梨状筋の作用や筋トレ方法は?梨状筋症候群の原因についても解説
公開日:2025.03.24
文:内藤 かいせい(理学療法士)
梨状筋とはどんな筋肉なのか、どのような作用があるのか知りたい方はいませんか?この筋肉はおしりの深層についており、股関節の動きや安定性に関する作用があるとされています。
この記事では、梨状筋の具体的な作用や筋トレ、ストレッチの方法をご紹介します。梨状筋についての知識を深めることで、臨床に役立てられるでしょう。
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梨状筋とは?
梨状筋とは、仙骨から大腿骨の大転子にかけて横方向についている小さな筋肉です。梨状筋の起始・停止と支配神経は以下のとおりです。
起始 | 仙骨前面で第2〜4前仙骨孔の両側 |
---|---|
停止 | 大転子先端の後縁 |
作用 | 股関節外旋、外転 |
支配神経 | 仙骨神経叢枝(L5〜S2) |
梨状筋は以下の筋肉を含めて「深層外旋六筋」と呼ばれており、股関節を外旋させる作用があります。
・ 下双子筋
・ 内閉鎖筋
・ 外閉鎖筋
・ 大腿方形筋
これらの筋肉も梨状筋の周囲についており、共同して股関節の動きをサポートしています。
梨状筋の触診方法
梨状筋は深部についている筋肉で、起始・停止部の触知は難しいですが、ポイントをおさえれば筋腹の触診は可能です。
1. うつ伏せになってもらう
2. 上後腸骨棘(PSIS)と大転子上縁、尾骨を触診する
3. それぞれのランドマークを結び、三角形を作る
4. PSISから尾骨のラインの中央から大転子までを結ぶ
5. 3で結んだラインの中央を触診する
6. 膝を屈曲しつつ股関節を外旋してもらい、梨状筋の収縮を確認する
7. 梨状筋の場所を探すことで、表層についている大殿筋の奥に小さな筋腹と収縮が感じられます。
梨状筋の場所を探すことで、表層についている大殿筋の奥に小さな筋腹と収縮が感じられます。
梨状筋の作用
梨状筋にはどのような作用があるのでしょうか。ここでは、具体的な作用についてみていきましょう。
股関節の外旋・外転など
前述したように、梨状筋は深層外旋六筋の1つなので、おもに股関節の外旋に働きます。そのため、歩行時の方向転換をはじめとしたさまざまな動作に関わっています。
梨状筋は外旋だけでなく、股関節の角度に応じて作用が変化するのも大きな特徴です。股関節が45〜60度に屈曲している場合、外転に作用します。それ以上の屈曲位では、本来の作用とは逆の股関節内旋に働きます。
股関節の安定性の向上
梨状筋は股関節の運動だけでなく、安定性を高めるための役割も担っています。梨状筋は深層についている筋肉、つまりインナーマッスルに該当するため、ほかの深層外旋六筋とともに股関節を支えているのです。
この作用は、とくにスポーツ動作に大きく関係しているとされています。実際に、梨状筋の筋横断面積の増加が小さいスポーツ選手は、下肢障害の発生率が高くなるとされています。このことから、梨状筋は小さい筋肉ではあるものの、動作に大きく貢献しているといえるでしょう。
梨状筋の筋トレのやり方
股関節の動きや安定性を高めるためには、梨状筋のトレーニングが重要です。ここでは、梨状筋の筋トレ内容についてご紹介します。
1. 側臥位になって両膝を曲げる
2. 股関節を45〜60度程度に屈曲する
3. 両足をつけた状態で上側の股関節を外旋する
4. 足を開き切ったらもとに戻る
5. 2〜3の手順を20回×2〜3セット行う
1. 立った状態で足を肩幅程度に開く
2. 両足を前に向けて、横歩きをする
3. 左右で繰り返し行う
ゴムバンドを太ももにかけて行うと、梨状筋だけでなく中殿筋にも刺激が入りやすくなります。
梨状筋のストレッチのやり方
梨状筋が凝り固まっている場合は、ストレッチによって緊張をやわらげましょう。ここでは、梨状筋のストレッチのやり方をご紹介します。
1. うつ伏せになり、片膝を90度曲げる
2. 手で曲げた膝を持ちながら、外側に倒す
3. 倒した状態を20秒ほどキープしたらもとに戻る
4. 反対の足で行う
1. あお向けになる
2. 左足を右足の膝の上に乗せる
3. 手を使って右足を胸に近づける
4. 近づけた状態を20秒ほどキープしたらもとに戻る
5. 反対の足で行う
梨状筋症候群とは?
梨状筋の問題によって生じる代表的な障害として、梨状筋症候群があります。ここでは、梨状筋症候群の症状や原因、治療法について解説します。
坐骨神経の圧迫によって起こる症状
梨状筋症候群とは、梨状筋の下に通っている坐骨神経が圧迫されることで起こる障害です。梨状筋にストレスがかかって筋肉が硬くなると、坐骨神経を圧迫する原因となります。
梨状筋症候群のおもな症状は、おしりの外側や太もも後面の痛みとしびれです。症状の特徴として、長時間の座位で痛みが強くなり、歩くと楽になることがあげられます。また、以下のような梨状筋に負担がかかる動作を行うと、症状が悪化しやすくなります。
中腰の姿勢
ゴルフのスイング
長時間の運転
触診の際には、梨状筋が硬くコリコリとした状態を感じやすいです。梨状筋が硬く、下肢に痛みやしびれなどが生じている際は、梨状筋症候群を疑いましょう。
梨状筋症候群の治療法
梨状筋症候群の治療では、まず保存療法から開始します。保存療法では、梨状筋のストレッチや薬物療法によって痛みの軽減を図ります。そのほかにも、ブロック注射によって症状をおさえる場合もあるでしょう。
症状が強い場合は、手術による治療も検討する必要があります。梨状筋症候群に対する手術では、梨状筋の一部を切除して坐骨神経の圧迫を解消する治療法が代表的です。ただし、梨状筋症候群で手術に発展するケースは比較的少ないとされています。
梨状筋の特徴を把握しておこう
梨状筋は深層外旋六筋の1つで、股関節の動きや安定性をサポートする働きがあります。深層の筋肉ではあるものの、コツをおさえれば筋腹の触診も可能です。
また梨状筋によって起こる問題として、梨状筋症候群があげられます。梨状筋症候群になると下肢の痛みやしびれなどの神経症状が現れる恐れがあるため、ストレッチをはじめとした保存療法の実施が重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、梨状筋の知識をリハビリ場面で活用してみましょう。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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