医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

マイナビコメディカル
マイナビコメディカル

医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

第19回リハビリテーションの考え方、技術を基本としている
~福辺流介助術~

公開日:2020.10.23 更新日:2021.04.07


文:福辺 節子
理学療法士/医科学修士/介護支援専門員

今回は、第13回よりお伝えしてきた「福辺流介助術」の特徴についての最終回です。「力と意欲を引き出す介助」がリハビリテーションの考え方に基づいた介助法である、ということについてお話しします。

私が「介助のセミナーをしています」と言うと、必ずと言っていいほど返ってくるリアクションは、「介護ですか。大変なお仕事ですね」というものです。すでにお話したように、介助と介護は同じものではありません。
私は介護ではなく理学療法士の仕事として、介助方法を皆さんにお伝えしています。家族や他の職種への介助法の指導は理学療法士の重要な仕事であり、この介助を使っていただくことが理学療法をする際に役立つからです。
では、介助と介護の接点はどこにあるのでしょうか。どの視点から見るかによって解釈は異なりますが、介護はリハビリテーションの要素を含んでいます。
 

介助と介護の3つの接点

<障害について>
第1に、障害(と呼ぶべきかどうかはわかりませんが)についてです。
リハビリテーションでも介護でも、対象者はなんらかの障害を持っています。最近は介護においてもICF(国際生活機能分類)の考え方が採り入れられていて、障害は一部の特殊な人の問題ではなく、誰にでも起こりうる生活・人生の問題のひとつとして位置づけられています。ICFの概念において、人間が暮らしていくうえでの生活機能は「心身機能・身体構造」「活動」「参加」に分類されます。そのうち、障害は「環境因子」によって大きく影響を受け、心身機能や身体構造を中立に見るICFの考え方では、障害は障害ではなく「特徴のひとつ」として捉えることができます。
これは、リハビリテーションにおいても介護に於いても(それ以外の全ての分野において)、基本となる根本的な思想であると言えます。
 

<評価について>
第2に評価の重要性です。
理学療法や作業療法での「評価」は、介護では「アセスメント」と呼ばれます。セラピーが「評価に始まり、評価で終わる」と言われるように、介護においても「アセスメント」は非常に重要ですが、日々のケアと結びついていないように感じます。スタッフが日々おこなうケアとアセスメントを結びつけ、そのケアの意味を伝え、結果を共有するのがセラピストの役目ではないかと思います。
「力と意欲を引き出す介助」では、対象者の主訴から始まるトップダウンのアセスメントによって、その人に必要な環境とケアやサポートを選択します。
 

<活動・参加・環境因子について>
第3に、「活動」と「参加」、「環境因子」の重要性についてです。
高齢者や維持期のリハビリテーションでは、セラピストは「活動」や「参加」の側面から積極的に働きかける必要があります。高齢者や維持期の人を対象とする介護は、急性期や回復期より一層「環境因子」に負うところが大きいと言えます。対象者自身の機能アップが難しい状況で、活動や参加を維持向上させるためには、「環境」が重要な要素になります。
 

たとえば住環境では、手すりの設置や段差解消、福祉用具としてどんなベッドや車イスや自助具を選ぶのかなどは、ケアマネージャーや業者任せではなくもっとセラピストが介入するべきではないかと思います。
コロナ禍でお父さまを家に引き取られたご家族が私の本をご覧になって、通常の広さのベッドではなく100cmの幅広ベッドをレンタルされたそうです。それだけで、病院や施設では全介助だったお父さまが寝返りから起き上がり、ベッドでの端坐位ができるようになられたというお手紙をいただきました。その次の日には立ち上がりもできたとのことでした。福祉用具の選択だけでなく、介助と結びついた使い方も非常に重要です。
 

また、円背や骨盤後傾の対象者、膝や下肢・上肢の拘縮がある対象者に対しての、シーティングやポジショニングの効果はとても高く、ニーズも大きいと思います。車イス選びと調整だけで、ご飯を自分で食べられるようになったり、便秘や誤嚥が減ったりします。また、足こぎや手漕ぎができるようになり、さまざまな訴えがなくなることもあります。セラピストがマスターしているのはもちろんですが、介護スタッフにもできるようになってもらえれば、セラピストの仕事はとても楽になります。
 

環境の中には、住環境だけでなく、介護や医療保険制度やその中のサービス、介護スタッフやセラピストなど人的なケアやサポート、家族やボランティアなどの公的でないサポートなども含まれます。静(姿勢)としてのシーティングやポジショニングと、動(動作)としての介助とは、セラピストが直接接することのできない場面で、家族や介護者に託すことのできる重要なケアです。
では、どのような介助を家族や介護・看護スタッフにおこなってもらえればよいでしょうか。
 

