日米の小児病院で行われている吃音改善のアプローチ
公開日:2015.05.21 更新日:2015.06.01
吃音の訓練については、古くからさまざまな方法が検証されてきました。今回は、子どもの吃音に焦点をあて、国内の言語聴覚士による取り組み例や、ボストンの病院で行われている吃音改善のアプローチについてご紹介します。
子どもと大人の吃音症状の違い
吃音の症状は語の引き伸ばしや単語の繰り返しから始まり、進行すると音や単語を言うのに時間がかかるブロックという症状もみられるようになります。子どもと大人の場合で大きく異なる点は、吃音に対する本人の認識です。子どもの多くは、自分がことばをうまく話せないことに気づいていません。一方、大人は、自分が吃音であることを自覚しているケースがほとんどです。そのため、それぞれに対する言語聴覚士のアプローチは異なります。
子どもに対するアプローチ
言語聴覚士は、子どもの吃音症状に応じてアプローチを考えていきます。一般的に、音の繰り返しや引き伸ばしが多い子どもは症状が軽く、言葉が全く出てこないブロック症状やそれに付随する身体の動きが出てくると、症状が重いと考えられます。また子どもが、自分の吃音症状を自覚している場合としていない場合でもアプローチが変わります。
たとえば吃音が出始めて間がなく、子どもが話しにくいことに気づいていない場合は、言語聴覚士が話すスピードを調整する、話をゆっくり聞く態勢をつくるなど環境を整えます。その上で保護者にも、話をじっくり聞く時間を作ることや生活をゆったりとしたものに変えるなどのアドバイスを行います。
反対に、吃音症状が長く続いてブロック症状などが出ており、吃音があることを自覚している子どもの場合は、吃音症状をコントロールするために、一つの音を引き伸ばして話す方法や自分の吃音症状を事前に感じるための方法、吃音症状が出ないことばを選ぶなどのテクニックを教えていきます。また、吃音のある子どもは上手に話せないという思いから自信をなくしていることも多いため、心理的に負担が少ない状況を設定して成功体験を積むというアプローチもとても重要です。
ボストンの小児病院の取り組み体制
創設から140年以上の歴史があり、世界でも最大規模の小児病院である「ボストン・チルドレンズ・ホスピタル」。この病院での子どもの吃音への取り組みは、基本的なメソッドから独自のアプローチを展開しています。幼児から思春期にかけての子どもに対して行われる「スピーチ・ランゲージ・パソロジー・プログラム」は、大きく分けて下記の5プログラムを軸としています。
- 嚥下障害プログラム
- 未就学児向け言語プログラム
- 言語聴覚認知プログラム
- 小児向け発声・発語プログラム
- 人工内耳のハビリテーションプログラム
これらに加えたユニークなプログラムとして、ボイスセラピーが挙げられます。週に1度、6~8週間を1サイクルとして、言語聴覚士がマンツーマンで子どもの発声に焦点を当てます。このセラピーは患者さんへの治療同様に、協力者である両親、家族への取り組み指導も重要視しています。期間中は、家庭での訓練法やサポート法を共有し、言語聴覚士と家族が一丸となって子どもの発声力の向上を目指すのです。
同病院では、幼児期の吃音が正しくケアされないと、大人になるにつれ症状が悪化していく可能性が高いと考えています。アメリカ屈指の小児病院として吃音の原因究明とさらなる改善法の発展を目指し、積極的に吃音の研究に取り組んでいるのです。
さまざまな心情に寄り添う
子どもが自分の吃音症状を自覚している場合、吃音をコントロールするアプローチとともに、吃音がある自分を肯定する見方を持たせるアプローチも必要になります。この2つのアプローチは吃音のある人の対人恐怖症、引きこもりなどを予防するために併用されることが多くあります。
また、子どもの吃音は、病院と家庭のどちらか一方の取り組みだけでは不十分といえます。今回取りあげた国内外の小児病院での取り組みのように、言語聴覚士は積極的に家庭での取り組みを促し、双方でバランスよく、また多面的に改善を図ることが大切です。
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