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フリーランス言語聴覚士になるには?独立開業したSTが教える基礎知識

公開日:2021.11.15 更新日:2021.11.17

「フリーランス言語聴覚士」という生き方

文:三上 愛
言語聴覚士/保育士

「イロドリ」というサロンでフリーランス言語聴覚士(ST)をしている三上愛と申します。小学生の娘を育てる一児の母でもあります。

私は大学病院で小児発声発語の分野を専門に9年勤務したのち、2018年からフリーランス言語聴覚士として活動を開始しました。現在は自宅をサロンとして開放し、子どもたちに関わっています。

なぜ私がフリーランスの道を選び、現在、フリーランスとしてどんな活動をしているのか。そのことを詳しくお伝えしていきます。

私が「フリーランスの言語聴覚士になろう!」と思った3つの理由

病院に9年も勤務していた私がフリーランスになろうと思った理由は、大きく3つあります。

(1)困りごとを抱えるお子さんとご家族と接して

1つ目は、病院で勤務していたとき、診断名はつかないけれど困りごとを抱えているお子さんたちがいたことです。診断がつかなければ終了してしまうのが病院です。

お子さんとご家族は困っているのに、専門家に相談したりリハビリを受けたりする場所がない。その現状に言語聴覚士としてもどかしさを抱えていました。

(2)小児言語聴覚士として「予防」を伝えたい

2つ目は「予防」を伝えたいと思ったことです。

娘の出産や育児を通して、私は言語聴覚士向けの教科書には載っていない乳児期の発達の順番と質、体の動きを猛勉強しました。それが小児言語聴覚士が扱う領域の予防になることを実感したのです。

最初は娘のために勉強していたことですが、「自分だけの知識にするのはもったいない、お母さんたちに伝えなくては!」という気持ちが強くなっていきました。

(3)娘の成長を見逃して後悔したくない

3つ目は、大学病院での働き方では娘との時間を十分にとれず、娘の成長を見逃して後悔するのではと感じたことです。

私は娘が9か月のときに仕事に復帰し、毎日延長保育の日々でした。保育園が閉まるギリギリまで仕事が終わらず、早く帰るときは残った仕事を休日に出勤してこなしていました。正直、仕事に復帰してから娘が3歳くらいまでの記憶がほとんどありません(笑)。

当時は仕事の予約が1年〜1年半先まで入っていたので、「小学生になったら行事などをちゃんと見に行ってあげられるのかな?」と考えたときに、これでは後悔するなと思ったわけです。

このことから「スケジュールを子ども優先にしよう」と思ったのがフリーランスになった最大の要因かもしれません。逆に娘がいなかったら、当時の私はキャリア志向だったこともあり、今でもきっと大学病院で働いていたと思います。

病院も家族も大反対だった「フリーランス」の選択

まず職場からはもちろん反対されました。大学病院では当時、半数が非常勤職員でしたが、私は常勤で働かせてもらっていました。そのため、「常勤を辞めるのはもったいない」といろんな人から言われました。

また、病院には言語聴覚士が5人いましたが、小児を診ることができる言語聴覚士が私1人だったこともあり、後任が見つかりにくい問題もありました。ところがタイミングよく後任が見つかって無事に引き継ぐことができ、辞めたあとも時々手伝いに行く約束で円満に退職できました。

一方で私はシングルマザーなこともあり、家族もとても心配していました。特に父と兄は相当心配していたようで、フリーになってからの見通しや事業計画などを細かく聞かれました。

「フリーランス」というと聞こえはいいですが、全部が自分の責任です。父は自営業で、兄も父も一緒に働いているからこそ大変さを肌身で感じており、それゆえの心配だったようです。「体調を崩して働けなくなったときにどうするのか」「精神的に1人でやっていけるだけの強さがあるのか」「娘を育てられるだけの財力はあるのか」と言われました。

でも私は子どもの頃から自分が決めたら周りに何を言われてもやるタイプだったので、家族も半分諦めていたようです。幸い家族は、私がフリーランスとして活動していくうちに仕事内容も理解し、応援もしてくれるようになりました。今ではいろいろな面で助けてもらっています。

