クレーム応対のポイント②③【第74回】
公開日:2022.12.23 更新日:2023.03.22
文:村尾 孝子
薬剤師/医療接遇コミュニケーションコンサルタント
前回に続いて、クレーム応対のポイントについてお伝えします。今回はクレーム応対ポイントの②「相手の話を最後まで聴く」と③「言い訳しない」をご紹介します。
クレーム応対のポイント②「相手の話を最後まで聴く」
クレーム応対では、状況確認や情報収集のために患者さんの話を丁寧に聴くことが重要です。患者さんが何に対して怒りを感じているのか、不満に思っているのかを最後まで丁寧に聴きましょう。
話の途中で遮られるのは誰でも嫌なものです。クレーム応対中、患者さんの話を途中で遮ると、「黙って話を聞け」とばかりに高ぶっている気持ちがさらにヒートアップすることも考えられます。また「自分の話を聞く気がない」と感じ、不信感や嫌悪感を抱かせる原因にもつながります。
まずは、患者さんに不満や言いたいことをすべて吐き出してもらい、じっくり話を聴くことで高ぶっている気持ちを落ち着かせることが大切です。
具体的には、「しかし」「でも」「そうはおっしゃいますが」などの会話をさえぎる言葉や、「たぶん」「~と思います」といった曖昧さが残る表現を使わないように気を付けましょう。(第72回参照)
話を聴く際は「はい、申し訳ございません」のように「はい+〈謝罪の言葉〉」とあいづちを入れ、「確かにおっしゃるとおりです」など共感の意志を示すといいでしょう。相づちやうなずきを入れながら患者さんが気持ちよく話せる雰囲気を作り、最後まで真剣に話を聴きましょう。
話を聴く際は、患者さんに何度も同じ説明をさせないよう、クレーム内容は正確にメモを取りながら聴くのがおススメです。患者さんの話す内容を整理するのに役立ちますし、責任者や同僚への報告が正確にできるようになります。
質問と要約を繰り返しながらメモを取ることで、真剣に話を聞いていると患者さんに伝える効果もあります。メモする際は、クレームの状況だけでなく、患者さんの思いや感情も忘れずに記録しましょう。クレームの記録については、正確さが欠かせません。メモを取った内容から「5W1H」を意識して事実関係をまとめ、問題点を明確にするといいでしょう。
なお、電話で対応する場合は、対面の時以上に慎重さが求められます。表情が見えない分、声だけで感情を伝える必要がありますから、真摯に相手の話を聴く姿勢が欠かせません。
クレーム応対のポイント③「言い訳しない」
クレームの内容が一方的に間違っている場合など、反論したくなるケースもありますが、クレーム応対では言い訳は厳禁です。言い訳は患者さんを攻撃するのと同じで、患者さんの感情を一層悪化させ、不信感をあおることにつながりかねません。
患者さんの話を聞いて、最初から「自分たちに非はない」などと反論することや、「自分は悪くない」などと言うと、「患者さんが悪い」となってしまいますから要注意。
また「自分は担当ではないのでよくわかりません」のような言葉も、自分を正当化する言い訳になってしまいますからNGです。他にも「急いでおりましたので…」「大勢の患者さんがお待ちでしたので…」などの言い訳や「基本的には、そのような間違いは起こらないはずなのですが…」「普通は…」「一般的には…」といった状況を比較するような表現も控えましょう。
たとえ言い訳したい気持ちがあってもぐっと我慢して、患者さんが困っている気持ちや状況を理解し共感を示すことが、クレームの早期収束につながります。
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村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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