NG法?PEG?OE法? 知っておきたい嚥下障害における栄養管理
公開日:2018.06.11 更新日:2018.06.22
こんにちは、東京都言語聴覚士会の近藤晴彦です。養成校を卒業後、回復期リハビリテーション病院に十数年ほど勤務しています。若い言語聴覚士の方々に実務から得られる生の情報を言語聴覚士国家試験の問題を通してお伝えできればと思っています。よろしくお願いいたします。
今回取り上げる過去問は嚥下障害における栄養管理についてです。日常の言語聴覚士の仕事でも数多く直面するテーマでもあり、経鼻胃経管栄養法(NG法)、経皮的内視鏡的胃瘻増設術(PEG)などはみなさんもよくご存じかと思います。しかしもう一つ方法があることはご存じでしょうか? 今回はそんな嚥下障害の栄養管理についてポイントを押さえていきましょう。
過去問題【言語聴覚士】
第16回 午後 第187問
嚥下障害における栄養管理について正しいのはどれか。
- a.経口摂取を中止するだけでは嚥下性肺炎を防止できない。
- b.経口摂取が不可能であれば早期に胃瘻を増設する。
- c.経鼻経管栄養チューブは胃瘻に比べて長期管理に適している。
- d.中心静脈栄養では微量元素は補給できない。
- e.経管栄養ではチューブ先端の位置確認が重要である。
- 1.a、b
- 2.a、e
- 3.b、c
- 4.c、d
- 5.d、e
解答
正解:2
■解説
誤嚥性肺炎は唾液の誤嚥などが原因となる場合もあるため、経口摂取を中止するだけでは防止できません。また、長期にわたる経鼻経管栄養のチューブが誤嚥性肺炎の原因となることもあります。経管栄養方法はチューブの挿入位置と先端位置によって「NG法」や「OE法」と名称が変わります。また、先端位置が適切であるか注入前に位置確認を行います。以上の理由により、解答は<2>となります。
実務での生かし方

摂食嚥下障害患者の栄養管理においては、経鼻胃経管栄養法(NG法)が広く知られています。看護師さんが手技的に最も慣れている方法で、チューブの挿入口は鼻、先端は胃になります。また、経皮的内視鏡的胃瘻増設術(PEG)も多くの方がご存じではないかと思います。
この2つ以外の方法として、間歇的口腔食道栄養法(OE法)があります。チューブの挿入口は口、先端は食道になります。この方法では食事のたびにチューブを飲み込んで、食事が終了すればチューブを抜きます。また、チューブの先端が胃ではなく食道ですので、食道の蠕動運動を起こし、その蠕動により食物が胃に運ばれ、より生理的な食塊の流れに近づき、下痢や胃食道逆流の減少が期待できるとされています。また注入時間も短く済むなど多くのメリットがありますし、なにより食事の度にチューブを飲みこむので、間接嚥下訓練にもなるというメリットがあります。
症例としては意識がしっかりしていて協力的であること、発声が可能であることが挙げられ、嚥下訓練中に経口摂取が不足する場合などがOE法の適応と考えられています。
しかし、絞扼反射(gag)が強い、チューブを舌で押し出してしまう、噛んでしまう場合は適応ではないといわれています。日本摂食嚥下リハビリテーション学会のサイトに、手順やポイントが紹介されていますので、参考にするとよいでしょう。
参考:「間歇的口腔食道経管栄養法の標準的手順」一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
■まとめ
現在の臨床現場では急性期~生活期どのステージでも、栄養管理が重要視されています。みなさんの勤務先でも既にNST(栄養サポートチーム)が稼働していたりする病院なども多くあるのではないかと思います。
また、2018年度(H30年度)の診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟入院料1について、『管理栄養士が、リハビリテーション実施計画等の作成に参画することや、管理栄養士を含む医師、看護師その他医療従事者が計画に基づく栄養状態の定期的な評価や計画の見直しを行うこと等を要件とする。』とあり、栄養管理はすでにリハビリテーションとは切り離せない領域になっています。
しかし、誤解してはならないのは栄養管理も『他職種協働チームで実践する』ということにあり、決して言語聴覚士一人で対応することではないということです。言語聴覚士法の観点からも、これらの点はしっかりと認識しておき、正しい知識を持ち合わせておくことが重要であると思われます。

近藤 晴彦(こんどう はるひこ)
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
国際医療福祉大学大学院 修士課程修了。
回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。
東京都言語聴覚士会
http://st-toshikai.org/
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。
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