斜角筋とはどんな筋肉?おもな役割や斜角筋症候群との関係性を解説
公開日:2025.03.29
文:内藤 かいせい(理学療法士)
斜角筋とはどのような筋肉なのか、詳しく知りたい方はいませんか?斜角筋は首まわりについており、頸部の動きに関係している筋肉です。また、関連する障害に斜角筋症候群があげられます。
この記事では、斜角筋の概要やストレッチ方法をご紹介します。斜角筋についての知識を深めることで、首まわりの構造を把握しやすくなるでしょう。
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斜角筋とはどんな筋肉?
斜角筋とはどのような筋肉なのでしょうか。ここでは、斜角筋の解剖学的な知識や具体的な作用について解説します。
斜角筋は「前・中・後」の3つに分かれている
斜角筋は「前・中・後」の3つの筋肉に分かれており、それぞれ頸椎から肋骨の左右についています。3つの斜角筋の起始・停止や支配神経は以下のとおりです。
起始 | 第3〜7頸椎の横突起前結節 |
---|---|
停止 | 第1肋骨の前斜角筋結節 |
作用 |
肋骨の引き上げによって胸郭を広げる(吸気) 肋骨が固定されている場合、頸椎を屈曲する 片側の場合、同側へ側屈する |
支配神経 | 頸神経前枝(C5~C7) |
起始 | 第2〜7頸椎の横突起前結節 |
---|---|
停止 |
第1肋骨の鎖骨下動脈溝の後方 第2・3肋骨 |
作用 |
肋骨の引き上げによって胸郭を広げる(吸気) 肋骨が固定されている場合、頸椎を屈曲する 片側の場合、同側へ側屈する |
支配神経 | 頸神経前枝(C2~C8) |
起始 | 第5〜6頸椎の横突起前結節 |
---|---|
停止 | 第2肋骨外側面 |
作用 |
肋骨の引き上げによって胸郭を広げる(吸気) 肋骨が固定されている場合、頸椎を屈曲する 片側の場合、同側へ側屈する |
支配神経 | 頸神経前枝(C7・C8) |
斜角筋の作用
斜角筋は、起始部と停止部どちらが固定されているかによって作用が変わります。頸椎が固定されている場合、斜角筋は呼吸補助筋としての役割を果たします。具体的には、肋骨を引き上げて胸郭を広げ、吸気を補助しているのです。
また、肋骨側が固定されている場合、頸椎の運動に関わります。両側の斜角筋が働く場合は頸椎の屈曲に、片側が働く場合は側屈に作用します。このような作用は「前・中・後」に共通しているものです。
斜角筋症候群とは?
斜角筋に関係した障害として、斜角筋症候群があげられます。ここでは、斜角筋症候群とはどのような障害なのかを解説します。
斜角筋症候群は胸郭出口症候群の一種
斜角筋症候群は、「胸郭出口症候群」の1つに分類される障害のことです。胸郭出口症候群とは、首から腕にかけて走る神経(腕神経叢)や血管(鎖骨下動脈)が圧迫されることで起こる症状の総称です。
これらの神経や血管は、肋骨や斜角筋(前・中)などに挟まって走行しています。斜角筋の問題によって神経・血管が圧迫されることを斜角筋症候群といい、以下のような症状が現れます。
● 上肢のだるさ
● 冷感
● 首や肩の痛み
とくに、上肢を挙上すると神経や血管が引っ張られ、症状が現れやすくなるのが特徴です。斜角筋症候群の原因としては、斜角筋の使いすぎや先天的な肋骨の変形などがあげられます。
斜角筋症候群の診断方法
斜角筋症候群は、おもに整形外科テストと画像検査によって診断します。整形外科テストで行われる代表的なものは、「ルーステスト」と「モレーテスト」があげられます。それぞれのテストの具体的な方法は、以下のとおりです。
1. 両方の肩関節を90度外転、肘関節を90度屈曲する
2. 手のひらを前に向けて、両手をグーパーグーパーする
3. 手のしびれやだるさがみられたら陽性
1. 被検者の鎖骨上窩部にある前斜角筋を触知する
2. 前斜角筋を指で圧迫する
3. 圧痛やしびれが現れたら陽性
これらの検査に加えて、超音波検査やCT検査などの画像診断も行い、総合的に判断します。
斜角筋症候群の治療法
斜角筋症候群の治療では、まず保存療法から行われます。症状の改善のためには、原因となっている斜角筋の緊張を緩和することが重要です。保存療法では、斜角筋をはじめとした肩甲骨周囲の筋肉をストレッチして、柔軟性を高めます。そのほかにも、不良姿勢の改善のために動作トレーニングや筋力強化などの運動療法も併用して症状の改善を図ります。
保存療法で十分な改善が得られない場合や、血管の圧迫で血栓が形成される恐れがある場合は、手術が検討されるケースもあるでしょう。手術では、血管や神経の圧迫原因となる肋骨や筋肉を切除する方法が一般的です。このように、斜角筋症候群の症状や状態にあわせて適切な治療が選択されます。
斜角筋のストレッチ
斜角筋が硬い方は、セルフストレッチで柔軟性を高めることが重要です。ここでは、斜角筋のストレッチのやり方をご紹介します。
1. 右手で反対側の頭の横をおさえる
2. 頸部を伸展しつつ、右方向に側屈させる
3. 痛みが出ない範囲で首を倒したら、20秒ほどキープする
4. 反対側で行う
1. イスに座って姿勢を伸ばす
2. 両手を後ろで組んで左右の肩甲骨を寄せる
3. 胸を突き出した状態を20秒ほどキープする
ストレッチ中は呼吸を止めないように注意しましょう。
斜角筋の特徴をおさえておこう
斜角筋は「前・中・後」の3つの筋肉で構成されており、頸部の運動や呼吸の補助に関与しています。斜角筋症候群は、斜角筋によって神経や血管が圧迫されることで、上肢のしびれや痛みなどの症状が現れます。
この症状を改善するためには、ストレッチで筋肉の柔軟性を高めることが重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、臨床や普段の生活に役立ててみましょう。

内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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