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第23回【介助・介護で役立つ】声かけの効果と対象者に動いてもらうポイント(後編)

公開日:2021.08.05

【介助・介護で役立つ】声かけの効果と対象者に動いてもらうポイント(後編)

文:福辺 節子
理学療法士/医科学修士/介護支援専門員

介助に欠かせない「声かけ」の重要性やテクニックを解説しています。私がお伝えしている介助は、“感覚を入力することによって、相手の動きを引き出す”というものです。

声かけにもさまざまな“感覚の入力”が含まれており、とても大事な要素です。「【介助・介護で役立つ】声かけの効果と対象者に動いてもらうポイント(前編)」では、「声かけの基本」として、以下の4つのポイントをご紹介しました。

(1) すべての人に声かけする
(2) 伝わる声かけをする
(3) 伝わったかどうか確認する
(4) これらをすべて行い、必要であれば介助をはじめる

この4つのプロセスなくしては、相手の動く力を引き出すことはできません。後編は、介護現場で活用できる具体的な声かけのテクニックなどをご紹介してきます。

声かけのテクニック(1) 距離と角度

介助者が最初に話しかける際の介助される人との位置関係は、どのように考えればよいのでしょうか。一人が被介助者役、もう一人が介助者役で実験をしてみましょう。

被介助者役は正面を定めて立ち、介助者役に特別な注意を払わずに普通に前を見ていてください。介助者役は被介助者役に対して様々な距離と角度から、被介助者役に「〇〇さん」と声をかけます。

被介助者役は、介助者役がどの位置で声かけした時に介助者役に気がついたのか?

そして、各々あるいは2人が心地よく対応できる位置はどこかを確認してください。注意点は、「これまでの思い込みで声をかける位置を決めてしまわないこと」です。

距離

介助者が被介助者に最初に話しかける際の2人の距離は、「2m以上」と心得ましょう。みなさんの予想よりも離れていたかもしれません。

決して、最初から触れることができる距離で声かけをしないようにしてください。

角度

真正面ではなく、「15度〜45度」程度、やや斜めの位置から声をかけましょう。

認知症やパーキンソン症候群などで首、顔、視線の動きが少ない場合は、特にその人の視線の範囲内に入っているか注意します。視空間失認や視野欠損がある場合も同様です。

【介助・介護で役立つ】声かけの効果と対象者に動いてもらうポイント(後編)
こちらの写真は、最初に話しかける際の距離感を示したものです。

人間には、「パーソナルスペース」と呼ばれる、それ以上他人に近づかれると不快に感じる領域があります。アメリカの文化人類学者エドワード・T・ホールは、相手との関係性や場面に応じて、4つのゾーンにわけて対人距離を定義しており、それぞれ近接相と遠方相に分類しています。

(1)密接距離…ごく親しい間柄にだけ許される距離 
近接相(0 cm~15cm):相手に触れる距離
遠方相(15 cm~45cm):手を伸ばせば届く距離

(2)個体距離…相手の表情をしっかり認識できる距離
近接相(45 cm~75cm):相手をつかまえられる距離
遠方相(75 cm~120cm):お互いに手を伸ばせば触れられる距離

(3)社会距離…相手に手は届かないが、会話ができる距離
近接相(1.2m~2m):知らない相手や、仕事上の相手と話す距離
遠方相(2m~3.5m):公的な場面で社交上の対話を行う距離

(4)公衆距離:1対1ではなく、複数の相手を見渡すような距離
近接相(3.7m~7m):講演会やコンサートのような場面での、演者と聴衆の距離
遠方相(7m以上):個人的な会話を必要とせず、人間的な接触を回避する距離

適切な対人距離の感じ方は、人によって異なります。

最初の接触において介助者は、相手を警戒させない社会距離(2m以上)から被介助者に話しかけるのが適切だと考えます。

実際に介助する際の距離は手の届く範囲(立ち上がりで被介助者の体幹を支える場合はもう少し近づきます)なので、その後、介助者はその位置までストレスなく近づけるよう、相手の感覚やタイミングを感じながら距離を縮めていくことが大切です

被介助者と介助者の信頼関係が出来上がっているならば、そのスピードは速くスムーズです。

初めての関係であれば、よりゆっくりと丁寧に進める必要があります。

深い認知症の被介助者の場合は毎回が初めてと思ってタイミングを調節します。認知症の被介助者でもなんとなくよい関係が作れている場合はもう少し速い対応が可能です。

声かけのテクニック(2) 先に「大きな目的」から伝える

対象者に寝返ってほしい場合や、立ち上がってほしい場面でも、「お食事に行かれませんか?」「トイレはどうですか?」などの大きな目的から伝えます。

「両足を立ててください」「足を引いてください」「このバーを持ってください」など細かな声かけから始めないように注意しましょう。

指示された人間は、これからいったい何をするのか不安です。対象者の反応が止まったら、次の声かけ(「こちらに起き上がってきていただけますか」「立っていただけますか」など)に移ります。

