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認知症はリハビリの阻害因子? 患者さんへのリハビリ効果を向上させるコツ

公開日:2016.05.20 更新日:2016.05.30

高齢の患者さんを担当する際に、まず確認したいのが認知症の有無です。認知症患者さんの場合、動作時の注意点を説明してもすぐに忘れてしまったり、運動療法の指示に対してなかなか理解できなかったりと、思い通りに進まないことも少なくないからです。そのため、多くのセラピストは認知症をリハビリの阻害因子ととらえがち。しかし、あきらめることはありません。相手が認知症患者さんであっても、セラピストの工夫次第でリハビリの効果を高めることは可能です。今回はそのポイントについて紹介します。

認知症とは

認知症とは、後天的に脳が広範に障害された状態で、種々の認知機能が日常生活に支障をきたしてしまう病態です。施行・判断・適応・問題解決能力の障害を中核症状として、精神症状(不安・抑うつ・不眠など)、行動障害(興奮・徘徊など)、睡眠覚醒リズムの障害(せん妄・昼夜逆転など)といった、多岐にわたる症状が現れます。リハビリでは適応障害により、新しい動作の獲得に難渋する場合や、精神症状によるリハビリへの意欲の低下、睡眠覚醒リズム障害で活動が昼夜逆転となり、昼間のリハビリが実施困難になるといった阻害因子としての側面が目立ちます。

認知症に対する運動効果について

認知症状が強ければ、どんな運動をしても効果はないように考えられがちですが、実際にはどの病期であっても、運動による効果は期待できるとされています。特に複合運動が有効で、全身体力、持久力、バランスなどを組み合わせた運動を行った場合、抵抗運動のみと比べ、効果的に歩行スピード、バランスを改善したとする結果がみられます。また歩行、筋力トレーニング、バランス、柔軟性を含む複合運動であれば、単純歩行のみより、うつや気分の改善効果があったとする報告もあります。有効となる運動の頻度は「1回45~60分で週3回以上、介入期間は1年以上」と、長いほどよいとされています。

認知症患者さんに有効なリハビリプログラム

認知症に対するリハビリでの運動効果を理解したものの、実際にどのようなプログラムを進めるべきか悩む人もいることでしょう。改めて、アプローチ法について考察してみましょう。
リハビリを進めるための前提として、認知症は進行性の疾患であり、失った機能よりも残存機能(認知症発症前の記憶、特に手続き記憶は障害されにくい)を引き出すアプローチが有効であること、また、認知症の患者さんは「体験としての障害」を持っている点を理解しておくことが大切です。認知症患者さんは記憶障害により普段から失敗体験が多く、自信を失って、混乱しやすくなっています。そのため、リハビリのプログラムは患者さんの個性や自尊心を尊重し、【誤りなし→失敗させない→必ず成功する】内容を考え、組み立てていくことがポイントです。

具体的なアプローチの方法としては、
1.快刺激
2.コミュニケーション
3.役割
4.ほめる
5.誤りなし学習

以上、5点を基本として、患者さんが人生で体験してきた家事、仕事、遊びなどをテーマに動作を行います。例えば中殿筋の強化を目的として横歩きを指示する場合。仕事で掃除を行ってきた患者さんなら、平行棒内を横歩きしながら布で拭いてもらい、終了後には感謝の言葉をかけてみましょう。ただ歩いてもらうだけではなく、患者さん一人ひとりの今までの経験を踏まえて、コミュニケーションを取りながら役割を与え、最後にほめることで、患者さんの意欲を高めていくことができます。

個々の個性を大切にしたリハビリを

認知症は理学療法の阻害因子と捉えられがちですが、患者さんの状況を理解し、生活歴を把握することが効果的なリハビリにつながります。柔軟な発想による治療プログラムを検討し、患者さんの個性にあったオーダーメイドの対応を意識していきたいものです。

 

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