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うつ病予防にも役立つ!うつ病患者へのリハビリテーション

公開日:2022.10.21 更新日:2024.03.13

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文:中山 奈保子
作業療法士(教育学修士)

「うつ病」は誰もがなる可能性がある

うつ病は、いまや国民病あるいは生活習慣病とも呼ばれるほど身近な精神疾患です。大人や思春期の子どもだけではなく、もっと幼い子どもたちにも発症するリスクがあります。

子どもの場合、自分の気持ちを上手に表現できなかったり、「子どもは気まぐれだから」「がんばれば、なんとかなる」などと軽く見過ごされてしまったりすることも少なくありません。不登校や登校渋り、食欲不振、昼夜逆転、反抗期の親とのコミュニケーションの影に、うつ病の兆候が潜んでいるケースもあります。

私たちの身近にたくさんの発症要因がある疾患であるうえ、日常生活や社会生活に大きな支障をきたす可能性があるため、うつ病発症の危険信号がともる前の予防が大切です。

<うつ病とは?>
うつ病とは、数ある精神疾患のなかでも幅広い年代、原因、背景によって発症する疾患(気分の障害)。
うつ病の発症原因には、遺伝的要因や性格特性、結婚、出産、死別、転職、昇進、引越しといったライフイベントが関与するほか、運動や食事、睡眠などの基本的な生活習慣も関与していることがわかっています。
うつ病の治療は、薬物療法と休息が中心とされてきましたが、それに加え最近では、患者さん本人が目標をもって前向きな気持ちで行動できるようなアプローチが必要であると考えられるようになってきています。

うつ病の患者さんを対象とした訓練法は、誰にでも取り入れやすいうつ病予防のヒントにもなり得ます。
作業療法士の国家試験では、以下のような問題が出題されています。

《問題》うつ病患者に行った訓練を表に示す。あてはまる訓練法はどれか。

【作業療法士】第56回 午前 42
うつ病患者に行った訓練を表に示す。
あてはまる訓練法はどれか。

状 況 職場の同僚に仕事を頼まれたが、他の仕事もあったので断った。
気 分(強さ:〜100) 不安 80 %、情けない 90 %、ゆううつ 70 %
自動思考(強さ:〜100) ・嫌われたかもしれない
・仕事をこなせない自分は落ちこぼれだ
根 拠 ・他の頼まれた人はすぐに引き受けていた
・みんな仕事をかけもちでこなしている
反 証 ・全ての仕事ができないわけではない
・頼まれて引き受けている仕事もある
適応的思考 ・みんな今忙しいわけではない
・自分の状況を同僚もわかってくれている
今の気分(強さ:〜100) 不安 40 %、情けない 30 %、ゆううつ 30 %
・少し気持ちが楽になった。
・思いつめ過ぎたと感じる。
・前を向いていきたい。

<選択肢>

  1. 1. コラム法
  2. 2. 自己教示法/li>
  3. 3. 行動活性化法
  4. 4. ポジティブ日誌
  5. 5. アサーショントレーニング

解答と解説

正解:1

表内の項目は、コラム法(自動思考記録表)で記載する内容を示しています。自分の感じ方・考え方を可視化することにより、認知の歪みや考え方の傾向に気づくことで気分を改善し、主体的な望ましい行動へと導きます。
<4. ポジティブ日記>が近い方法ですが、コラム法では、ネガティブな部分も含め感じ方・考え方の全体を可視化し、受け止めるのが、自己評価の改善や疾病管理・予防により役立ちます。

<2. 自己教示法>は、行動上の問題や考え方・感じ方を「自分自身に言い聞かせる」ものです。たとえば、高次脳機能障害のリハビリテーションにおいて、注意障害や感情コントロールの改善を目的に応用されます。うつ病においても、なにか喜怒哀楽のコントロールが難しくなってしまう場面で応用が利くかもしれません。

<3.の行動活性化法>は、「倦怠感がひどい。だから横になって休む」ではなく、あえて「散歩をしてみよう」と思い切って行動に移す方法を指します。なにかができるようになったり習慣化されたりというよりも、行動するための“小さなきっかけづくり”が鍵となります。

<5.アサーショントレーニング>は、コミュニケーション場面において、自分の気持ちや意見を相手に伝えられるようになるための、自己主張のためのトレーニングです。ふだんの会話で、知らず知らずのうちに自分の意見や考えを抑え込んでしまったり、ついつい相手の意見を優先してしまったりすることによってストレスをため込んでしまうのではなく、自分自身の価値観を率直に表現し、相手と良好な関係構築を目指します。

うつ病予防にも役立つ認知行動療法

今回選定した過去問題に登場するのは、うつ病の患者さんのリハビリとしても取り入れられている認知行動療法が中心です。
いずれの方法も、発症からの時間や薬物療法の経過はもちろんのこと、1日の日課や訓練としてこれらの活動を取り入れるために十分なエネルギーが確保されているかどうか確認しながら、選択するのが良いでしょう。

また、これらの訓練は日常においても取り入れやすく、自分の思考や気分を客観視したり、ストレスを軽減したりすることにも役立ちます。うつ病予防の一環として、実践してみるのも良いかもしれません。

■関連記事
認知行動療法に向かない人とは?メリットや他の治療法についても解説

中山 奈保子

中山 奈保子(なかやま なおこ)

作業療法士(教育学修士)。
1998年作業療法士免許取得後、宮城・福島県内の医療施設(主に身体障害・老年期障害)に勤務。
現職は作業療法士養成校専任教員。2011年東日本大震災で被災したことを期に、災害を乗り越える親子の暮らしを記録・発信する団体「三陸こざかなネット」を発足し、被災後の日常や幼くして被災した子どもによる「災害の伝承」をテーマに執筆・講演活動を行っている。

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