医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

マイナビコメディカル
マイナビコメディカル

医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

作業療法士の転職入門 ~書類・志望動機~

公開日:2019.11.29 更新日:2021.08.31

文:田口 昇平
(作業療法士、福祉住環境コーディネーター2級)


どんな業種であっても、転職の際に必ず聞かれる志望動機。作業療法士の転職においても、志望動機は重要です。

人事担当者は、面接や書類を通して応募者のやる気や志望動機を確認し、職場が求める人材と一致しているかを判断しています。

とはいえ、自分の考えはあっても、志望動機としてまとめるのはなかなか難しいものです。

筆者自身が作業療法部門の人事担当だったとき、志望動機がうまく伝えられず、不採用になった作業療法士を多く見てきました。応募者本人に明快な転職理由があったとしても、志望動機が分かりにくいと、人事担当者側はメリットを感じにくいものです。

人事担当者に自分の考えが伝わるように、志望動機はポイントを絞って作成する必要があるでしょう。今回は、人事担当者の立場から、採用につながりやすい志望動機の内容や書き方について紹介します。

志望動機に書くべき3つのポイント

志望動機とは、転職先を希望する理由を伝えるとともに、これまでの実務経験から転職先に対してどのように貢献できるかをアピールする重要な項目です。就職とは違い、転職をする作業療法士には実務経験があります。どんな転職先であっても、人事担当者が最初に見るのは、これまでの実務経験の内容です。

作業療法士と一口にいっても、職場や担当分野が異なると、サービスの提供方法やリハビリに対する考え方などが大きく異なるため、人事担当者からすると、応募者が持つ実績や経験が職場内でどのように活かせるのかが分かりません。

現場では、新たに作業療法士を採用することで、提供するサービスをより良いものにしたり、今までになかった発想を取り入れたりしたいと考えているため、応募者側は、志望動機を通してあらためて実務経験をアピールする必要があるのです。

では、採用されやすい志望動機とは、具体的にどのような内容になるのでしょうか? 押さえておきたい3つのポイントを確認しましょう。

1.自分の強み

まずは、作業療法士としての強みを伝えられるようにまとめてみましょう。「強み」と聞くと、何か特別な経験を書かなければいけないと思いがちですが、ここでいう強みとは、「仕事の中で自分が得意とする分野」を指します。

例えば、リハビリの仕事で力を入れてきた業務や、時間をかけて勉強してきた分野について、詳しくまとめるとよいでしょう。

多様な作業療法士の仕事では、人それぞれ得意とする分野も違ってくるもの。だからこそ、人事担当者に自分がどういった強みを持っているのかを伝えることで、転職先にも採用するメリットを感じてもらいやすくなります。もちろん、業務に関連する資格を取得していたり、作業療法の臨床研究を行った実績があったりすれば、それも強みになります。いずれにしても、作業療法士として注力してきた分野に自信を持ち、転職先にしっかりとアピールしましょう。

2.転職先とのマッチング

転職先に必要な人材であるという印象を持ってもらうには、その転職先の理念や考え方に共感していて、その業務内で自分が役に立てる点をアピールする必要があります。一方的に自分の得意分野を伝えても、転職先が掲げる考え方とマッチしていなければ、人事担当者側もメリットを感じにくいものです。

作業療法士は、医師や看護師をはじめ、さまざまな職種と連携しながらサービスを提供します。そのため、リハビリ科の責任者は、職場の理念や方向性などに合わせながら、他のスタッフと協力して仕事ができる作業療法士を採用したいと考えています。志望動機には、転職先が掲げる理念に対して、どんな点で共感したか、また、実際に現場で実施されている取り組みのなかで、どのようなところに興味を持ったか、などもまとめておくことが大切です。

3.長期的に働きたい意志を伝える

採用試験、転職後の人材育成などに時間や費用がかかるため、人事担当者はできるだけ長く働いてくれる見込みのある人を採用したいと考えています。

そこで、志望動機にも、長期的に働きたいという意志をアピールする文を加えてみましょう。例えば、転職後にやりたいことや数年後に達成したい目標などを書いて、継続して働く意志を持った人材であることをアピールしてみてはいかがでしょうか。

人事担当者が求める作業療法士

そもそも、人事担当者はどのような作業療法士を求めているのでしょうか?意外かもしれませんが、応募者側が考える“求められる人物像”と、人事担当者が実際に“求めている人材像”では、そのポイントがかけ離れていることがよくあります。応募する側は、リハビリ現場で役立つような自身の経験や強み、専門性などを中心に評価されると考えがちです。

もちろん、そのような実績は採用を左右する大切なポイントのひとつではありますが、実際の現場では少し異なった評価の視点もあります。それは、「リハビリ現場だけでなく、その職場に馴染んでその他の業務までこなしてくれるかどうか」という点です。

1.積極的に雑務をこなすかどうか

多くの転職先では、一部の専門分野だけに特化している作業療法士よりも、治療業務に関わらず、さまざまな業務を率先して行ってくれる人材を求める傾向があります。というのも、リハビリの仕事は治療業務以外にも、書類の作成や管理、電話対応、掃除・後片づけをはじめとする雑務も多く存在するからです。

キャリアに関係なく、スタッフ全員がそれぞれ多くの仕事を抱えており、基本的な雑務がこなせなければ、肝心のリハビリ現場が滞ってしまうことでしょう。もし、雑務をこなせない人材を採用してしまうと、スタッフ間のトラブルに発展したり、他のスタッフの仕事量が増えたりする可能性があるため、責任者はリスクを感じます。

