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持っているとリハビリの幅が広がる!? レクリエーション・インストラクターについて作業療法士が解説

公開日:2022.07.04

持っているとリハビリの幅が広がる!? レクリエーション・インストラクターについて作業療法士が解説

文:牛玖恵梨子(作業療法士)

レクリエーション(recreation)とは、娯楽として自由時間に行われる自発的・創造的なさまざまな余暇活動のことです。

もともとは「再創造」「壊れたものがつくり直されること」「人が病気から回復すること」などを意味する、ラテン語の「recreãre」が語源だといわれています。
レクリエーションには運動(スポーツ)や音楽、手工芸、文芸、演劇、ダンスなど、さまざまなものがあり、作業療法士が行う「アクティビティ」とも近接しているように思えます。

レクリエーションに関する資格はいくつかあるのですが、今回は、はるか昔、私が学生のときに取得したことのある、レクリエーション・インストラクターを中心にみていきます。

レクリエーション・インストラクターとは

公益財団法人日本レクリエーション協会によると、レクリエーション・インストラクターは、「ゲームや歌、集団遊び、スポーツといったアクティビティを効果的に活用し、『集団をリードする』『コミュニケーションを促進する』『楽しい空間をつくる』といった、対象者や目的に合わせてレクリエーション活動を企画・展開できる指導者」とされています。

参考

【日本レクリエーション協会】

各都道府県で受講可能──資格取得の流れ

公益財団法人日本レクリエーション協会が認定しているレクリエーション・インストラクターは、個人で申し込んで講習する方法と、大学や専門学校などで受講する方法があります。

養成講座は、集合学習、通信学習、オンライン学習と現場実習があり、各都道府県や協会が認める市町村レクリエーション協会・団体が開催しています。

大学や専門学校で受講する場合は、日本レクリエーション協会公認指導者養成を行う課程を認定された学校であれば、大学や専門学校で養成講座を受講することができます。

私は作業療法士の専門学校に通っているときに、学校のカリキュラムのなかで取得しました。同じ時期にキャンプインストラクターや、学校が独自に作っていたカウンセラーの養成講座も受講していたため、1~2年生のときは作業療法の勉強以外でも、資格を取るために日々忙しく勉強をしていたと記憶しています。

私が実感したレクリエーション・インストラクター活用例

学生時代の私は、レクリエーションの講義を受けていても、「なんの役に立つのか?」「国家試験の勉強を優先すべきじゃないのか?」という思いがありました。しかし、作業療法士になってからレクリエーションの資格がその力を発揮し始め、「取ってよかった」と感じるようになりました。

実際に、私が「レクリエーション・インストラクターを取ってよかった」と思えた場面を紹介します。

①個別訓練で活かす

作業療法士になりたてのセラピストの多くは、「リハビリプログラムの引き出し」が少ないと思います。

個別リハビリでは、「リアリティーオリエンテーション→関節可動域訓練→端座位訓練→作業活動」のように、同じようなプログラムをさまざまな患者さんに流用しているセラピストもいるのではないでしょうか。

しかも、座位訓練は決まって輪投げを使ったり、作業活動であれば塗り絵だったりと、行う活動が1週間毎日同じで、引き出しの少なさに悩んでいるセラピストもいると想像できます。

引き出しが少ないと、患者さんに飽きられてしまいまい、たとえ難易度を変えたとしても、同じリハビリを繰り返すだけでは、単に「輪投げ名人」を作っているだけになってしまいます。

そこで、レクリエーションのネタをたくさんもっていると、患者さんの能力を引き出したり、心をつかんだり、リハビリの引き出しを増やすことにつながります。

私の場合、レクリエーション・インストラクターを受講したことで、プログラムの立て方1つとっても、「静・動・静」をつけてメリハリをもてるようにしたり、端座位訓練時にはリーチ動作を伴うミニゲームや簡単なダンスを行うなど、患者さんを「飽きさせない」工夫ができたように思います。

私自身、新人のときは、「まだまだ未熟な評価の精度」や、「魅力を感じるリハビリ手技」に気持ちがとらわれてしまっていました。そのたえ、毎日同じようなリハビリを続けることで、患者さんが発する「私はあなたのリハビリに飽きているオーラ」に気づいていなかったように思います。
しかし、リハビリプログラムに幅をもたせると、患者さんのリハビリへの意欲に変化があることに気づきました。

患者さんが自分が立案したリハビリプログラムに意欲的になってくれれば、まだまだ完璧ではないリハビリ手技を行うにしても、「よし、やってみよう!」と乗り気になって実施してもらえ、成果につながることが少なくありませんでした。
そして、そのきっかけを作る1つの手段としてレクリエーションがあったのです。

