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認定理学療法士ってどんな資格? 取得のメリットは?

公開日:2022.08.05

認定理学療法士ってどんな資格? 取得のメリットは?

文:齋藤里美(理学療法士)

私が理学療法士になったのは2001年です。その後、結婚・出産を経て、2018年に認定理学療法士を取得しました。
この記事では、認定理学療法士という資格の概要や、私自身が認定理学療法士を目指したきっかけ、取得に向けて実際に取り組んだことなどをお伝えします。

認定理学療法士って?

認定理学療法士は、理学療法士としての専門性を高め、質の高い理学療法を提供することを目的とした資格です。2020年10月のデータでは、日本理学療法士協会の総会員数およそ13万人中、1万人程度(実数)が取得しています。

特定の臨床実践分野において秀でている、より高い専門性を備える理学療法士という位置づけになっており、その分野は「運動器」や「脳卒中」、「呼吸」など疾患ごとの分類のみならず、「管理・運営」や「介護予防」、「学校教育」など多岐にわたります(私が取得したのは「脳卒中」分野の認定理学療法士です)。

似たような制度として「専門理学療法士」があり、日本理学療法士協会は、これらを「より専門性の高い臨床技能を有するスペシャリスト、いわば個性の育成プログラム」としています。

参考

>>【公益社団法人日本理学療法士協会】認定理学療法士

私が認定理学療法士を目指したきっかけ

私には3人の子どもがいます。大学を卒業後、すぐに急性期の総合病院で働き始め、「3学会合同呼吸療法認定士」を取得したり、学会発表をしたり、PT向けの雑誌で記事執筆の機会をいただいたりなど、さまざまな経験を積み、知識のアップデートをしながら約6年間働いたのち、母となりました。当然のことながら、3度の出産に伴い、産休・育休も3回取得しました。3人の子どもたちはいずれも1歳数ヶ月の年齢差なので、ほぼ間髪入れずに取得したといって良いと思います。

そんなこんなで5年近くのブランク後に復職したわけですが、育休中はもちろん理学療法や医療の勉強をすることもほとんどなかったため(子どもの発達や予防接種などについての本はたくさん読みました)、急性期の医療現場に復帰することに、少しの不安もありました。
しかし実際に復帰してみると、数日後には何人もの患者さんを担当し、すぐにICUなどにも行くようになりました。5年前の知識と、それまでの経験だけで「できてしまった」のです。

主人や職場の理解もあり、とても楽しく仕事をしていたのですが、私は徐々に、「ついていけない」と感じることもなく「できてしまっている」自分に危機感を覚えるようになりました。
「私が現場を離れていた約5年の間に、治療法や薬剤は進歩し、もちろん理学療法分野にもたくさんの変化が起きているはず。なのに、それを(ふわっとしか)知らなくても、できてしまうんだ」と、焦りとも不安ともつかない感情が湧いたのを覚えています。
「もっと専門的な知識を、系統立てて学びたい」という思いと、何か自分を追い込むきっかけが欲しいと思い、脳卒中認定理学療法士を目指すことを決めました。

認定理学療法士の資格を取得するには?

私の職場には当時、認定理学療法士の取得者がいなかったので、最初は情報収集から始めました。
ちなみに現在、認定・専門理学療法士制度は変革期にあり、2022年4月にも新しい取得制度が発表されたばかりですが、ここでは、私自身が資格を取得したプロセスをお話しします。

まずは、受験資格を満たすことが必要です。
最初の条件として挙げられている「新人教育プログラムが修了していること」と、「希望領域を含む専門分野登録をしてから2年以上経過していること」はクリアしていたので、そこからさらに必要となる「認定理学療法士のための『協会指定研修』と、脳卒中認定理学療法士に特化した『認定必須講習会(脳卒中)』を受講すること」、そして「各領域の履修要件に即したポイントを取得すること」に取りかかりました。

ポイントは、学会発表・参加や実習指導、論文の執筆などで取得できます。それぞれ何ポイント取得できるのかは、協会ホームページで調べることができます。私の場合、認定理学療法士を目指す前から学会発表や実習指導は行っていたのである程度のポイントはあり、あとは足りない分を補うために、興味のある講習会などに積極的に参加しました。

