腕立て伏せができない原因は?筋トレ初心者におすすめの5ステップメニューを紹介
公開日:2024.04.15 更新日:2024.05.30
文:中村 直樹(理学療法士/パーソナルトレーナー)
筋トレをはじめる理由は人それぞれですが、定番の腕立て伏せや腹筋、スクワットは必ず取り入れたいエクササイズでしょう。なかでも腕立て伏せは、腰や肘が痛くなったり、鍛えたい部分に効いていなかったり、上手くできないと言う悩みが多いエクササイズでもあります。
この記事では、パーソナルトレーナーが、腕立て伏せができない理由と、誰でも簡単に腕立て伏せをマスターできる5つのステップを紹介します。
腕立て伏せができない理由3選
腕立て伏せができない理由は単に腕の筋力が弱いだけではありません。以下のような理由が考えられます。
手首や肘、肩関節の可動域がせまい
手首や肘が曲げられないと腕立て伏せができないのは当然ですが、十分な可動域が無いと手首や肘を痛めてしまう原因にもなります。腕立て伏せの姿勢で手首に痛みを訴えるケースが非常に多いのです。どのようなトレーニングをするにしても、まずは可動域を確保することが必要不可欠です。
また、意外かもしれませんが、腕立て伏せの動作には肩関節や肩甲骨の可動域も重要です。肩関節の微妙な回旋運動はインナーマッスルであるローテーターカフと呼ばれる4つの筋肉が調整しています。
肩甲骨は前鋸筋や菱形筋をはじめとする17種類の筋肉がそのポジションを調整しているのです。そのため、理想的な腕立て伏せを行うためには、これらの筋群を適切に働かせる必要があります。
体幹の筋力と筋持久力不足
腕立て伏せは腕の筋力が重要であるのは間違いありませんが、実は腕の力があっても体幹の筋力が弱い場合は上手く行うことができません。なぜなら、腕立て伏せの姿勢を保持するためには肩から足関節までを固定しておく必要があり、とくに中心部である体幹には大きな負担がかかるからです。腕立て伏せは腕の筋肉だけでなく体幹も同時に鍛えることができるのです。
体幹を固定するためには、前面の腹筋群だけではなく背面の背筋群の筋力や筋持久力、そして両者のバランスが重要となります。正しいフォームをマスターして理想的な上半身を手に入れましょう。
大胸筋、上腕三頭筋、前鋸筋の筋力不足
腕立て伏せを行う最大の目的は、大胸筋、上腕三頭筋、前鋸筋の筋力アップです。一方、これらの筋力が弱いと1回も腕立て伏せを行うことができません。自重トレーニングすべてのエクササイズに共通することですが、最低1回は動作をすることが条件となります。できない場合は腰などに負担がかかり痛めてしまうことになります。
そのため本記事で紹介する負荷を減らして行う方法からスタートすることをおすすめします。次第に負荷を増やしていくことで正しい腕立て伏せができるようになります。
腕立て伏せの間違ったフォーム
腕立て伏せは目的にあわせてさまざまな部位を鍛えることができますが、まずはもっともスタンダードなやり方をマスターしましょう。よくある間違ったフォームを3つ紹介しますので、ご自身でチャレンジする際は注意してください。
腰が反ってしまう
もっとも多いのは腰を反らせてしまうケースです。体幹を固定して美しい腕立て伏せを行うためには、後頭部からかかとまでのラインに対し臀部を高くします。
腰が反ってしまうのは体幹筋力、とくに腹直筋が弱いためで、最悪の場合腰を痛めてしまいます。必ず臀部の位置をわずかに高く保つようにしましょう。
頭だけが下がってしまう
回数を意識するあまり、腕を曲げずに頭を下げてしまうケースがあります。大胸筋や上腕三頭筋を鍛えるためには胸を深く沈める必要があるため、頭の位置を高く保ち、鼻やあごではなく胸を床につけるつもりで行うと効果的です。
回数よりも1回の動作の美しさを意識して、頭を後方に引いた状態で行うと理想的な腕立て伏せができるようになります。
両側の肩甲骨が内側に寄ってしまう
正しく腕立て伏せをできない人は最後まで腕を伸ばし切れていません。肘関節は伸びていても肩甲骨の前突(プロトラクション)が不完全となっています。
これは前鋸筋が弱い方に多くみられます。沈み込んでしまう場合は両側の肩甲骨を内側に寄せることを意識し、腕を伸ばしたときはしっかりと肩甲骨同士を引き離す意識をもちましょう。
正しい腕立て伏せができるようになるためのメニュー
正しい腕立て伏せをマスターするために、必要な要素を5ステップで紹介します。
Step1 可動域を確保するストレッチ