声かけのテクニック(3) 対象者の反応を待つ

大きな目的から伝える理由はその他にもあります。

その声かけで対象者がどのような反応を示してくれるかで、評価が可能だからです。

耳が聞こえているか、言語の理解は、認知能力は、関節可動域やマヒの有無などを含む運動能力、介助側への信頼度や協力度なども、一つ一つの声かけから評価ができます。

そのためにも、声かけをして相手の反応がある間は、次の声かけや介助はしません。相手の動きを待つ→動きが止まるのを確認する→次の声かけをする、を繰り返します。

声かけのテクニック(4) 対象者が主体の声かけをする

対象者が主体の声かけとは、「足を引いていただけますか」「起きていただいていいですか」といった内容です。

「足を引きますよ」「触りますよ」「身体を起こしますね」は介助者が主体の声かけです。介助者が主体の声かけは、介助者が主語なので動ける人も動かなくなってしまいます。

声かけのテクニック(5) 相手に伝わっているかどうか確認をする

前編の「(3)伝わったかどうか確認する」でもお伝えしたように、対象者の目を見て相手もこちらを認識していることを確認してください。

対象者に触れない時、例えばベッドの高さを変えるような時や車イスを動かすような場面でも、声かけをすることはもちろんですが、声かけだけでなく伝わっているかどうかの確認も忘れないようにしましょう。

やっているつもりになりがちですが、対象者の顔や目ではなく、自分が介助する箇所ばかりに注意がいっていることが多いのです。手元だけを見ている介助は危険です。

【介助・介護で役立つ】声かけの効果と対象者に動いてもらうポイント(後編)
<手元ばかり見ている介助>

【介助・介護で役立つ】声かけの効果と対象者に動いてもらうポイント(後編)
<相手の目を見て行う介助>

声かけのテクニック(6) 必要最小限の声かけをする

声かけにもやり過ぎがあります。必ずしも一つ一つの動作に対して声かけが必要なわけではありません。被介助者が自分で動こうとしている最中に、介助者が必要のない声かけをしていることが往々にしてあります。

特に、相手の動きを先取りした声かけはしないように注意してください。相手の動きを待たずに先走りしてしまった声かけは、評価をする機会を失うばかりでなく対象者の意欲も奪ってします。

介助者は、自分の不用意な声かけが対象者の動きや意欲を妨げていないか、意識を払うようにしましょう。

【介助・介護で役立つ】声かけの効果と対象者に動いてもらうポイント(後編)
必要以上の声かけは、対象者の意欲を妨げてしまいます!

被介助者と介助者の基本は対等な人間関係 

介助者は、対象者が自分の尊敬する大事な人であると思って声かけをしてみてください。

初めて彼や彼女とデートした時のように、「どうすれば相手が心地好く感じてくれるか」細心の配慮と注意深さを持って接してください。認知症の方に対しては、特にこの心構えが役に立ちます。

被介助者の目や表情を見て声かけをする。介助中も被介助者の顔、表情、全体を見る。

たったこれだけで、今日からの介助が格段にレベルアップするはずです。

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福辺 節子

福辺 節子 (ふくべ せつこ)

理学療法士・医科学修士・介護支援専門員
一般社会法人白新会 Natural being代表理事
新潟医療福祉大学 非常勤講師
八尾市立障害者総合福祉センター 理事
厚生労働省老健局 参与(介護ロボット開発・普及担当)
一般社団法人 ヘルスケア人材教育協会 理事

大学在学中に事故により左下肢を切断、義足となる。その後、理学療法士の資格を取り、92年よりフリーの理学療法士として地域リハ活動をスタート。「障がいのために訓練や介助がやりにくいと思ったことは一度もない。介護に力は必要ない」が持論。現在、看護・介護・医療職などの専門職に加え、家族など一般の人も対象とした「もう一歩踏み出すための介助セミナー」を各地で開催。講習会・講演会のほか、施設や家庭での介助・リハビリテーション指導も行っている。

<著書>
イラスト・写真でよくわかる 力の要らない介助術/ナツメ社(2020)
生きる力を引き出す!福辺流 奇跡の介助/海竜社(2020)
マンガでわかる 無理をしない介護/誠文堂新光社(2019)
福辺流力と意欲を引き出す介助術/中央法規出版(2017)


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