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心臓リハビリテーション指導士ってどんな資格?理学療法士が自身の経験をもとに解説

公開日:2022.04.13

心臓リハビリテーション指導士ってどんな資格?理学療法士が自身の経験をもとに解説

文:小林 直樹
(理学療法士)

現在、筆者は病院に理学療法士として勤め、日々リハビリを行いながら、心臓リハビリテーション指導士の資格ももって活動しています。

名称が長いことから「心リハ指導士」とも呼ばれますが、その資格の歴史は介護保険制度と同じで、特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会により2000年に発足された制度です。

心臓リハビリテーション指導士の資格をもっていることでどんなメリットがあるのか、仕事にどんな変化をもたらしたのかなど、理学療法士である自身の経験も交えながら解説していきたいと思います。

心臓リハビリテーション指導士(心リハ指導士)はどんな資格か?

心臓リハビリテーション指導士は、心不全や心筋梗塞といった循環器疾患をもつ患者さんに対して運動療法を行うことで、身体機能やADLの改善を図ります。さらに食事や服薬の指導など包括的な介入を行って、循環器疾患の再発予防や死亡率低減といった予後の改善を図っていきます。

日本での死因の第2位は循環器疾患です。また高齢化によって今後さらにその患者数が増加することが予測されています。そのため、循環器疾患患者の予後改善を図ることができる心臓リハビリテーション指導士は、非常に重要な役割を担っていると思います。

心臓リハビリテーション指導士は加算の算定要件に含まれない

心臓リハビリテーション指導士は診療報酬の加算要件にはなっていません。しかし、心大血管疾患リハビリテーション料の保険請求要件に、「経験のある」専従の理学療法士が必要人員とされています。

そのため、心臓リハビリテーション指導士の存在は、心大血管リハビリテーションの実施や運営に欠かせない資格であると思います。

心リハ指導士の資格は理学療法士としての仕事にどう役立っているか?

循環器疾患のリハビリテーションを行うためには、循環器疾患特有のリスク管理を行うことが欠かせません。心臓リハビリテーション指導士を取得するメリットは、リスクの高い循環器疾患患者さんに自信をもって、安全で効果的なリハビリテーションを提供できるようになることだと思います。

心リハ指導士の資格取得がきっかけで包括的な知識が身についた

心臓リハビリテーション指導士を取得することで、循環器疾患患者さんのリハビリテーションに必要な病態や治療への理解、運動生理、運動処方といった知識を身につけることができます。

さらに、リハビリテーション以外にも包括的な知識が身につくため、運動だけでなく、薬、栄養、心理面など、さまざまな視点から患者さんに介入することができるようになることも大きな魅力的です。

心リハ指導士のスキルは在宅期患者さんに対しても有用

また急性期のみでなく、在宅期患者さんに対しても重要な役割を果たせます。

例えば、私は通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションの経験があります。その際、心臓リハビリテーション指導士の知識を用いると、心電図や血液検査の情報がないなかでも、病状を評価してリスク管理を行い、最適なリハビリテーションを提供することができました。

そして結果的に、急性期病院から退院して間もない患者さんの、身体機能回復と再発予防に寄与できたのです。在宅期でも、この資格がとても有用であることを痛感しました。

心リハ指導士の資格が給料アップにつながるかは施設によって異なる

このように心リハ指導士の知識や技術は理学療法士としてのスキルアップにつながりますが、資格の取得が給料面に影響するかは、その施設によって変わります。

診療報酬上の加算が得られるなど、診療報酬の増額に影響するわけではないので、この点は仕方のないことかもしれません。

心臓リハビリテーション指導士の資格を取るには?受験資格と取得までの流れ

心臓リハビリテーション指導士になるには「日本心臓リハビリテーション学会による認定試験」に合格しなければなりません。受験に必須の条件は5つです。

(1)心臓リハビリテーション学会が主催する講習会を当該年度に受講していること
(2)医師、看護師、理学療法士、作業療法士といった資格を有していること
(3)受験申請時に2年以上継続して日本心臓リハビリテーション学会会員であること
(4)心臓リハビリテーション指導の実地経験が1年以上あるまたは心臓リハビリテーション研修制度により受験資格認定証の交付を受けていること
(5)10例の自験例を報告すること

自験例は、急性期から維持期にかけて心臓リハビリテーションを行った経験を報告しなければならず、運動療法や生活指導の実践例をあげる必要があるため、幅広い経験を積んでおく必要があります。

