作業療法評価~精神障害・職業関連活動領域の作業療法士国家試験出題~
公開日:2019.05.20 更新日:2019.07.05
作業療法プログラムや目標を決定、あるいは修正していくうえで欠かせない「評価」には、様々な手段(測定・検査・試験・観察)が用いられます。評価を行うことで、私たちが対象者に提供する作業療法が医療行為であることが裏付けられるほか、対象者やその家族、支援者にわかりやすく説明することが可能になります。私たちは、評価を通じ対象者の状態や思いを捉え、問題点や利点を特定し対象者を理解する過程を通じ、対象者との信頼関係を高めていきます。
作業療法士国家試験では、作業療法評価に関する問いが多数出題されています。過去3年分の問題を見るだけでも、作業療法が実施される場所、障害ごとに幅広い知識が求められています。
感覚や運動機能の検査、高次脳機能検査となれば、身近に感じる方も多いかもしれませんが、いったん就職してしまうと現場の環境によっては全く扱うことがない評価法が出題されている可能性も…。
すでに現場で活躍されている方もこのコラムを読んでぜひおさらいしてみてくださいね。
過去問題【作業療法士】
第53回 午前 第41問
「持続性・安定性」の下位尺度が含まれる社会機能の評価法はどれか。
- 1.ESCROW Profile
- 2.GAF〈Global Assessment of Functioning Scale〉
- 3.LASMI〈Life Assessment Scale for the Mentally Ill 〉
- 4.Rehab〈Rehabilitation Evaluation Hall and Baker〉
- 5.SOFAS〈Social and Occupational Functioning Assessment Scale〉
解答と解説
正解:3
社会生活能力の評価
こちらは第53回(2018年2月)作業療法士国家試験に出題された問題です。
正解の3番:LASMI(精神障害者社会生活評価尺度)は、統合失調症を主とした精神障害者の社会生活能力の把握を目的とした観察評価尺度です。「持続性・安定性」「自己認識」「日常生活」「対人関係」「労働または課題の遂行」の5領域40項目から構成され、各項目4段階で評定します。
1番の「ESCROW Profile」は、在宅生活における社会的不利(Handicap)の把握を目的としており、環境(Environment)、社会交流(Social Integration)、家族構成(Cluster of Family members)、社会資源(Resource)、予後・将来の見通し(Outlook)、学歴・職歴・生育歴、地位、身分(Work Status)の6項目で構成されています。
2番の「GAF」は、精神障害者の対人関係能力や社会的な役割遂行能力の把握を目的としています。4番の「Rehab」は、精神障害者の多面的。全般的な行動評価尺度。選択肢5の「SOFAS」は、社会的職業的機能評定尺度です。
次は、職業関連領域からの出題です。ワークサンプル法は、実際の職場と同じまたはそれに近い作業(:サンプル)を行い、職業適正や能力、態度、意欲、興味などを客観的に把握するための評価法です。
第53回 午後 第41問
ワークサンプル法を用いる評価法はどれか。
- 1.マイクロタワー法
- 2.VPI職業興味検査
- 3.職業レディネステスト
- 4.LASMI〈精神障害者社会生活評価尺度〉
- 5.GATB〈厚生労働省編一般職業適性検査〉
解答と解説
正解:1
職業関連領域の作業療法の評価
選択肢のうち、ワークサンプルを用いる評価法は1番の「マイクロタワー法」で、13種類のワークサンプルから構成された評価法です。2番の「VPI職業興味検査」は、160種類の具体的な職業名に対し、興味・関心の有無を回答させ、その傾向や強さを把握する評価法です。3番の「職業レディネステスト」は、現実的・研究的・芸術的・社会的・企業的・習慣的の6種の職業興味領域に対する興味や自信の程度をプロフィールで表示し、就業に向けた準備度(レディネス)を把握または自己評価できる評価法です。また、5番の「GATB〈厚生労働省編一般職業適性検査〉」は、9つの職業適性能(:知的能力、言語能力、数理能力、書記的知覚、空間判断力、形態知覚、運動共応、指先の器用さ、手腕の器用さ)を測定する評価法です。
作業療法士国家試験では、この他にも、ADL・QOL関連の評価法、臨床医学、心理検査、発達検査など幅広く出題されています。学生時代には、教科書に載っていなかった評価法も出題されている可能性も。臨床実習中の学生が使用するのを見てハッとしないために、最新の教科書や国家試験問題を手にしてみてはいかがでしょうか。
中山 奈保子(なかやま なおこ)
作業療法士(教育学修士)。
1998年作業療法士免許取得後、宮城・福島県内の医療施設(主に身体障害・老年期障害)に勤務。
現職は作業療法士養成校専任教員。2011年東日本大震災で被災したことを期に、災害を乗り越える親子の暮らしを記録・発信する団体「三陸こざかなネット」を発足し、被災後の日常や幼くして被災した子どもによる「災害の伝承」をテーマに執筆・講演活動を行っている。
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