リハビリ科の勉強会を担当した時は?ネタ探しの方法や有益にするコツを紹介
公開日:2022.07.08
文:田口 昇平
(作業療法士、福祉住環境コーディネーター2級)
常に新しい知識・技術を学び続ける必要があるセラピスト。所属研究会と違い、職場の勉強会となれば、キャリアや興味の大きく異なるセラピストが集まるため、どのような内容にすべきか悩むものです。
筆者自身、作業療法士としてセラピスト向けにさまざまな形で勉強会を担当してきました。同僚の参考になる勉強会にするには、自分なりの工夫が大切です。そこで今回は、職場で有意義な勉強会が開催できるように、ネタを探す方法や勉強会を有益にするコツについてお伝えします。
セラピストに喜ばれる勉強会とは?
職場で勉強会を開催する時は、参加したセラピストが「明日から自分の治療に取り入れてみよう!」と思えるような知識・技術をテーマとして伝えることが大切です。セラピストは、患者さんに対してより良い治療ができるように、常に新しいアイデアを知りたがっています。そのため、実践しやすいテーマや内容の勉強会にすると、セラピストにとても喜ばれるのです。
例えば、「脳卒中のリハビリ」をテーマに勉強会を開催したとします。この場合、教科書に掲載された一般的な治療方法を解説するよりも、実際に自身がおこなった訓練方法を紹介したほうが、同僚の興味を集めやすいでしょう。なぜなら、その訓練方法は、同僚にとって新しいアイデアであり、実践的な情報として自分の治療にも取り入れやすいからです。
このように、職場で勉強会を担当した時は、同僚がすぐに実践できることを意識して、テーマを選んだり、内容を考えたりするとよいでしょう。
勉強会のネタを探す方法
勉強会のテーマは、どのように決めればよいのでしょうか。闇雲に考えたところで、良いネタが浮かびづらいはず。続いて、勉強会のネタを探す方法を4つ紹介します。
1.同僚のニーズをリサーチする
同じ職場で働くセラピストは、共通の問題で悩んでいるケースが少なくありません。病院であれば、シーティングやADLの介助方法・高次脳機能障害に対する治療などの問題があります。介護施設であれば、歩行の介助方法やベッド上のポジショニング・余暇の活用方法といった悩みが起こりがちです。どのようなことで治療に行き詰まっているのか、質問したり、治療の様子を見たりして、同僚のニーズを知れば勉強会のテーマを設定しやすくなります。
2.自身の得意分野を分析する
セラピストとして力を入れて勉強している分野があれば、それをテーマにするのもおすすめです。幅広いスキルが求められるリハビリの世界では、自分の得意分野が、じつは同僚にとって不得意・勉強不足の分野だったということがよくあります。得意分野で勉強会を開催すれば、職場全体のスキルアップを図れますし、その分野について自分自身の理解を深めることもできます。
3.難渋症例をピックアップする
治療に行き詰まったケースがあるなら、難渋例として、症例検討をするのも1つの方法です。リハビリの対象となる患者さんは、個々に状態像や生活背景が異なります。そのため、キャリアに関わらず、治療が難航するケースは多いのです。そうしたケースを担当している場合、勉強会の機会を活用し、いろいろな人の意見を聞くと、解決の糸口を見つけやすくなるでしょう。自分ひとりで悩んでいると、考えが凝り固まってしまうので、勉強会を通じて、時には違った視点からのアドバイスを受けるのも大切です。
4.外部研修会に参加する
外部研修会に参加する機会があれば、そこで学習したことを勉強会のテーマにするのも1つの方法です。外部研修会は、最新の知識・技術が学習できると同時に、他の職場で働くセラピストの視点や考え方を学べます。当然、それに参加した人でなければ、知り得ないことも多くあります。外部研修会で学んだ内容をまとめ、同僚に情報を共有すれば、職場全体のリハビリスキルを底上げできるでしょう。
勉強会を有益にするコツ
有意義な勉強会にするには、テーマの選定に加え、やり方の工夫が大切です。資料や発表がわかりやすいほど、参加したセラピストにも内容がしっかり伝わります。ここからは、勉強会を有益にするコツをお伝えしましょう。
1.写真・イラスト・図表を多くする
テキストだけの資料やスライドは、参加者からすると、内容を理解しにくいものです。特に、業務終了後の勉強会では、複雑なテキスト情報を理解できるだけの心身の余裕がないこともあります。テキストを読み込むのに必死になってしまえば、肝心の内容が入ってきません。そうした状況を防ぎ、勉強会の内容をしっかり理解してもらうには、写真・イラスト・図表といったツールを活用して、わかりやすい資料・スライドづくりを心がけましょう。
2.前に立つときは参加者の目を見て発表する
勉強会に参加していると、一生懸命に資料やスライドを見て発表しているセラピストを見かけます。しかし、こうしたふるまいは避けた方がよいでしょう。というのも、大勢のセラピストが集まる職場の勉強会では、参加者は、自分自身に必要な知識・技術を学ぶ機会であるという、「当事者意識」が欠けやすく、相手に伝わりにくくなってしまうからです。参加者に当事者意識を持たせ、発表者の言動に集中させるには、一人ひとりの目を見て、訴えかけるように話すことが大切です。こうすれば、自分の発表をしっかり聞いてもらえますし、参加者の理解を促すことにつながります。
3.実技・ディスカッションを取り入れる
発表者の話を聞くだけの勉強会よりも、実技やディスカッションを取り入れた参加型のほうが、参加者の理解度が深まります。例えば、得意分野をテーマに勉強会を開催する場合、講師として自身が実技を披露し、その後に参加者全員で実践してみるのもよいでしょう。また、難渋例で症例検討するなら、小グループに分けて、お互いの意見をディスカッションしてもらうといった方法もあります。理解を深めるには、参加者が自分の体を動かしたり、考えを話してみたりすることも必要です。参加者が「新しいことを学べた」「自分もやってみよう」と思えるように、テーマに合わせて、勉強会の方法を工夫してみましょう。
「参加して良かった」と思える勉強会に
職場の勉強会は、業務の隙間時間や終業後におこなわれます。仕事やプライベートで忙しい同僚のセラピストに、「参加して良かった」と思ってもらうには、わかりやすく、実践しやすい内容の勉強会にすることが大切です。ネタの探し方や、勉強会を有益にするコツを駆使しながら、同僚のためになる有意義な勉強会を開催しましょう。
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田口 昇平
作業療法士/福祉住環境コーディネーター2級
2008年に作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や特別養護老人ホームなどの施設で医療や介護業務に従事。2018年より、フリーライターに転身。医療介護職の働き方や働きやすい労働環境づくりなど、幅広いテーマで執筆。心理学・脳科学分野の書籍を愛読し、学んだ内容をブログやSNSで情報発信している。
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