上記の条件が整い、自験例の審査に合格すると筆記試験資格を得られます。受験に必要な費用は、講習会受講料10,000円、筆記試験受験料15,000円になります。試験は夏季に行われており、2021年は8月に開催されました。

試験内容

例年50問/60分のマークシート方式で行われ、解剖、病態、治療、運動生理、栄養、心理的介入法など幅広い分野から出題されています。

この筆記試験に合格すると心臓リハビリテーション指導士として認定されます。

資格更新の要件

指導士資格を維持していくためには5年ごとに資格更新の手続きが必要で、更新要件は次の2点です。

(1)5年間のうちに1回以上日本心臓リハビリテーション学会(全国学会)に参加すること
(2)更新ポイント50点を取得すること

更新ポイントは全国学会に1回参加すると15ポイントが、その他、学会発表や講習会参加でもポイントを取得することができます。

心臓リハビリテーション指導士の合格率は?2021年は75.5%

心臓リハビリテーション指導士試験の合格率は次のとおりです。

【2019年】全受験者:73.5%(理学療法士73.6%、作業療法士48.4%)
【2021年】全受験者:75.5%(理学療法士74%、作業療法士55.8%)

このように理学療法士や作業療法士の国家試験よりも合格率が低く、やや難易度が高いといます。

参考

特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会「第20回心臓リハビリテーション指導士認定試験講評」
特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会「第21回第22回心臓リハビリテーション指導士認定試験講評」

心リハ指導士試験合格に向け、筆者が行った勉強法

まずは心臓リハビリテーション学会が発行している指導士認定試験テキストや、心臓リハビリテーション学会および日本循環器学会から発行されている「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」で知識をまとめておくことが大前提です。

そして普段から、その内容を意識して臨床に取り組むことが大切となります。

さらに、試験前の講習会もしっかり受講することをお勧めします。講習会はボリュームが多いですが、包括的な知識をまとめるうえで非常に有用です。

また私の場合は、事前に「運動負荷試験」や「運動生理」について、別の講習会に複数回参加しました。何度も聞くことで重要な点が把握できるようになり、試験勉強の効率も上がりました。

私が試験を受けた際、時間に余裕がなく、最後の数問を解けなかった記憶があります。試験当日は焦ってミスを犯さないよう冷静に対処する力も必要です。

心臓リハビリテーション指導士のやりがいや楽しさ

心臓リハビリテーション指導士のやりがいは、私の場合は、理学療法士でありながら、循環器疾患そのものへの治療と患者さんの予後改善に貢献できるところにあると感じています。

運動療法は、特に循環器疾患の病態改善に寄与して予後に影響しますので、理学療法士として介入をしながら、患者さんの健康寿命の延伸に携われることは非常に魅力的です。

患者さんから頼りにされ、相談に応えられる

患者さんから、疾患や生活について相談されることが多くありますが、これに応えることができます。すると患者さんからより信頼感を抱いてもらえ、さらにさまざまなことを相談してくれるようになります。

患者さんから頼りにされることは、医療人としてはやはりとてもうれしいものです。

多職種との連携が進めやすい

循環器医師やほかの関連職種とのコミュニケーションも良好になりやすいです。

循環器の病状や治療について対等に話せるようになることで、多職種からの信頼も得られやすくなり、職場での仕事がやりやすくなるうえ仕事の幅も広がると思います。

循環器疾患の患者さんは今後どんどん増える。重要性はますます高まる

今後、循環器疾患が増えていくことが予想されています。整形疾患や脳神経系疾患にてリハビリテーションを行う患者さんのなかにも、循環器疾患を併発している患者さんが増えてくると思われます。

そのため循環器疾患をもつ患者さんに、安全で効果的なリハビリテーションを行える心臓リハビリテーション指導士の重要性は、ますます高まるでしょう。

心臓リハビリテーション指導士の知識や技術は、臨床のどんな場面においても有益ですし、スキルアップとして最適な資格です。資格取得には根気と労力を必要としますが、それに十分に見合うものが得られると思いますので、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

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小林 直樹

小林 直樹

理学療法士/心臓リハビリテーション指導士
2003年に理学療法士免許を取得し、湘南藤沢徳洲会病院に勤務。急性期リハビリテーションや在宅期リハビリテーションに従事。心臓リハビリテーション指導士取得後は同病院での心臓リハビリテーションチームリーダーとして心血管疾患患者さんの治療に携わる。近年は心臓リハビリテーション分野の研究にて修士号を取得するとともに、心血管疾患リハビリテーションに関する講習会の講師としても活動。臨床のかたわら、学術活動や教育活動に取り組んでいる。

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