1年目の作業療法士に必要な3つのスキルとは?新人向けの勉強方法も
公開日:2021.03.04 更新日:2021.12.14
文:田口 昇平
(作業療法士、福祉住環境コーディネーター2級)
病院や介護施設に就職して間もない1年目の新人作業療法士のなかには、患者や利用者に適切なリハビリが行えず、悩んでいる人もいるのではないでしょうか。新人療法士は先輩療法士に比べて、専門的な知識や技術を得るための実質的な経験が少なく、柔軟な対応ができない傾向にあります。
患者や利用者の生活を改善できる作業療法士になるには、いろいろなスキルを身につけながら、キャリアを積んでいくことが大切です。今回は作業療法士としてキャリアを高めるために必要なスキルと、効果的な勉強方法を紹介します。
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できる作業療法士になるために必要な3つのスキル
作業療法士としてキャリアアップを考えるうえで、次の3つのスキルは欠かせません。
・評価
・治療
・コミュニケーション
なぜこれらのスキルが必要なのかをポイントとともに解説します。
1)評価スキル
作業療法士は「リハビリ対象者の状態を正確に評価できるスキル」が必要です。正確な評価ができなければ、日常生活の問題点がわからず、結果的に、改善するための治療も行えないからです。
例えば、自宅退院に向けた日常生活動作(ADL)の獲得をリハビリの目標とする場合があります。このとき、本人の心身機能や生活環境の状態がわからなければ、ADLの獲得に向けてリハビリで何を改善すべきかがわかりません。
効果的なリハビリを行うには、まずはリハビリ対象者の状態を正確に把握できる評価スキルを高めることが大切です。
2)治療スキル
作業療法士は「治療スキル」も欠かせません。このスキルは患者や利用者自身の能力を発揮しやすいようなリハビリ方法を工夫したり、環境を整えたりできる能力といえます。
一人ひとりの心身機能や動作能力が異なるため、作業療法士は相手に合わせてオーダーメイドする柔軟性が必要です。
例えばものをつかむ練習として、「いすに腰かけた状態で、テーブル上のボールをつかむ課題」を行うとしましょう。この場合、相手の状況に合わせて介助する身体部位を決定し、テーブルの高さやボールまでの距離を設定することになります。
患者にとって難しい課題となれば、リハビリのモチベーションが下がったり、そもそも取り組むことができなかったりします。逆に、簡単すぎてしまうと訓練になりません。
リハビリを行うには、相手の状態を見きわめながら、本人の能力を引き出す方法を工夫し、環境をつくれるスキルが大切です。
3)コミュニケーションスキル
患者や利用者のなかには、自分の考えを表現することが難しい人も多くいます。ときには、担当の作業療法士に自分の考えをうまく伝えられず、納得がいかないままリハビリを受けている人も見られます。
コミュニケーションがうまくとれていないと、クレームやリハビリ拒否といったトラブルを招きかねず、リハビリの効果も低くなってしまいます。作業療法士として相手の考えをくみとれる「コミュニケーションスキル」が必要といえるでしょう。
作業療法士としてのキャリアを高める3つの勉強方法
では、作業療法士としてのキャリアを高めていくには、どのように勉強すべきでしょうか。ここからは「新人療法士におすすめしたい勉強法」として3つのポイントを紹介します。
1)疾患や障がいの異なる症例を数多く経験する
作業療法士としてのキャリアを高めたいなら、まずは疾患や障がいの異なる症例を数多く経験しましょう。
疾患や障がいが違えば、当然、必要なリハビリ内容も変わります。
例えば、骨折患者に行うリハビリでは、重いものを使って筋肉を鍛えていきます。一方、脳卒中患者のリハビリでは、患者の動きをサポートしながら筋肉の使い方の学習を促すことが必要です。
こうした症例を学ぶには、実際に多くの患者を担当することがもっとも効果的です。新人のうちから数多くの症例を担当すれば、柔軟に対応できる作業療法士としてキャリアを積んでいけるでしょう。
2)職場で症例報告会を実施する
作業療法士として、自分のリハビリに自信がないという人もいるでしょう。そのような場合は、職場で症例報告会を実施するのがおすすめです。
症例報告をすることで、リハビリ相手の評価から治療までの思考プロセスをより具体的に整理できます。また、新人のうちはリハビリの知識や技術が足りないぶん、周囲の考えや意見を素直に受けいれやすいものです。
リハビリの方法や方針について先輩療法士から意見をもらったり、同期と議論したりすることで、新たな視点や治療アイデアを得られるでしょう。
3)作業療法士協会の研修プログラムに参加する
キャリアアップをめざすなら、協会の研修プログラムに参加することも大切です。作業療法の基本的な考え方を学ぶことができ、他病院や他施設で作業療法士が行っているリハビリ方法を知る機会になります。
ひとつの職場だけでは、リハビリの視点や方法が偏る傾向にあります。職場の同僚は、同じ上司や先輩から教育・指導を受けているケースが多いため、リハビリの視点や方法が自然と似かよってくるからです。
自分の視野を広げ、新しい取り組みを学ぶためには、各都道府県の作業療法士協会の研修プログラムに参加するとよいでしょう。
自己研鑽して、患者や利用者に必要なリハビリを提供しよう
作業療法士としてキャリアを積むには、自己研鑽(じこけんさん)が大切です。患者や利用者は、心身機能はもちろん、動作能力・生活環境なども異なります。
相手に合わせて必要なリハビリを行うには、さまざまなスキルが必要です。3つの勉強法を取り入れて、自己研鑽していきましょう。
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田口 昇平(作業療法士、福祉住環境コーディネーター2級)
2008年に作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や特別養護老人ホームなどの施設で医療や介護業務に従事。2018年より、フリーライターに転身。医療介護職の働き方や働きやすい労働環境づくりなど、幅広いテーマで執筆。心理学・脳科学分野の書籍を愛読し、学んだ内容をブログやSNSで情報発信している。
2008年に作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や特別養護老人ホームなどの施設で医療や介護業務に従事。2018年より、フリーライターに転身。医療介護職の働き方や働きやすい労働環境づくりなど、幅広いテーマで執筆。心理学・脳科学分野の書籍を愛読し、学んだ内容をブログやSNSで情報発信している。
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