もっとも深く曲げるためには手関節のストレッチが重要です。
1.片方の手のひらを上に向け、肘が完全に伸びるように前方に差し出します。
2.反対側の手で親指以外の4本の指先をつかみ、下方に力を加えながら手前に引きます。
3.前腕前面にある筋肉が伸びるところで10秒間キープし、反対側も同様に行います。
手の甲を上に向ける後面も同様に伸ばして前後面の緊張バランスを整えます。
1.片方の手を軽く握り、肘と手首を軽く曲げた状態で前方に差し出します。
2.反対側の手で包み込み、手前に力を加えます。
3.前腕後面にある筋肉が伸びるところで10秒間キープし、反対側も同様に行います。
肩関節周囲にある筋群を伸ばして肩甲骨の運動を最適化します。
1.片方の腕を胸の前に挙げ、反対側の腕でひじのあたりを抱えます。
2.胸は正面を向いたままにし、親指が上を向くようにして左手なら右方向へ、右手なら左方向に引っ張りながら胸に押しつけます。
3.肩甲骨の内側や肩の外側が伸びるところで10秒間キープし、反対側も同様に行います。
同様に背中側の筋群も伸ばして肩甲骨の運動を最適化します。
1.両手を腰の後方(背中側)で組み、両肘をしっかり伸ばします。
2.両側の肩甲骨を内側に寄せて、両手を上方向にもち上げます。
3.胸や上腕前面が伸びるところで10秒間キープします。
Step2 腕立て伏せの基本姿勢をマスター(体幹持久力強化)
体幹の筋力や筋持久力を鍛えるために、腰が反らないようにして腕立て伏せの姿勢をキープします。フローリングで行うと足が滑りやすい、手が痛いなどと感じる方は、ヨガマットや畳、絨毯の上で行うなど工夫をしてみてください。
1.両手を肩幅に広げ床につきます。指を少し開いて、指先は前方に向けます。
2.腕が床面に対して垂直になるようにつま先の位置を調整しながら腰幅に広げます。体重が両手両足に均等に掛かるようにしましょう。
3.おなかを凹ませて、頭部、体幹、股関節、ひざ関節が一直線になるようにして1分間キープします。
Step3 ひざつき腕立て伏せ(上腕三頭筋、大胸筋強化)
負荷を減らした状態で腕立て伏せを行い、上腕三頭筋と大胸筋を鍛えます。
1.両手を肩幅に広げ床につきます。指を少し開いて、指先は前方に向けます。
2.うつぶせで床に寝たままひざを90°に曲げます。
3.腰を反らないように注意しながら、ひざをついた状態で腕を伸ばして上半身を起こしていきます。
4.頭部、体幹、股関節を真っすぐにしたまま、腕の曲げ伸ばしを10回行います。
Step4 肩甲骨のプロトラクション(前鋸筋強化)
Step3・ひざつき腕立て伏せの姿勢で肩甲骨を動かし前鋸筋を鍛えます。
1.腕を伸ばしたまま、両側の肩甲骨を内側へ寄せるように胸部を少し下げます。
2.両側の肩甲骨を引き離すように胸を高くもち上げ、10回繰り返します。
きついと感じる方は、少し腕を曲げてもかまいません。
Step5 理想的な腕立て伏せ
最後に理想的なフォームで腕立て伏せをやってみましょう。できれば動画を撮影して正しくできているかをチェックするのがおすすめです。
1.Step2の基本姿勢から、腰が反らないように注意しながら肘が90°になるまで胸を床面に近づけます。
2.肩甲骨を引き離すことを意識しながら、腕をゆっくり伸ばして元の姿勢に戻ります。
3.ゆっくり1回ずつ丁寧に正しいフォームで行うことを意識して10回繰り返します。
まとめ
今回は腕立て伏せができないと言う方向けに、腕立て伏せができるようになる5つのステップを紹介しました。定番の筋トレだからこそ美しくできるようになると自信をもてます。焦らずステップアップしながら理想的な上半身を手に入れましょう。
腕立てでは物足りない方は「胸トレで分厚い胸板をつくるポイントは?効果的なメニューとプログラム例を紹介」のコラムも参考にしてください。
中村 直樹
理学療法士資格をもち、パーソナルトレーナーとして活躍中。アンチエイジングや健康寿命を延ばすためのレッスンやセミナーも行う。毎週3本以上の科学論文を読み、常に最新の情報を入手することと、科学的な事実に基づいた情報提供を行うことをモットーに活動。社会に情報があふれるあまり、場合によっては「美容や健康を害する可能性のある情報」が話題となる状況を危惧し、科学的根拠にもとづくアンチエイジングを推奨している。
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