「お入りください」はOK?間違えやすい二重敬語を判断するコツ【11回】
公開日:2017.09.01 更新日:2023.03.30
文:村尾 孝子
薬剤師/医療接遇コミュニケーションコンサルタント
間違った言葉遣いとして代表的なものに、「二重敬語」があります。相手への敬意を表すため尊敬語を使用することはいいのですが、さらに丁寧にしようとするせいか、尊敬語に尊敬語を重ねて使ってしまう人がいるようです。
例えば「患者さんがお見えになられる」という表現。「お見えになる」という尊敬語に「られる」という尊敬の助詞を合わせたため、二重敬語になっています。
また、「こちらにお掛けになられてください」も「お掛けになる」と「られる」で二重敬語に。正しくは「こちらにお掛けになってください」もしくは「お掛けください」です。
他にもつい使用してしまいがちな例をいくつか挙げますので、誤った使い方をしていないかチェックしてみてください。
丁寧なつもりで使ってしまいがち!「二重敬語」のよくある3例
例1:お入りになられてください
×「診察室にお入りになられてください」
〇「診察室にお入りください」あるいは「診察室にお入りになってください」
例2:お聞きになられてください
×「あちらで説明をお聞きになられてください」
〇「あちらで説明をお聞きください」あるいは「お聞きになってください」
例3:おっしゃられました
×「先生がそうおっしゃられました」
○「先生がそうおっしゃいました」
「見られる」「見れる」はどちらの意味で使う言葉?
「ら」抜き言葉も、意識しすぎると紛らわしい言いまわしになってしまいます。例えば「来年のリハビリの予定を見れましたか?」はら抜き言葉です。
しかし「来年のリハビリの予定を見られましたか?」としてしまうと、「見ることができましたか?」と、動作の可否を尋ねているようにも受け取れるため、相手が不愉快に感じる可能性もあります。
どちらの意図なのか紛らわしいため、「来年のリハビリの予定をご覧になりましたか?」と、正しい尊敬語を使うことができるといいですね。

同様に「10日の午後は来れますか?」も現場でよくやり取りするフレーズだと思いますが、できるかどうかの可否を尋ねたい場合は尊敬語としても受け取られそうな「来られますか?」ではなく、「来ることができますか?」という聞き方の方がスマートです。
こうした「れる・られる」の使い分けは少し複雑なので、できるだけ使わないようにした方が無難でしょう。
不要な「さ入れ言葉」にも注意を
またもう一つ気になる表現に、「さ入れ言葉」があります。例えば「保険証を預からさせてください」という表現。正しくは「保険証を預からせてください」です。
「その仕事を私にやらさせてください」は「私にやらせてください」、「明日、休まさせていただきます」は「明日、休ませていただきます」がそれぞれ正しい言いまわしです。
本来なら不要な「さ」を言葉に入れることでまどろっこしく、聞き苦しくなってしまいますから、こちらも十分に注意したいところです。
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村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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