腓腹筋とはどんな筋肉?特徴や作用をおさえてリハビリに活かそう!
公開日:2025.03.27
文:内藤 かいせい(理学療法士)
ふくらはぎの筋肉である腓腹筋には、どのような役割があるのか気になる方もいるのではないでしょうか。腓腹筋は足関節の動きだけでなく、血流の循環をサポートする作用もあるとされています。
この記事では、腓腹筋のおもな作用や筋トレ、ストレッチの方法をご紹介します。この筋肉の知識を深めることで、臨床現場で役立てられるようになるでしょう。
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腓腹筋とは?
腓腹筋とは、下腿後面についている大きな筋肉のことです。腓腹筋の起始・停止や神経支配は以下のとおりです。
起始 |
・外側頭:大腿骨外側上顆 ・内側頭:大腿骨内側上顆 |
---|---|
停止 | 踵骨腱(アキレス腱)となり、踵骨隆起後面の中部 |
作用 |
足関節底屈 かかとの挙上 膝関節屈曲 |
支配神経 | 脛骨神経(S1、S2) |
腓腹筋は外側頭と内側頭の2つに分かれており、脛骨後面に左右についています。表層の筋肉なので筋腹の視認が容易で、足関節底屈をすれば筋収縮を確認できます。
腓腹筋の作用
腓腹筋には、どのような作用があるのでしょうか。ここでは腓腹筋の作用について詳しく解説します。
足関節底屈・膝屈曲
腓腹筋のおもな作用は、足関節底屈です。足関節底屈は、歩くときや走るときに地面を蹴り出す際に必要な動作です。さらに、腓腹筋は速筋(白筋)線維が多く含まれていることから、瞬発的な力を発揮しやすいタイプといえます。そのため、スポーツでの方向転換やダッシュなどの素早い動きを行う際に重要な筋肉といえるでしょう。
また、腓腹筋は起始部が大腿骨に付着していることから、多関節筋(複数の関節をまたぐ筋肉)という特徴も持っています。足関節だけでなく、膝関節の屈曲にも関与する点も特徴の1つです。
筋ポンプ作用
腓腹筋には筋ポンプ作用があり、下半身の血流の循環を良好にする役割があります。腓腹筋が収縮と弛緩を繰り返すことで、下肢の血液を心臓に向かって押し上げやすくなります。この作用によって下肢の血液循環が促進され、足のむくみの防止につながるのです。
とくに長時間の立ち仕事や座り仕事で足がむくみやすい方にとって、この筋ポンプ作用の活用は効果的といえます。このような作用から、腓腹筋は「第2の心臓」と呼ばれることもあります。
腓腹筋とヒラメ筋の違い
腓腹筋と関係が深い筋肉として、ヒラメ筋があげられます。ヒラメ筋も下腿の筋肉であり、腓腹筋の下方向についています。ヒラメ筋の詳細について、以下の表にまとめました。
起始 |
腓骨頭と腓骨後面 ヒラメ筋線と内側縁 ヒラメ筋腱弓 |
---|---|
停止 | 踵骨腱(アキレス腱)となり、踵骨隆起後面の中部 |
作用 |
足関節底屈 かかとの挙上 |
支配神経 | 脛骨神経(L5〜S2) |
ヒラメ筋は腓腹筋とは異なり、速筋よりも遅筋(赤筋)線維のほうが豊富な傾向にあります。そのため、瞬発的な動きよりも持続的な運動に関わる筋肉です。
またヒラメ筋は単関節筋であり、足関節にのみ作用します。腓腹筋とヒラメ筋はどちらも足関節底屈の作用があるため、まとめて「下腿三頭筋」と呼ぶことも多いでしょう。
腓腹筋に問題が生じた際の影響
腓腹筋になにかしらの問題が生じた際に、身体にどのような影響があるのでしょうか。ここでは、その影響について詳しくみていきましょう。
足関節背屈制限
腓腹筋の柔軟性が低下した場合、足関節背屈が制限されやすくなります。背屈制限が現れると立つ、歩くなどの多くの動作に支障をきたす恐れがあるので、柔軟性の低下には十分に注意が必要です。腓腹筋は短縮しやすい傾向にあり、病気やケガで入院する患者さんの多くは背屈制限が起こりやすいとされています。
高齢者はもちろん、若い方でも安静期間が続くと背屈制限が起こりやすくなるので、定期的な運動やストレッチが重要です。
こむらがえり
こむら返りは、腓腹筋によく起こる症状の1つです。こむら返りは筋肉が突然強く収縮して痛みをともなう状態のことで、一般的に「足がつる」と表現されます。代表的な原因としては、以下のとおりです。
● 疲労がたまっている
● 水分が不足している
● ミネラルやビタミンが不足している
これらの原因によって神経が異常に緊張し、筋肉の過剰収縮が生じてこむら返りが起こります。運動中だけでなく、睡眠中にも起こるのも特徴の1つです。こむら返りを予防するためには、ストレッチや水分補給などの対策をとることが重要です。
腓腹筋の筋トレのやり方
腓腹筋をうまく活用するためには、トレーニングで鍛えることが大切です。ここでは、腓腹筋の筋トレのやり方について解説します。
カーフレイズ
カーフレイズは、シンプルにかかとを上げるトレーニングです。
1. 立った状態で足を肩幅程度に広げる
2. 手すりや壁などに軽く手を添える
3. 両かかとをゆっくり上げる
4. かかとを上げきったらゆっくりと下ろす
5. 3〜4の手順を15〜20回×2〜3セット行う
重心が前方に移動すると腓腹筋に効かせにくいため、かかとを真上に上げるイメージで行いましょう。
アンクルホップ
アンクルホップとは、ジャンプをしながらかかとを上げるトレーニングです。瞬発力が求められるトレーニングなので、腓腹筋を効率的に鍛えられます。
1. 立った状態で足を肩幅程度に広げる
2. かかとを浮かせる
3. 膝を軽く曲げてジャンプする
4. かかとを浮かせながら着地する
5. 3〜4の手順を10〜15回×2〜3セット行う
腓腹筋のストレッチのやり方
腓腹筋の柔軟性を高めるためには、継続的なストレッチが重要です。ここでは腓腹筋のストレッチのやり方について解説します。
1. 立った状態で片足を後ろに引く
2. 壁や手すりに手を添えつつ、引いた膝を伸ばす
3. 重心を前方に移動してアキレス腱を伸ばす
4. 20秒ほどキープしたら反対の足で行う
腓腹筋の起始は大腿骨についているため、膝を曲げて行うと筋肉がゆるみ、ストレッチの効果が低下する恐れがあります。反対に、ヒラメ筋を優位にストレッチしたい場合は、膝を曲げて行いましょう。
腓腹筋の特徴を把握しておこう
腓腹筋は、おもに足関節底屈に働き、さまざまな動作で活用されます。速筋(白筋)線維の割合が多いため、瞬発力が求められるスポーツを行ううえで欠かせない筋肉といえるでしょう。
また腓腹筋には筋ポンプ作用があり、下半身の血液の循環を良好にする働きも期待できます。腓腹筋に対してアプローチする際は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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