公益財団法人日本レクリエーション協会では、レクリエーションで得られるものとして次のことを挙げています。

【レクリエーション・インストラクターで得られる力】
・集団をリードし、一体感を生み出し、楽しい時間を演出する力
・個人や集団のコミュニケーションを促進する力
・対象者や支援の目的に合わせたプログラムを企画・展開する力
・既存のレクリエーション活動を、その方にあったものへとアレンジする力
・個人の主体性や協調性を引き出す力
・福祉施設や保育、学校教育など、現場に応じてレクリエーション活動を企画・運営する力

参考

【日本レクリエーション協会】

②集団活動で活かす

10年以上前の話になってしまいますが、私は機能訓練指導員として働いていた特別養護老人ホームで、レクリエーション活動を担当していたことがあります。

毎日介護職員が行っている食事前の嚥下体操以外に、「クラブ活動の時間」をつくりました。利用者さんたちの活動量の少なさを気にしていた介護職員と私が言い出して始めたものです。

絵画クラブや園芸クラブ、縫い物クラブなど、それぞれ担当者を設けて、「できるときにできる人数で無理なく」をモットーに始めました。

私は書道クラブを担当し、ときどき集団レクリエーションの活動にも参加していました。
集団レクリエーションでは、「新しい体操教えて~」と、いきなり集団の輪のなかに放り込まれることもありましたが、棒体操やタオル体操、体を使った頭の体操など、レクリエーション・インストラクター養成講座で習ったレクリエーションを大いに活用しました。

コミュニケーションが苦手な人におススメ

セラピストだからといって、だれもが最初からコミュニケーションがうまいわけではありません。「どんなに経験を積んでも人前で話すことは苦手、ましてやレクリエーションなんてできない」という方もたくさんいることでしょう。

私も元来、人と話すことが苦手です。
たくさんの人の前や威圧感のある人と話すときは、顔が赤くなったり、手が震えたり、手汗も多くなり、とても緊張しやすいタイプの人間です。
しかし、自分でいうのもなんですが、リハビリのときにはそんな様子を患者さんや家族、同僚に微塵も感じさせていないと自負しています。

レクリエーション・インストラクター講習では、実習のなかで受講者同士で集団活動のプログラムを立てて進行する機会があるのですが、普段一緒に講義を受けている仲間との活動ということもあり、緊張は少しほぐれ、苦手を克服する第一歩としてよい練習になりました。

まだまだある! レクリエーションの認定資格

今回紹介した以外にも、レクリエーションに関する認定資格はたくさんあります。
たとえば、公益財団法人日本レクリエーション協会では、レクリエーション・インストラクター以外にも、「スポーツ・レクリエーション指導者」「レクリエーション・コーディネーター」「福祉レクリエーション・ワーカー」があります。
また、一般財団法人日本能力開発推進協会が認定する介護レクインストラクター®や認知症予防レクインストラクター®など、高齢者に対するレクリエーションに特化した認定資格もあります。

また、私の友人のなかには、「カラーセラピスト®」や「アロマセラピスト®」などのリハビリに活かせる認定資格を取得している作業療法士もいます。

カラーセラピーやアロマセラピーもレクリエーションの1つとして展開できますし、なにより、患者さんのリハビリにつながるものは1つでも多く持っているほうが「リハビリプログラムの引き出し」につながるのです。

患者さんが元気になれるレクリエーションを!

患者さんのなかには、「リハビリ=つらい・痛い・きつい」と考える方もいるようですが、イヤイヤ行うリハビリよりも、患者さんにとって「楽しくて元気になれるプログラム」のほうが、やる気やリハビリ効果につながります。
そして、「患者さんの心をつかむリハビリプログラム」を見つけるのも、セラピストの役目なのです。

一人ひとり生き方や趣味、考え方が違うように、リハビリプログラムも一人ひとり状況に応じて変えていく必要があります。

リハビリプログラムの引き出しはいくらあっても無駄にはなりませんので、「リハビリの引き出しが少ない」と感じているセラピストや、時間はあっても自信がない学生さんは、ぜひ、レクリエーション・インストラクター取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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牛玖 恵梨子

牛玖 恵梨子

作業療法士、児童指導員ほか。
養成校卒業後、病院勤務を経て福祉心理学系の大学へ編入。卒業後は伊豆七島にある三宅島や都内、千葉県内で働く。
趣味は旅と読書、そしてビールを飲むこと。趣味と作業療法の経験を活かし、医療や福祉をテーマにした執筆や書籍などの編集も行っている。

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