対象者の動きを引き出すために

<基本動作の介助>
「力と意欲を引き出す介助」は、単に介助者のバイオメカニクスだけを考えた介助とは大きく異なります。寝返りや起き上がりは、私たち人間が持つ立ち直り反応を利用しています。
肩と膝・腰を介助するのではなく、立てた両膝だけを介助することで、体幹の回旋を使って寝返りの動きを引き出します。起き上がりでは、必ず対象者に肘をついてもらいながら起きてきていただきます。これも上肢の保護伸展反応や頭、体幹の立ち直り、傾斜反応を利用しています。
体幹の回旋を引き出すことで、胸郭のストレッチや動きにも働きかけることができ、呼吸リハにもつながります。以前訪問に伺っていたALSの方は、通常は就寝中2〜3時間で目が覚めてしまうのに、寝返りをきっちりするだけで、朝まで吸引なしで眠ることができると言っていただけました。

立ち上がりや移乗、歩行に関しても同様で、これまでの介助方法では対象者の適切な動きを引き出すことは不可能です。
よく「理学療法と介護は違うから」、あるいは「理学療法士さんだからできて介護職には難しい」と言われることがあります。では、介護職と理学療法士によって適切な対象者の動きは異なるのでしょうか。そんなことはないはずです。介助者がそれで納得してしまったときに不利益を被るのは対象者(被介助者)です。そのような理由でこれまでの介助を選択するのは介助者(セラピスト、介護・看護スタッフ)の怠慢と言えます。
 

<支え方・触れ方>
この介助の基本となる『支え』とは、刻々と変わる対象者の状況に合わせて、変わらない支持を作る介助者の等尺性の筋収縮による動きのことを指します。
支えは、対象者の体重負荷がより大きい立位や歩行介助だけでなく、寝返りや起き上がりなど全ての場面で必要です。介助者が対象者を誘導する際にも、『支え』をしっかり作り、支えている感覚を対象者に認知してもらっていることが、対象者の動きを引き出すためには不可欠な要素です。これは『触れ方』にも共通する要素で、『触れる』は究極の支えと言えるかもしれません。支えができていないときに、介助者は対象者を『持って』動かそうとします。
新潟医療福祉大学や筑波大との研究で、この介助で介助者の力が少なくてすむのはもちろん、加速度も少ないことが計測されています。
 

<声かけ>
「力と意欲を引き出す介助」で伝えている声かけを含むコミュニケーション、対象者と介助者の相互関係は、最近の脳科学や心理学と矛盾しません。
 

<エビデンスの意味>
エビデンスを統計学的な見解からしか見ないのであれば、多くの臨床の模索は無意味なものになってしまいます。
現在、私は厚生労働省老健局の介護ロボット開発普及の非常勤参与ですが、EBMに基づく医療、介護を提唱する厚労省のロボット開発に携わる科学者の方々からも、医療・介護分野での個々のケースに関わる重要性が挙げられています。
私が発言する本来のリハビリテーションや、対象者の主訴から始まるアセスメントの意味に有識者の方々が耳を傾けてくださいます。
 

医学にかける研究は、多くの場合ひらめきや臨床を後追いしたものです。これまでも臨床結果は既存の科学の常識を裏切ってきました。40年間この仕事に携わって学んだのは、教科書や法律は実践の後から作られるのだと言うことでした。
セラピストとして、真に科学的なサポートを対象者に提供する勇気を持ち続けたいと思います。
 

>>マイナビコメディカルで自分に合う職場を探してみる(利用無料)

福辺 節子

福辺 節子 (ふくべ せつこ)

理学療法士・医科学修士・介護支援専門員
一般社会法人白新会 Natural being代表理事
新潟医療福祉大学 非常勤講師
八尾市立障害者総合福祉センター 理事
厚生労働省老健局 参与(介護ロボット開発・普及担当)
一般社団法人 ヘルスケア人材教育協会 理事

大学在学中に事故により左下肢を切断、義足となる。その後、理学療法士の資格を取り、92年よりフリーの理学療法士として地域リハ活動をスタート。「障がいのために訓練や介助がやりにくいと思ったことは一度もない。介護に力は必要ない」が持論。現在、看護・介護・医療職などの専門職に加え、家族など一般の人も対象とした「もう一歩踏み出すための介助セミナー」を各地で開催。講習会・講演会のほか、施設や家庭での介助・リハビリテーション指導も行っている。

<著書>
イラスト・写真でよくわかる 力の要らない介助術/ナツメ社(2020)
生きる力を引き出す!福辺流 奇跡の介助/海竜社(2020)
マンガでわかる 無理をしない介護/誠文堂新光社(2019)
福辺流力と意欲を引き出す介助術/中央法規出版(2017)


    <PR>マイナビコメディカル

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  •  LINEで送る

コラム 記事一覧

おすすめ

TOPへ