セラピストとして身につけておきたい「おもてなし」の技術とは
公開日:2015.11.16 更新日:2015.12.07
対人サービス業のひとつでもある医療現場。患者さんがいつも心地よく過ごせるよう心がけたいものです。そこで身につけたいのが接遇のマナー。実は、病院に寄せられるクレームには接遇に関する内容が多く、セラピストも適切な対応を求められています。医療従事者として身につけたい、おもてなしの心や接遇マナーとは、一体どのようなものでしょうか。
患者さんが心地よく過ごせるような気配りを
病院を訪れる患者さんにとっては、医療従事者の笑顔や声かけといった気遣いも治療の一部につながるもの。「きちんと見(診)てくれている」という安心感は信頼の獲得につながり、結果として、よい人間関係を築きながら治療を進められるようになります。患者さんの様子に気を配り、快適にリハビリを行えるよう意識しましょう。
患者さんの立場になって声をかけて
病院という空間は、患者さんにとって自由に過ごせる場所ではありません。なかには、「カーテンを閉めてほしい」「空調を調整してほしい」といった要望を伝えることにすらためらいを覚える人もいるようです。常に患者さんの目線に立ち、何か困っていることがないかと声をかけたり提案したりすることで、患者さんにとっても心地よい環境をつくれることでしょう。またセラピストは患者さんの身体に触れる仕事ということを忘れず、事前に手を温めておく、清潔な状態を意識するなど、スキンタッチによるストレスを軽減させましょう。
相手を受け入れるコミュニケーションを
患者さんからの要望にできるだけ応える姿勢を見せることも大切です。とはいえ、要望の実現がどうしても難しい場合もあるでしょう。そんなときに注意したいのが、患者さんへの伝え方です。たとえ実現できない依頼であっても、否定的な表現で答えてしまうと不信感や不快感を与えてしまいます。
こんなときはコミュニケーション方法を訓練することで、よりよい受け答えができるようになります。特にこうした場面で役立つ手法が、「アサーション(自他尊重)」による話し方。患者さんの言葉に対して否定的な態度や表現は避け、攻撃的にならないようにしながら、自分の主張はきっちりと伝えるという方法です。
相手を不快にさせない断り方
アサーションとは単なる自己主張ではなく、自分の気持ちや状況をきちんと表現したうえで相手へ相談し、場合によっては譲歩案を出すという3つのステップから成り立ちます。
患者さんからの要望に対応できない場合も同様に、「状況報告→相談→譲歩案の提示」という流れで伝えることで、患者さんは納得して結果を受け入れやすくなります。
たとえば患者さんが「もうリハビリをやめたい」と言う場合は、
「これまでがんばってきた成果が出て回復してきています(状況報告)」
「リハビリをやめてしまうと身体が元に戻ってしまったり、悪化してしまうことも考えられるので、リハビリは続けていただく方がいいと思うのですが、いかがでしょうか(相談)」
「負担を抑えられるように、少しペースを落としてみましょうか?(譲歩案の提示)」
といったように語りかけます。このように段階を踏むことによって、患者さんも医療者側からの提案を受け入れやすくなるでしょう。
患者さんの気持ちに寄り添うための対応術
リハビリを受ける患者さんのなかには、現状を悲観している人や愚痴をこぼす人が少なくありません。傾聴にとどまらず、アドバイスを求められることもあります。リハビリの内容などの専門分野であれば伝えやすいのですが、プライベートなこととなると、どこまで踏み込んでいいのか悩むことがあります。
例えば患者さんが「家族はそうと言わないけれど、私を負担に感じている」という発言をしたとき。とっさに気遣いのつもりで「ご家族は毎日のように来てくださっているのに、そんなことありませんよ」などの返答をしてしまうと、患者さんは自分の考えを否定され、自分は受け入れられていないと感じてしまう可能性があります。
安易な回答は不信感を与えるだけでなく、誤解を招き、トラブルに発展することもあります。アドバイスを求められた場合でも、その場ですぐに答えを返すことだけが正しいとは限りません。結論を急ぐのではなく、なぜそのように感じたかを聞き出し、本音を打ち明けてもらえるような対話の時間が大切です。患者さんの気持ちに寄り添う対応をするにはどうすればよいか、常に考えて行動できるといいですね。
心に響くおもてなしを
セラピストが意識したい「おもてなし」とは、患者さんがいつでも安心できるように配慮することです。患者さんはちょっとしたことで不安や不満を感じているかもしれません。その都度、細やかに対応することで患者さんのストレスを最小限に抑えられるよう、努力しましょう。思いやりを持った姿勢で、患者さんにとって心地よい時間を作りたいものです。
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