2.臨機応変な対応ができるかどうか

また、職場によっては、作業療法士がリハビリ以外の業務を補助することもあります。例えば、介護施設において、看護師や介護士のマンパワーが不足している時には、患者さんを介助したり、ご家族の面会に対応したりするなど、柔軟な対応が求められる場合もあるでしょう。

こうした職場環境のなかで、臨機応変な対応が可能かどうかは、採用に至る判断材料となります。つまり、どれだけ特殊な知識や技術に長けていても、雑務を含めた基本的な業務がおろそかになるようでは、採用を逃してしまう可能性があるのです。

3.周囲とのコミュニケーションがとれるかどうか

作業療法士は、患者さんやご家族、医師、看護師、介護士や医療ソーシャルワーカーなど、他職種と連携して仕事を行う機会が多いものです。その際、相手の専門性を考えながら説明をしたり、相談したりする必要があります。周囲とのより良い人間関係を築けるようなコミュニケーション能力は、作業療法士に必須と言えるでしょう。

このように、人事担当者が求めているのは、必ずしも特別な経験を持った人材だけではありません。専門性に特化していなくても、「しっかりと実務をこなせる」、「協調性がある」といったポイントで採用されることもあります。実績だけが評価対象ではないことを理解し、これまでの経験をありのまま志望動機に書くようにしましょう。

志望動機を書く前に行うべき2つのこと

では、実際に志望動機を書いてみましょう。ただし、いきなり書き始めるのは失敗のもと。まずは下準備を行い、気持ちが伝わる「志望動機」を作成してみましょう。志望動機を書く前に行うべき2つのことをお伝えします。

1.作業療法士としての経験を棚おろしする

自身の強みを発掘するために、まずはこれまでの経験を振り返ってみましょう。特に力を入れてきたこと、時間をかけて勉強してきたこと、また、他のスタッフや上司にほめられた業務など、自分の得意分野を見つけてみましょう。作業療法士には幅広い業務があり、自分が何気なくこなしている仕事が、他者は難しいと感じていることもあります。

また、病院や施設で、委員会や係業務などを担当していた場合も、大きな強みとなります。志望動機作成の下準備として、自分の得意分野や、他の人が経験していない分野がないか、仕事の経験を棚おろししてみましょう。

2.転職先となる職場の調査

転職を希望するのであれば、その職場の特徴を知っておくことも大切です。ホームページに掲載された運営理念をチェックしてみましょう。「理念」とは、病院や施設がどうあるべきか、職場の理想を掲げたもの。職場の運営理念を参考にすると、病院や施設の考え方を知ることができ、転職先が求めている人材像をイメージしやすくなります。

また、ホームページやSNS、事前見学などでリハビリ科の取り組みに関する情報が得られる場合には、転職後に自分の経験がどのように活かせるのか、どういった仕事を担当したいのかなどについても、志望動機でアピールするとよいでしょう。

作業療法士の志望動機の具体例

志望動機に書くべきポイントや、書きはじめる前に必要な準備についてお伝えしてきました。ここからは、具体的な志望動機の例を見ていきましょう。以下は、リハビリ病院で勤務したのちに、訪問リハビリの事業所に転職する場合の志望動機の例になります。

Aさん 26才 男性 (大学で資格を取得。卒業後リハビリ専門病院に4年間勤務)の例

「私は、大学を卒業してから4年間、リハビリ病院に勤務し、患者さんの在宅復帰支援の一環として、自宅の環境調整や福祉用具の活用に力を入れてきました。仕事を通して、患者さんやご家族が暮らしやすい環境面への支援の必要性を感じました。貴施設では、日常生活動作の支援から福祉用具の導入、住宅改修などのフォローアップまで行っていることを知り、自分がリハビリ病院で培った知識や経験を存分に活かせると考え、志望しました。」

上記の例では、冒頭で、作業療法士としての業務で培った経験や、自分の強みとなる分野について触れています。自宅の環境調整や福祉用具の活用というのは、リハビリ病院の作業療法士であれば一度は経験する分野です。ここでは、自分が特に力を入れてきた分野として捉えながら、転職後にも活かせる経験としてアピールしています。過去にどんな分野での経験があり、転職後にどのような働きができるかを具体的に伝えられると、人事担当者にもメリットが伝わり、採用につながりやすい志望動機となるでしょう。

自分の強みをアピールできる志望動機を作成しよう

転職活動において難しく考えがちな「志望動機」。「何か特別な経験を書かなければ採用されないのではないか」と思いがちですが、人事担当者は特殊な経験ではなく、どのような働きができる作業療法士なのかを知りたいと思っています。

志望動機では、自分が仕事を通して力を入れてきた分野や、それをどのように活かしたいかなどについて、詳しくまとめましょう。また、自分の考えを正しく伝えるには、これまでの業務経験を振り返ったり、転職先の理念や取り組みを調査したりする準備も必要です。伝えたいポイントを絞り、自分の強みをアピールできる志望動機を作成してみましょう。

>>マイナビコメディカルに登録して、自分に合った職場がないか相談する

田口 昇平

田口 昇平

作業療法士/福祉住環境コーディネーター2級
2008年に作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や特別養護老人ホームなどの施設で医療や介護業務に従事。2018年より、フリーライターに転身。医療介護職の働き方や働きやすい労働環境づくりなど、幅広いテーマで執筆。心理学・脳科学分野の書籍を愛読し、学んだ内容をブログやSNSで情報発信している。

田口 昇平

今よりさらに良い環境で働けるよう
キャリアドバイザーが全力でサポートします
\今すぐ1分で完了/

    <PR>マイナビコメディカル

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  •  LINEで送る

他の記事も読む

おすすめ

TOPへ