それらの資格を満たせば、その後は10症例のケースレポートを作成し、審査をクリアすればいよいよ試験となります。

当日は、理学療法士の登録番号順に試験会場が割り当てられるのですが、私は10会場くらいのなかで、最も古い番号の会場でした。
試験は選択問題で、6割の正答率で合格、とされています。私は正直、試験直後はあまり手応えを感じられず、合格する自信はありませんでした。その分、合格者の欄に自分の番号を見つけたときは本当にホッとしました(その年の合格率は6~7割だったと思います)。

参考

>>【公益社団法人日本理学療法士協会】認定理学療法士制度

認定理学療法士を取得してみて

基本的な病態や画像についてはもちろんのこと、最新の治療法や再発予防の考え方などについて学べたことはとてもよかったです。医師や薬剤師らと情報交換する時も、より具体的な話ができるようになりました。そして、実際に患者さんを診るときにも、機能だけでなく、治療のどの段階にいるのかや投薬状況はどうかなどがきちんと把握できるようになりました。

また、学会や講習会に行っても、以前より理解が深まっているのを感じます。深く理解できるようになるから、新たな疑問が生まれてくる→もっと知りたくなる→だから勉強する・主治医に聞く──といった好循環が生まれました。

自宅と職場と保育園・学童保育をバタバタと行き来する生活の中で学習時間を確保するのは難しく、子どもが寝た後や職場の昼休みを勉強時間に充てたりしていました。3人の子どもを育てながらの資格取得は大変でしたが、取得して本当に良かったと思っています。何より大きな自信になりました。

認定理学療法士を取得すると診療報酬が加算される? 給与はアップする?

認定理学療法士がリハビリテーションを行っても、診療報酬は通常の理学療法士と変わりません。よって、勤務先の収益がアップすることもありません。

しかし、勤務先によっては、給与がひと月あたり数千円〜数万円アップするところもあるそうです。それだけ職場が「質の高い理学療法」に投資してくれているということですね。また、自費リハの施設などでは「スタッフは脳卒中認定理学療法士」と限定しているところもありますので、転職を考えている人の武器にはなると思います。
また、私は「医療ライター」としても活動しているのですが、「脳卒中認定理学療法士のライターさんに記事を書いていただきたい」というオファーを受けたこともあります。

総合病院に勤務している私が「認定理学療法士」を取得すること

最初にお伝えしたように「認定理学療法士」になることは、専門性を高め、「スペシャリスト」になることですが、私の感覚としては「スペシャリスト」になることで、より「ジェネラリスト」にも近づけたような気がします。同じようにカルテを読んでいても、以前よりもたくさんの情報が得られ、より広い視野で見ることができるようになりました。

そしてそれは、脳卒中領域だけでなく、他科の患者診療にも活かされています。
特に、この高齢化社会においては、「合併症のない患者さんはいない」といっても過言ではなく、運動器疾患や呼吸器疾患でリハオーダーが出ても、脳卒中の既往があるという方も珍しくありません。さらに、画像検査や血行動態などを学んだことで、循環器内科や心臓血管外科の患者さんの病態も評価しやすくなるなど、資格を取得しようと思った当初は考えもしなかったメリットを感じています。

脳卒中認定理学療法士を取得することで、見える景色が大きく変わる

日々の診療の中でコツコツと学びを積み重ねていく、というのももちろん大事だとは思いますが、時には、決められた時間で、ある程度負荷をかけてがっつり勉強するのもすごく身になると思います。私は、脳卒中認定理学療法士を取得することで、見える景色が大きく変わりました。
日々の患者診療が「できてしまっている」人にこそ、チャレンジしていただきたい資格です。

saito

理学療法士(脳卒中認定)/齋藤 里美

札幌の医科大学を卒業後、首都圏の急性期総合病院に約20年勤務。重複障害などで多科にまたがる患者さんの治療・方針の適正化を得意とする。現在は病院を早期退職しフリーランスの医療ライターや編集者として活動中。プライベートでは小中学生3人とチワワ2匹の母。趣味は仕事のほか、ジャズダンスや読書。

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