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呼吸療法認定士とは?有資格者が取得のきっかけ・メリットを解説

公開日:2022.05.09

3学会合同呼吸療法認定士資格とは?取得のきっかけやメリット

文:堀越 一孝
(理学療法士/認定理学療法士(呼吸)/3学会合同呼吸療法認定士)

私は現在、理学療法士のほかに「呼吸療法認定士」の資格をもって病院で勤務しています。

呼吸療法認定士の正式名称は「3学会合同呼吸療法認定士」(以下、呼吸療法認定士)で、理学療法士はもちろん、作業療法士、看護師でも取得する人が増えています。

この記事では呼吸療法認定士の資格の概要のほか、私が資格を取得しようと思ったきっかけや、メリットなどについてお話しさせていただきます。

入職早々、内部障害のリハビリの難しさに直面

私は入職1年目から、呼吸器疾患や循環器疾患など、いわゆる内部障害の急性期リハビリテーションのチームに配属されました。

学生時代、リハビリというと脳卒中や整形外科疾患の方に対するものをイメージしていましたが、内部障害のリハビリは呼吸器系の解剖、生理とともに病態を理解しなければならず、入職早々その難しさに直面することになりました。

そんなとき、間質性肺炎の方と筋萎縮性側索硬化症の方の呼吸リハビリテーションに関わったことが、大きな転機となりました。

資格取得のきっかけ① 間質性肺炎の患者さんとの出会い

私が受け持った間質性肺炎の患者さんは、入院当初から酸素療法を行ったため呼吸困難感が強く、思うように体を動かせないことに大きな不安とストレスを抱えていました。

「今後の生活がどうなってしまうんだろう……」、そんな不安な気持ちに対して、私に何かできることはないか、何ができるのだろうかと葛藤していました。

患者さんの病態把握をしながら不安な気持ちに寄り添い、少しずつ運動療法やADLトレーニングを積み重ね、入院加療2カ月を経過したときに自宅退院に至りました。
 
入院前と同等の身体機能ではないものの、患者さんが「自宅で生活できる」と前向きな気持ちになれたとき、こんな言葉をいただきました。

「毎日毎日、私の不安な気持ちを聞いてくれてありがとう。私の体に向き合ってくれてありがとう。堀越さんとのリハビリで少しずつ少しずつ自信がついて、背中を押してもらえて、これなら家に帰っても大丈夫だなって思えるようになったよ。本当にありがとね」

実は、私自身も毎日不安だったのを今でも覚えています。患者さんのご希望のADLを獲得して、果たして自宅に退院できるのか……と。特に、新人セラピストはこのような悩みや不安を感じることが多いのではないでしょうか?

そんな自分にとって、これ以上ないうれしい患者さんの言葉でした。

資格取得のきっかけ② 筋萎縮性側索硬化症の患者さんとの出会い

筋萎縮性側索硬化症の患者さんは、進行する病状に不安を抱えていました。呼吸機能の低下により、息苦しくなってくるのではないか、いつ人工呼吸器が必要になるのか、という不安。今までできていたことができなくなっていく喪失感。

進行する病状のなかで、少しでも安心して生活できるようにさまざまな呼吸ケアを提案しました。最終的には、気管切開をして人工呼吸器を装着して在宅療養になりましたが、気管切開に至るまでに、痰詰まりや肺炎などの呼吸器合併症を認めることなく在宅療養ができました。

そんな患者さんとご家族から、こんな言葉をいただいたのです。

「呼吸のリハビリに関しては、すべて堀越さんにお任せできました。最初は呼吸に関する不安が強かったけど、堀越さんにいろいろなことを提案してもらっていたら、安心できるようになってきました。僕も妻も本当に支えてもらいました」

この2人の患者さんとの出会いと経験によって、呼吸療法認定士の資格を取得し専門性を高め、よりたくさんの方の不安を取り除いてあげたいと思うようになり、「呼吸療法認定士の資格を取得しよう」と決意しました。
 

呼吸療法認定士資格を取得するには?(受験資格・難易度・勉強方法など)

ここでは理学療法士・作業療法士に向けて、呼吸療法認定士の受験資格の条件を説明しましょう。呼吸療法認定士の試験を受けるには、まず認定講習会を受講する必要があります。

<3学会合同呼吸療法認定士認定講習会 受講資格(理学療法士・作業療法士)>
・実務経験年数2年以上
・過去5年以内に認定委員会が認める学会や講習会に参加し、12.5点以上を取得していること

参考:3学会合同呼吸療法認定士認定講習会 受講資格(公益財団法人医療機器センター)

そのため、臨床経験3年目になるまでは受講資格が得られません。私は条件を満たすまで、学会や講習会に参加しながらコツコツと勉強を積み重ねました。

本格的な試験勉強は認定講習会が終わってからスタート

認定講習会は認定試験の約3カ月前に開催されます。講義は認定講習会テキストに沿って進められますが、2日間という非常にタイトなスケジュールになっています。その後、認定試験を受験し合格すれば、呼吸療法認定士資格を取得できます。

