患者とのコミュニケーションのコツは?リハビリの目的を意識しよう
公開日:2021.05.21 更新日:2021.07.20
文:田口 昇平
(作業療法士/福祉住環境コーディネーター2級)
リハビリセラピストとして効果的なリハビリを提供するには、患者さんとのコミュニケーションが大切です。
その理由は、患者さんの思いを理解することができなければ、お互いに信頼関係を築くことは難しいため。そのような状態ではリハビリの方向性を定めることもできません。
そこで今回は、作業療法士である筆者が「患者さんの思いを汲み取れるコミュニケーション能力」の身につけ方について具体的な方法をお伝えしましょう。
リハビリにおいて患者さんとのコミュニケーションが重要な理由
新人療法士のなかには、よく話す患者さんとはコミュニケーションが取れていると誤解してしまうケースがあります。しかし、患者さんはいつも本音で話すとは限りません。
患者さんのなかには、担当療法士のことを信頼できず、本音を押しとどめてしまうケースもよく見られます。こうしたケースでは、リハビリの内容が患者さんの意向に沿わず、思わぬトラブルにつながってしまう可能性があります。
例えばリハビリ場面で、よく起こりがちなトラブルには次のようなことがあります。
□ 患者さんがリハビリの目的を理解できておらず、作業療法士に言われるまま淡々と訓練をおこなっている
リハビリの内容が患者さんの意向から外れていたり目的が伝わっていないと、効果はあがらないどころか、クレームやリハビリ拒否といったトラブルにも発展しかねません。患者さんと信頼関係を築きながらリハビリをできるように、コミュニケーション能力を高めましょう。
コミュニケーション能力をアップする4つの方法
コミュニケーションを高めるには、まず相手を良く見て、しっかり話を聞く時間を作ることが大切です。とはいえ、限られた時間のなかで話ばかりしていると、リハビリが進まないのは困りものです。
以下の4つの方法を取り入れながら、効果的なコミュニケーションをおこなってみましょう。
①アイコンタクト
患者さんは、病気や障がいにより、日常生活に何らかの不安や不自由さを感じており、作業療法士に「自分の話を聞いてほしい」と思っているものです。まずは相手の目を見て、話をしっかりと聞く態度を示すことが大切です。
「アイコンタクト」は、相手に興味・関心があると意思表示する動作のひとつです。もし、作業療法士が視線を合わせずに患者さんの話を聞いていたら、自分のことに興味・関心のない人と思われてしまうでしょう。そのうちに、相手の心にも壁ができ、本音を話してくれなくなるかもしれません。
できるだけ相手の目を見て話をする、話を聞く時間を作りましょう。もちろん、会話の間中、ずっと視線を合わせ続ける必要はありません。
アイコンタクトを意識しすぎていると、患者さんにくどい印象を与えてしまうこともあります。会話のなかで、時折、視線を合わせることができれば、患者さんに対し、興味・関心を持っていることが伝わるでしょう。
②うなずく
患者さんが話をしているにも関わらず、何の反応もせず、ただ黙って話を聞いているようでは、相手の心を開くことはできません。患者さんからしてみれば、作業療法士の反応がなければ話を続けて良いのか戸惑ってしまいます。
また、何か変なことを言っているのではないかと、不安な気持ちになってしまうかもしれません。そんな時に活用したいのが、うなずくことです。
「うなずく」ことは、相手の話をしっかり聞いているという態度を表します。臨床現場では、評価表に数値を記載したり、計画書を作成したりしながら、患者さんの話を聞く場面も多いでしょう。
書類作成に集中しすぎず、患者さんの話に合わせながらうなずく素振りを見せられれば、話を聞いている様子が伝わります。
③あいづち
「あいづち」は、会話の潤滑油のようなもので、相手の話に関心・理解する表現になります。
「なるほど」「へぇ~」「そうなんですね」など、患者さんの話を聞きながら、あいづちを打つことで、相手の話を引き出しやすくなります。ただし、患者さんの話の内容により、使い分けることが大切です。
例えば、真剣な話をしているときに、作業療法士が「へぇ~」などとあいづちを打ってしまうと、患者さんは不快に感じるでしょう。日常会話と真剣な話題で、反応の仕方を変えるなど、話の内容を踏まえながら使い分ける必要があります。
④会話を要約する
患者さんの話を聞きながら、内容を要約して返答できれば、より話を聞いている姿勢が伝わります。
患者さんの意図を要約して確認することで、信頼関係を築きながら同じ目標に向かってリハビリをおこなえるようになるでしょう。
コミュニケーション能力をアップするには練習が必要
コミュニケーションのコツがわかったとしても、すぐに成果が出るとは限りません。信頼関係を築くには、一時的な対応だけでなく、時間をかけながらコミュニケーションをとることも大切です。また、コミュニケーションの上達には、練習が欠かせません。
人によって、話し方、リズムやペース、言葉の使い方などが異なります。相手が心地良く感じられるコミュニケーションをとるには、経験も必要です。多くの患者さんと接するうちに、相手に合わせたコミュニケーションができるようになるでしょう。
まずは、同僚と話をしている時にアイコンタクトを取り入れたり、話を要約して返答したりしながら、コミュニケーションを高める練習を行いましょう。
患者さんの思いを引き出すコミュニケーションを
患者さんとの信頼関係が築けなければ、効果的なリハビリは提供できません。作業療法士として、目標や訓練の意図を共有するためには、良好なコミュニケーションを保つ努力が必要です。
日々の生活の中でコミュニケーション力の向上を意識することで、患者さんはもちろん、職場でも良い人間関係がつくりやすくなるでしょう。
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参考
齋藤 孝(2004):コミュニケーション力.岩波新書
2008年に作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や特別養護老人ホームなどの施設で医療や介護業務に従事。2018年より、フリーライターに転身。医療介護職の働き方や働きやすい労働環境づくりなど、幅広いテーマで執筆。心理学・脳科学分野の書籍を愛読し、学んだ内容をブログやSNSで情報発信している。
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