クレーム応対のポイント①【第73回】
公開日:2022.11.28 更新日:2023.03.22
文:村尾 孝子
薬剤師/医療接遇コミュニケーションコンサルタント
前回まで、クレームの初期応対の必要性とクレームを受けたときに気を付けたい動作やボディランゲージについて考えてきました。
今回から、実際にクレームを受けたときの応対ポイントについて具体的に説明していきます。
クレームを受けたとき、直接対応するスタッフは一人かもしれませんが、早期収束には職場全体での素早い情報共有と連携が欠かせません。
いつどのような場面でクレームを受けても落ち着いて行動できるように、スタッフ全員がクレーム応対について正しく理解していることが大切です。
そこで、クレーム応対のポイントを次の7つに分けて説明します。
①謝罪する
②相手の話を最後まで聴く
③言い訳をしない
④最優先で行動する
⑤対策を明確に伝達する
⑥すぐに担当者・責任者・職場スタッフに報告する
⑦連絡する期限を伝え、厳守する
クレーム応対のポイント①「謝罪する」
今回はポイント①「謝罪する」について詳しく紹介します。
クレームを受けたら、病院やセラピスト側に非があってもなくても、まず謝罪します。
どのようなクレームであっても患者さんに不快な思いをさせてしまったことは事実ですから、その精神的被害に対する謝罪です。
謝罪の言葉は普段使う機会が少ないため、状況に応じてすぐに言えるように日頃から練習しておきましょう。
クレーム応対では、適切な敬語をつかうことも重要です。慌てたり動揺したりしてふとした瞬間に友達言葉や上から目線の言葉などが出てしまわないよう、十分注意する必要があります。
患者さんの使う言葉に合わせて尊敬語・謙譲語を使いわけられるよう敬語をしっかりマスターしておき、言葉だけでなく表情と態度でもお詫びの気持ちを伝えましょう。(第71・72回参照)
クレーム応対でよく使う謝罪の言葉については第72回でご紹介しましたが、対応の進み具合やクレームの段階ごとに謝罪の言葉を変えていくと誠意が伝わりやすくなります。
ステップごとの謝罪の言葉
ⅰ)現状に対する謝罪
「不快な思いをさせてしまった」という現状に対する謝罪とともに、患者さんの気持ちを受けとめ理解していることを伝えましょう。
万が一患者さんに身体的被害がある場合は、健康状態等を気遣う一言も大切です。
「この度はお急ぎのところ、ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
「ご不便をおかけして申し訳ございません。大変お困りのこととお察しします」
「ご不快なお気持ちにさせてしまい、大変申し訳ございません。お加減はいかがでしょうか」
ⅱ)過去の経緯に対する謝罪
現状について謝罪した後、日頃どのような対策をしているかなど過去の経緯について説明したうえで謝罪します。
「日頃からこのようなことがないよう十分心掛けておりますが、実際にご迷惑をおかけしてしまい、深く反省しております」
ⅲ)今後に対する謝罪
事実確認等が終わったら、病院やセラピスト側に非が認められる場合はできるだけ早く問題の解決策や代替案などを提示してお詫びします。
非がない場合であっても、患者さんが納得するまで丁寧に根気強く説明しましょう。患者さんの指摘の中には、業務改善につながる内容が含まれることもあるため、貴重な意見を頂いたことについて感謝しお礼を伝えることも大切です。
誠意をもってお詫びしていることを伝えるため、患者さんの名前を呼びかけながら謝罪すると効果的です。
「今後は○○様にご迷惑をおかけすることが無いよう、十分気を付けてまいります。早速、△△について改善いたします。貴重なご意見を賜りまして、ありがとうございました」
「今回のことは、〇〇様の貴重なご意見として全体会議で発表させていただきます。貴重なご意見をありがとうございました」
次回は、クレーム応対のポイント②と③についてご紹介します。
>>【全国どこでも電話・メール・WEB相談OK】セラピストの無料転職サポートに申し込む
村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
他の記事も読む
- メールマナー⑯気遣いのあるメールとメールマナーまとめ【第96回】
- メールマナー⑮返信メールのルールとマナーについて~後編~【第95回】
- メールマナー⑭返信メールのルールとマナーについて~前編~【第94回】
- メールマナー⑬ビジネスメールを書く際に覚えておきたい注意事項について【第93回】
- メールマナー⑫ビジネスメールにファイル添付する際のマナー【第92回】
- メールマナー⑪読みやすいメール本文の書き方と例文を解説【第91回】
- メールマナー⑩本文の書き方「結びの挨拶」「署名」について解説【第90回】
- メールマナー⑨本文の書き方「要旨」「詳細」について解説【第89回】
- メールマナー⑧本文の書き方「挨拶」「名乗り」について解説【第88回】
- メールマナー⑦宛名を書く時の注意点を解説【第87回】
- メールマナー⑥正しい宛名の書き方を解説~院内宛【第86回】
- メールマナー⑤正しい宛名の書き方を解説~院外宛【第85回】
- メールマナー④ビジネスメール本文の正しい書き方・文例【第84回】
- メールマナー③送信者名の設定ポイント、TO.CC.BCCの使い分け【第83回】
- メールマナー②件名の付け方【第82回】
- メールマナー①メールマナーの基本【第81回】
- クレームの予防対策にも接遇マナー【第80回】
- クレーム報告書の重要性と作成時のポイント【第79回】
- クレーム応対に役立つクッション言葉【第78回】
- クレーム応対で使いたい感謝や共感の言葉【第77回】