卒業後、さまざまな疾患を診ながらリスク管理を学ぶつもりで急性期総合病院に就職しました。臨床では初めて聞く疾患も多く、毎日のように文献を開くようになりました。
理学療法診療をするうえでリスク管理は必須ですが、処方箋の対象疾患、合併症、併存疾患に、糖尿病やそれに付随する合併症がたくさんあることに気がつきました。

糖尿病は高血糖が原因となって血管が損傷を起こし、脳梗塞、心筋梗塞、下肢動脈閉塞、腎不全や糖尿病性足壊疽など、さまざまな病気の根源となります。
糖尿病という病気を理解することで幅広い分野の診療に活かすことができると考え、勉強することを決意しました。

受験には2年以上の療養指導経験が必須

CDEJの試験を受験するためには一定の条件があります。
資格取得を考えている人は、下の条件に合っているかをまず確認しましょう。

1. 看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士のいずれかの資格を有していること
2. 過去10年以内に2年以上継続して勤務し糖尿病患者の療養指導業務に従事、かつこの間に通算1,000時間以上糖尿病患者の療養指導を行ったこと(日本糖尿病学会専門医または日本糖尿病学会の会員である医師が受験者を指導していること、などの条件がある)
3.「糖尿病療養指導業務に従事した期間」に携わった糖尿病療養指導の自験例が10例以上あること
4. 日本糖尿病療養指導士認定機構が開催する講習を受講していること

[参考]
日本糖尿病療養指導士認定試験 受験資格

試験までの道のり。年単位の計画が必要

試験申し込みから認定証を受け取るまでは約1年かかります。書類提出や受講期間はそれぞれ限られているため、しっかりと計画することが大切です。流れは次のようになります。

1. 受験の申し込みをする。
2. eラーニングで15~20時間の講習を受け受講修了証をもらう。
3. 受験申請書類一式と糖尿病療養指導自験例のレポート10例を提出する。
4. 受験資格審査通過の連絡が来たら客観試験の予約をとる。
5. 試験を受ける。

私が受験した際は定められた受験会場で一斉に試験を受けましたが、現在はCBT(Computer Based Testing)方式で決められた期間に所定の受験会場を各自で予約し、90分+90分の計180分間で120問の試験を受けるようになっています。

私が考えるいちばんの試験対策

いちばんの試験対策は事前の講習会をしっかり聞くことです。特に複数のセッションで説明される内容は重要項目で、出題されやすくなります。
機構が発行する『糖尿病療養指導ガイドブック』を繰り返し読み、たくさん過去問を解くことで問題の傾向がわかってきます。落ち着いて答えを選択できるように、言葉の言い回しや検査方法など、単語の理解を深めておくとよいでしょう。

自験例10例はさまざまな病態、経過があるとレポートが書きやすくなります。日々の診療で気づいたこと、工夫したこと、多職種とのディスカッション内容を書き留めておくと症例を決めるときやまとめがスムーズにいきます。
チームカンファレンスであがった課題や対策も多職種の視点がわかり、とても参考になりました。私は指導医に添削していただきましたが、それができればベストだと思います。

この資格を得るためには時間がかかります。しかし、準備期間もそれだけあるということです。療養指導をしながら勉強することでより実践的になり、記憶にも残ります。試験を受けようと決めたときから計画的に進めるとよいと思います。

合格率はどれくらい? 2021年度は95.2%

2017~2021年度(2019年は中止)の合格率を見てみましょう。

2017年度 2018年度 2020年度 2021年度
全体 PT 全体 PT 全体 PT 全体 PT
受験者数 1646 172 1676 166 2177 205 1094 97
合格者数 1455 146 1536 155 2068 192 1041 91
合格率(%) 88.4 84.9 91.6 93.4 95.0 93.7 95.2 93.8

合否判定はCBT方式による客観試験および糖尿病療養自験例の記録がいずれも合格水準に達していることが条件となります。試験での合格基準点は発表されていません。

[参考]
CDEJ合格率

資格取得のメリットは?

糖尿病療養指導士ってどんな資格なの? ~資格取得者がたっぷり解説~

私の勤務する病院では残念ながらCDEJの資格手当はありません。理学療法診療でも糖尿病療養指導は保険算定できませんので、病院のメリットがないからだと思います。

しかし、2022年4月の診療報酬改訂で糖尿病性足壊疽が運動器疾患別リハビリテーションで算定できることになりました。これまで以上に糖尿病に対する理学療法が重要視されている表れといえます。

糖尿病療養は食事療法、運動療法が第一選択です。それでも改善がなければ薬物療法が開始されます。

糖尿病予備軍を糖尿病に進行させないためにも理学療法士の知識は欠かせません。療養にかかわる多職種のスタッフが一定のレベル以上で疾病を理解し、療養の知識をもってディスカッションできることはチームの強みになります。

理学療法士は患者さんと1対1でかかわる時間があります。どの分野で診療するにしても、糖尿病や糖尿病予備軍、一緒に療養を支える家族の方々に知識を還元できると思います。

資格維持のためには? 5年ごとに更新

CDEJは5年ごとに更新が必要になります。更新は受験時と同様に、日本糖尿病療養指導士認定機構が行う講習会の受講、糖尿病療養指導自験例のレポート10例、それぞれの医療資格において学会参加などで取得できるポイントが20ポイント、糖尿病関連学会などでのポイントが20ポイント必要となります。

糖尿病関連の学会だけでなく理学療法学会などの研修会にも参加して、自己研鑽する必要がありますので、受験より更新のほうが大変かもしれません。

しかし、学会参加で最新の知見を得たり、これまでは参加しなかった医師や看護学会に参加してほかの職種の視点を学んだり、自分が成長できるメリットもたくさんあります。

CDEJの資格を取得すると臨床がおもしろくなる!

糖尿病にかかわらず、プラスαの知識をつけることは自分の視野が広がることにつながります。やってみたいと思ったときが始めどきです。

私はCDEJの資格を取得して臨床がさらにおもしろくなりました。興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。

菊池佳世

菊池佳世(理学療法士)

理学療法士/日本糖尿病療養指導士/認定理学療法士(代謝)/心臓リハビリテーション指導士/呼吸療養認定士/介護支援専門員

2002年より急性期総合病院に勤務。急性期リハビリテーションのほか、老人保健施設や通所、訪問リハビリなどの介護保険分野、離島での診療も経験。2019年、院内下肢創傷ケアチームの立ち上げに携わり、足病患者のリハビリテーションに日々奮闘中。

今よりさらに良い環境で働けるよう
キャリアドバイザーが全力でサポートします
\今すぐ1分で完了/

    <PR>マイナビコメディカル

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  •  LINEで送る

他の記事も読む

おすすめ

TOPへ