フリーランス言語聴覚士は「医療や福祉の力ではできない部分」をカバーできる

フリーランスとして働いてみて、いろいろメリットがあることがわかりました。特に感じたのは次の3点です。

<フリーランスのメリット>
①時間の自由がきくこと
②仕事を自分でつくれること
③病院や支援センターでできないことができること

例を1つ紹介します。小児言語聴覚士の業界では、まだ「予防」の観点が確立されていません。そのため、問題のない(とお母さんが感じている)赤ちゃんには保険診療では介入できません。赤ちゃんだと診断名もつけられないのです。

「フリーランス言語聴覚士」という生き方

しかしフリーランスの場合は自費なので、「予防」の観点からもアドバイスができます。乳児期の発達の順番と質を丁寧に追い、一つひとつの発達の意味を保護者に伝え、その発達段階を大切にすることが予防になることお伝えしています(「発達の意味」とは、首がすわるためにはどんな機能が育つ必要があるか、そこから寝返りができるためには何が必要か、などのことです)。

時には、保護者をケアするための専用の時間をとって、アドバイスをすることもあります。

このように、医療や福祉ではカバーできないところを拾って仕事にできるのは、フリーランスならではだと思います。

フリーランスは「すべては自分でやらないといけない」

逆にフリーランスの大変な点もあります。

<フリーランスの大変なところ>
①責任はすべて自分にある
②安定した収入が得られにくい
③全部1人でやらなくてはいけない

病院にいたときは感じませんでしたが「守られた環境で仕事をしていたな」と思います。病院の場合、「医師の指示のもと」行うので、責任は基本的に医師にあります。また施設でも、施設の方針のもと行われます。「どこかに所属していること=守られている」ことを、フリーになって痛感しました。

収入も、病院では毎月決まった金額が入るためすごく安心します。しかし、フリーランスは月によって収入が変わります。事業開始後すぐは、軌道に乗るまで売り上げが少ないこともあります。月々の売り上げを考えていたら、メンタルが落ち込むときも正直あります。

月々の売り上げを把握するだけでなく、「1年」「数年」という長いスパンで売り上げを見る視点も必要で、その発想に切り替えるのにかなり時間がかかりました。

フリーランスSTとして働くなら事務的な作業も必要

「フリーランス言語聴覚士」という生き方

そして、私にとってフリーランスになって特に大変だなと思ったのが「確定申告などの事務的な作業」です。病院で働いていたときは、年末調整の時期に総務部の指示にしたがって書類を提出するだけでよかったのですが(それすらも「面倒くさい」と思っていて、本当にごめんなさい(笑))、今はすべて自分でやらなければなりません。

保険や年金も全額自己負担なので、今思うと病院の社会保険や厚生年金はありがたかったなと思います。

また、仕事を外注したり何か契約する際も全部自分で決め、契約書なども自分でつくります。そのため病院で働いていたときより、自分の身の守り方などを深く考えるようになりました。

フリーランスを目指す言語聴覚士が準備すべきこと

フリーランスになってみてわかったフリーランスになるための準備としては、次のことがあると思います。

<フリーランスに必要な準備>
・技術を磨くこと
・自分の強みや好きなことを知っておくこと
・どんな働き方をしたいか明確にしておくこと
・どんなお客さんに来て欲しいか明確にしておくこと

病院だと所属先のネームバリューがあるため、「集客」を考えることはあまりないと思います。ところがフリーランスになると集客が大きな課題になります。集客セミナーなどに行くのもよいと思いますが(私は行ったことがないのでわかりませんが)、フリーランスは人間性がすごく大切だなと実感しています。