認定試験の出題範囲はこの講習会テキストから出題されますので、本格的な試験勉強はこの認定講習会が終わってから始まります。

私は先輩達から「難しいから早めに勉強しておいたほうがいいぞ」と脅された記憶があります。そのため、試験を受けたことがある先輩にテキストを借りて、試験半年前ぐらいから勉強を始めました。早めに勉強を始めたい方は、テキストを事前に借りて勉強するのもひとつだと思います。

試験合格に向けて勉強方法とポイント

私が受験したときはありませんでしたが、最近は問題集もあるのでひたすら問題を解いていく、というスタッフもいます。

仕事をしながらであるため、試験合格のポイントは、「勉強時間の確保」と、「いかに効率よく学習できるか」が重要になります。仕事後か、仕事前など、それぞれのライフスタイルに合った勉強時間の確保が必要です。

試験の手ごたえはあまりありませんでした。「合格できなかったかな……」が正直なところでした。決して、簡単な試験ではありませんが、その分、合格したときの喜びもひとしおです。

なお、第26回呼吸療法認定士(2021年)の合格率は70%でした。

▼ 第26回呼吸療法認定士(医療資格別合格率)

臨床工学技士 83.5%
看護師 66.2%
准看護師 35.7%
理学療法士 71.2%
作業療法士 67.0%

参考:「3学会合同呼吸療法認定士」認定制度(公益財団法人医療機器センター)

資格の更新で必要になること

3学会合同呼吸療法認定士の有効期間は5年間です。資格取得を継続するためには更新が必要になり、この5年間で総得点50点以上の得点を取得しなければなりません。

この得点は、呼吸療法認定士委員会が認める講習会や学会(参加、発表)に参加したり、学術論文を執筆して得点を取得します。

例えば、学会参加20点、発表(筆頭演者)20点、発表(共同演者)10点、講習会(1日参加)25点、講習会(半日参加)12.5点、学術論文(筆頭著者)50点、学術論文(共同著者)15点、となっています。

参考:3学会合同呼吸療法認定士認定更新に必要な点数取得基準(改定)|公益財団法人医療機器センター

私は委員会が認定している学会に参加し発表をしたり、学術論文の執筆を行っているため、自然に得点を取得できているので、難なく更新することができています(過去2回更新しています)。

委員会側も資格を取得して終わりではなく、日々研鑽を重ねて、資格保有に必要な知識や技術をアップデートしてほしい、という思いがあるのだと思います。

私が呼吸療法認定士資格を取得して感じたメリット

RST(呼吸サポートチーム)のメンバーでの活動だけでなく、専門的な知識を蓄積していくことで、臨床のなかでさまざまな疑問に対して探求しようとする気持ちが高まりました。

また、自分が先輩達に助けてもらっていたように、後輩を指導することで、呼吸器疾患の患者さんに関わる必要性や楽しさを伝えられるようになったと思います。

自己研鑽することで、臨床で見えてくる視野が格段に広がったと思いますし、視野が広がると、「次はこれがしたい」「探求したい」と、自然とモチベーションも上がってきて専門性を高めることができていると思います。

呼吸療法認定士資格は、活躍の場を広げたい人におすすめ

「呼吸療法認定士の取得によって給料面にインセンティブが付与される」という施設は少ないと思います。そのため、「メリットがない」と感じる人もいるかもしれませんが、資格取得のメリットは何も給料面だけに反映されるものだけではない、と私は感じています。

資格保有を通して専門的な知識を身に付けることで活躍の場が広がるだけでなく、臨床の質も向上します。自己研鑽ができれば、やりがいにもつながります。何よりも専門的な知識の向上は、患者さんのリハビリテーションを行う上で必要不可欠なものです。

「自分も何か専門的な分野を確立させていきたい」「自己研鑽をしてやりがいを見つけたい」「患者さんに還元していきたい、そのような情熱をもっている方にはこの資格取得はおすすめできます。ぜひ、チャレンジしてみてください。

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呼吸療法認定士とはどんな資格?取得メリットと認定までの流れ

参考

「3学会合同呼吸療法認定士」認定制度(公益財団法人医療機器センター)

堀越 一孝

堀越 一孝

理学療法士/リハビリテーション学 修士/認定理学療法士(呼吸)/3学会合同呼吸療法認定士/心臓リハビリテーション指導士
2008年に理学療法士免許を取得し、湘南藤沢徳洲会病院に勤務。急性期リハビリテーションや生活期リハビリテーション(訪問・通所)に従事。呼吸療法認定士取得後は、当院呼吸ケアサポートチームメンバーとして携わる。

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