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セラピストが知っておきたい福祉用具に関する法制度

公開日:2022.09.20 更新日:2022.10.11

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文:中山 奈保子
作業療法士(教育学修士)

福祉用具の定義

リハビリテーション専門職にとって、最も身近な存在のひとつである福祉用具。福祉用具とひと言でいっても、さまざまな種類や用途があります。近年新たな技術により介護ロボットやAI、さらには仮想空間を用いたコンテンツなどが福祉用具の新たな可能性を示唆しています。

では具体的に、福祉用具とはどのようなものを指すのでしょうか。
心身の障害により日常生活に支障がある方々および介護にあたる方々の負担軽減を図る福祉用具の普及や研究開発の促進を目的に制定された「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」によると、福祉用具とは「心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人又は心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具」のことです(下図)。
福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」によると、福祉用具とは「心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人又は心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具

作業療法士や理学療法士の国家試験では、福祉制度や関連する法律をテーマにした問題が登場することがあります。具体的には、以下のような問題が出題されています。

《問題》補装具費支給制度で18歳未満のみが対象となるのはどれか

【作業療法士】第56回 午前 37
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律<障害者総合支援法>における補装具費支給制度で18歳未満のみが対象となるのはどれか。

<選択肢>

  1. 1. 座位保持椅子
  2. 2. 側弯矯正装具
  3. 3. 電動車椅子(リクライニング・ティルト式普通型)
  4. 4. 歩行器(六輪型)
  5. 5. ロフストランドクラッチ

解答と解説

正解:1

法律によって、誰にどの福祉用具を給付、あるいは貸与できるかが異なるため、法律ごと、あるいは自治体ごとのルールを常に確認する意識が大切です。
例えばこの問題では、障害者総合支援法において、18歳未満の身体障害児のみが対象となるものを選択しなければなりません。身体障害児のみが対象となるのは、選択肢1の座位保持椅子のほか、起立保持具、頭部保持具、排便補助具が含まれています。
成人および小児・成人共通のものには、義肢装具、補聴器、歩行器、車椅子、電動車椅子、意思伝達装置などが挙げられます。ただし、杖といっても形状が限られていたり、修理代のみを給付されたりするものもあります。

セラピストにも法律の理解と遵守が求められている

福祉用具の給付や貸与に関する制度は複雑なので、全てを理解するのは難しいかもしれません。
しかし、作業療法士は福祉用具の選定や提案に携わることも多く、対象者と関わるうえである程度は福祉用具に関する法制度の内容を理解しておく必要があります。

冒頭でご紹介した「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」では、福祉用具の定義以外にも、福祉用具普及、開発する国の役割や福祉用具普及に関する事項、開発する国および地方自治体の役割、福祉用具を作る者の役割、福祉用具を売ったり貸したりする者の役割、福祉用具の利用者を支援する施設の役割が規定されています(下表)。法的な位置づけとして、セラピストの役割がどのようなものなのか、何を求められているのかを理解するのに役立つかもしれません。

私たちは、このような法律を遵守するとともに、福祉用具が対象者の潜在的な心身機能回復力や、福祉用具以外の方法を選択することによるADL・QOLの向上を妨げないよう、多角的な視点で健康状態を把握し福祉用具を選定・提案、指導を行う必要があります。関連法規の理解と多職種連携の促進も、セラピストとしての重要な役割です。

福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」によると、福祉用具とは「心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人又は心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具

中山 奈保子

中山 奈保子(なかやま なおこ)

作業療法士(教育学修士)。
1998年作業療法士免許取得後、宮城・福島県内の医療施設(主に身体障害・老年期障害)に勤務。
現職は作業療法士養成校専任教員。2011年東日本大震災で被災したことを期に、災害を乗り越える親子の暮らしを記録・発信する団体「三陸こざかなネット」を発足し、被災後の日常や幼くして被災した子どもによる「災害の伝承」をテーマに執筆・講演活動を行っている。

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