フリーランスは1人で仕事しているようでいて、実は人とのつながりから成っている面が強く、結局は「自分」という商品をしっかりと宣伝できるかどうかが大切になります。

そのためには、上の「必要な準備」をかなり細かく詰め、しっかりとイメージできるように明確にしておくことが大事です。それにより、商品の見せ方も自然とわかってきます。

あとは、来てくれたお客さんをコアなファンにできるように自分を魅力的にしておくこと。そうすることで、お客さんがお客さんを連れてきてくれて広がっていきます。

集客方法はSNS、ホームページ、口コミとさまざま

私は職場の許可を得て、開業する前からお母さん向けのプレ講座などを行っていました。その利用者の方が、開業後にお客様として来てくれました。

また、開業前からブログで情報発信を積み重ね、さらにfacebookとInsrtagramでビジネスアカウントを開設。ホームページも開業前から作成しました。

SNSは年齢層で使われるサービスが異なっていたため、ターゲット層に合わせて使い分けました。今は子育て世代の方がInsrtagramを多く使っているためか、最近の新規の方はInsrtagramを見てご連絡くださる方が多いです。

しかし最も多いのは、ありがたいことに口コミで来てくださる方です。全国にいる他職種の専門家の仲間から紹介してもらったり、お客様のご紹介で来てくださいます。多くの方のお陰で集客につながっています。

多岐にわたるフリーランス言語聴覚士の仕事と今後の可能性

「フリーランス言語聴覚士」という生き方

現在の私の仕事は多岐にわたっています。おもな内容は次のとおりです。

・発達相談
・言語レッスン(言語訓練)
・保護者のケアのセッション
・赤ちゃんクラス(予防)
・他職種とのコラボ講座
・小児言語聴覚士とその周辺の職種の勉強会
・子どもに関わるお仕事をされている方々のお仕事相談
・施設等で職員向けの研修

発達相談は単発の相談だけでなく、地方から数か月に1回継続して札幌まで来てくださる方もいて、地元の支援センターやこども園と評価内容を共有し、プログラムのアドバイスなどもしています。

最近は、小児言語聴覚士や子どもに関わる職種の方達の育成のほか、他職種連携に力を入れています。

言語聴覚士だけでなく、保育士、幼稚園教諭、教員、歯科医師、衛生士、理学療法士、作業療法士、保健師、助産師など、子どもに関わっている職種の方々に、言語発達や構音について正しい知識をお伝えするという仕事です。

その他に、児童発達支援や放課後等デイサービスと時間契約し、お子さんの個別支援をしたり、臨床経験を積むために病院の非常勤も継続しています。

自宅のサロンではお会いしにくいお子さんたちを病院や放課後等デイサービスで診ることで、より深い技術や経験、知識を積むことができ、自己研鑽の場となっています。

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改めて感じるフリーランスとしての可能性

言語聴覚士は理学療法士や作業療法士と違い、法律の面からも開業をしやすいように感じます。摂食嚥下訓練は医師の指示が必要となりますが、言語訓練は必ずしもそうではありません。

年々、言語発達や構音に不安を抱えたお子さんが多くなり需要が増えている一方、まだまだ言語聴覚士の供給は足りていません。これからどんどん発展していく必要があると思います。

そのなかでフリーランスの言語聴覚士が、自分の得意なことを活かして子どもたちと関わることで、「世の中には楽しいことがたくさんあるんだよ」「成長して大人になっていくのは楽しいことなんだよ」と、自分たちの背中を見せて、何かメッセージを伝えることができるのではないかと思っています。

今後、フリーランスを考えている言語聴覚士の方へ

フリーランスにはさまざまな可能性があると思います。

自分の人生を考えたときにどう生きたいかを見つめながら楽しく仕事をし、自分好みに仕事をデザインし、それが結果的に子どもたちの役に立つ。そうなればフリーランスは最高の仕事になると思っています。

人生の楽しさを伝え、支援することで子どもたちの本質を大切にし、育んでいける、そんな仲間が今後も増えていくことを心から望んでいます。

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三上 愛

三上 愛

イロドリ代表、言語聴覚士、保育士
1986年生まれ、1児の母。北海道医療大学卒。2009年北海道大学病院高次口腔医療センター・リハビリテーション科に就職、2018年イロドリサロン開業。
生後すぐの赤ちゃんから診ることができる言語聴覚士。姿勢運動発達、口腔機能、非言語的コミュニケーションを生後すぐから育むことによって、言語聴覚士が関わる領域の困りごとの予防を行う。言語発達、吃音、構音、摂食嚥下、読み書き、聴覚などさまざまな分野にて親子の困り感へ寄り添っている。

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