理学療法士だからこそ磨いておきたい「伝える力」
公開日:2015.08.10 更新日:2015.08.19
理学療法士が対象とする患者さんは、さまざまな疾患を抱えています。個別の症状を考慮したうえで、会話を進めなければいけません。リハビリを効率よく進めるためにも、相手に理解してもらえる伝え方を意識することはとても大切です。
多くの患者さんと接する理学療法士に求められる「伝える力」について、考えてみましょう。
まずは「だれに」「何を」「どのようにして」伝えるのか整理する
脳梗塞や脳出血などの脳疾患から転倒による骨折まで、理学療法士が担当する患者さんの症状は実にさまざまです。脳機能が低下した患者さんと、一時的なケガでリハビリを必要とする患者さんとでは症状が異なるように、それぞれ理解できる能力にも差があります。リハビリの内容や今後の予定について伝える際にも、患者さんの状態に合わせた伝え方を選ぶ必要があるでしょう。
はっきりした口調でわかりやすく話すのは会話の基本ですが、それ以上に大切なのが、伝えたいことを明確にすること。話したい内容を相手がしっかりキャッチできるように、「だれに」対して、「何を」伝えるのか、整理してから話しましょう。必ず覚えてほしいキーワードをピックアップすることで、より端的にまとまります。
伝える内容がはっきりしたら、評価をふまえて患者さんの状態を再確認しましょう。そのときの体調や環境によっても、患者さんの理解力は異なります。特に、初めてのリハビリの場合、患者さんは多かれ少なかれ緊張しているはず。普通なら難なく理解できることも、すんなり頭に入らないかもしれません。また、患者さんが療法士に距離を感じている場合、会話自体が成立しない可能性もあります。信頼感を高めるために、患者さんの家族構成、仕事の有無や内容、生活スタイルなど、細かい情報を収集しておくと、会話のよいきっかけとなり、円滑なコミュニケーションを促すでしょう。
高次脳機能障害を持つ患者さんへは「簡潔に」
記憶障害や社会行動障害といった認知機能の低下をはじめ、感情の起伏が大きく乱れやすいといった症状が現れる高次脳機能障害。集中できる時間が短いため、ダラダラとした長い説明は好ましくありません。わかりやすい単語を使ってできるだけ簡潔に説明し、時間をおいて伝えた内容が理解されているかを確認するようにしましょう。患者さんに無理がないよう、一度に多くのことを伝えることは控えてください。一緒に復唱したり、箇条書きのメモを手渡すのも有効です。可能であれば、本人にメモを取ってもらうと、記憶に残りやすいといわれています。ただし、忘れやすいので、メモを持ち帰るように促すことも忘れずに。
メンタル低下の患者さんへは共感を促す「ラポールトーク」を
患者さんのなかには、思うように動かない身体にストレスを感じ、感情が不安定になっている方も多いようです。自分の苦悩をわかってほしい、理解してほしいと感じている患者さんの思いをくみとり、ポジティブな思考へ促すためにも、まずは共感の姿勢を示すことが大切。
相手への共感を促すトーク法のひとつに「ラポールトーク」があります。「ラポールトーク」とは、聞き手を主体とする手法で、相手に質問し、それを掘り下げていくことで理解を深め、共感を高めるというものです。
簡単な質問であっても、患者さんの回答に対して「そうだよね」と共感を込めた返答を行いながら、さらに質問を続けます。患者さんが抱える悩みや問題を深く知ることで、今後の対応にも役立つでしょう。また、理学療法士の積極的な姿勢から患者さんの信頼感も高まり、自分の思いをわかってもらえたという安心感が生まれます。
ラポールトークを活用することで、確かな信頼関係を築くことができれば、その後の会話もスムーズになるでしょう。
理学療法士の仕事を支える「伝える力」
理学療法士は細かな情報を把握したうえでリハビリを行います。患者さんの評価に必要となる脳機能やメンタルの状態に配慮をしているからこそ、個別に適したコミュニケーションツールを選択しやすいはず。相手に合わせた対応に加えて、より理解を促す「伝える力」を磨くことで、仕事を効率よく進めることができ、理学療法士としてのスキルも高まるでしょう。
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