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リハビリテーションの意味を問い、もう一歩先の介助へ

公開日:2017.06.02 更新日:2021.04.08

文:福辺 節子
理学療法士/医科学修士/介護支援専門員

はじめまして、福辺 節子と申します。これからセラピストプラスで、リハビリテーションと介助に関するコラムを執筆させていただきます。よろしくお願いします。

私が理学療法士になったのは1985年、今から30年以上前のことです。このコラムを読んでくださっている方の中にはまだ生まれていなかったという方もいらっしゃるでしょう。

現在の主な活動は、リハビリテーション関連のセミナー主催のほか、施設・病院・在宅などでのスタッフやご家族への指導・アドバイス、そのほか依頼による講習会や講演会などですので、通常のPTのお仕事とは少し異なるかもしれません。

セミナーや講習会では、介助、ハンドリング、シーティング(ポジショニング)、アセスメント、認知症、リハビリテーション論などを講義しています。その中でもメインは「介助」です。「介助」というと、よく「介護」と間違われます。決まった定義はないので、私は、「介助」とは「寝返り・起き上がり・立ち上がり・移乗・歩行などの基本動作のサポート」と定義しています。セラピストの概念では、「ハンドリング」と考えていただいてよいと思います。

私が紹介している介助は、現在の日本の医療や介護でなされている介助とは少し異なっています。私の介助と現状の介助の違いや、何故、私が介助のセミナーを始めるようになったのか、というところから、障がいとは何か、リハビリテーションやICFの概念をセラピストの仕事のなかでどのように具現化させていくのかをお話ししていきたいと思います。

介助セミナーでは、対象者の立場に立って「相手(と自分)を感じること」を課題に講習を行っています。

私が理学療法士という職業を知ったのは、私自身が理学療法を受ける立場になったことがきっかけです。私は大学3年生まで医学や福祉にも全く興味がなく、理学療法士という職業があることすら知りませんでした。大学3年生の1月に交通事故にあい、傷からの感染によって左下腿を切断しました。切断に至る経緯と義足装着までのリハビリテーション、障がい受容の過程については拙著『人生はリハビリテーションだ』(教育資料出版会)に詳しく書いてありますので、よろしければご覧になってください。

皆さんが学んだように、障がいを持った人は「ショック期」「否認期」「葛藤期」「受容期」などを経て受容に至ります。しかし受容に至るまでの期間については、どの文献を見ても明確にされてはいません。私自身、自分が障がい者であったのにもかかわらず、養成校で習った頃は、半年か1年程度でそのプロセスが完了するものだと思っていました。

しかし今、自分の体験から振り返ると、障がいの受容は半年や1年で終わるようなものではありませんでした。私のような「下腿切断」という、義足をつけてしまえば社会的にもほぼ支障のない軽度の障がいであっても、その状態を受け入れるまでに10年ほどの年月を要しました。
1つのサイクルが半年~1年で終わっても、受容のプロセスは深まりながら何度も繰り返して訪れます。特に中枢性の疾患や進行性の障がいでの受容は、より難しいように思います。

私がPTになり、「介助」をライフワークにしたことに意味があるとすれば、セラピーや介助を受ける方の立場、気持ちに寄り添いやすいということでしょうか。私がセミナーや講演会でお伝えしている「対象者の力を引き出す介助」は、まさしくその体験から生まれた介助かもしれません。介助される側に立てば、介助者が一方的に動かす介助や力任せの介助は考えられなくなります。

では、セラピストは自分に障がいがなければ、介助される側の立場に立てないのでしょうか?

そんなことはありません。でも努力は必要です。もちろん、生得的に対象者の立場に立てる人もいます。しかし多くの人の場合は、「障がいとは何か」について熟考し自分なりの答えを出すこと、あるいはセラピーや介助をする際に相手を感じるための訓練が必要です。私が主催する介助セミナーでも、「相手(と自分)を感じる」ことを最初から最後までの習得課題にしています。

次回のコラムでは、私が介助セミナーを始めるまでの経過をお話ししたいと思います。

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