地域リハビリテーションって何? 地域で生き生きと暮らすために
公開日:2023.01.23
文:鎌田康司(作業療法士/サービス管理責任者)
皆さんは「地域リハビリテーション」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。聞いたことはあるものの、具体的にはよくわからない方も多いのではないでしょうか。
今回は、地域リハビリテーションについて、その定義や内容、必要性や役割、筆者自身の実践例をご紹介していきたいと思っています。
また、地域リハビリテーションにおける関係機関との連携の取り方についてなど、ポイントや方法をたっぷりお伝えします。
地域リハビリテーションとは?
ここで、地域リハビリテーションの言葉の定義について、改めて確認していきます。
一般社団法人日本リハビリテーション病院・施設協会は、地域リハビリテーションをこう定義しています。
「地域リハビリテーションとは、障害のある人々や高齢者とおよびその家族が、住み慣れたところでそこに住む人々とともに、一生安全に、いきいきとした生活が送れるよう、医療や保健、福祉及び生活にかかわるあらゆる人々や機関・組織がリハビリテーションの立場から協力し合って行う活動のすべてを言う」
(日本リハビリテーション病院・施設協会 1991)(2001改訂)
この定義でわかることは、地域リハビリテーションは単にセラピストが行うリハビリテーションの提供だけはなく、対象者が充実した生活が送れるように、地域住民や専門機関が協力し、地域ぐるみで行う取り組みのことを指しています。
つまり、高齢者や障害のある方が地域で生き生きと暮らすためには、健康であることのほかに、地域で守られて社会と交流があり、自分らしさが実感できることが大切だということです。
地域リハビリテーションの役割や必要性について
では、対象者が地域で自分たしさが実感できるようにするためには、具体的に何をすればいいのでしょうか。
日本リハビリテーション協会・施設協会では、地域リハビリテーションの実現に向け、次の活動指針を掲げています。
- 1. 障害の発生を予防することが大切であるとともに、あらゆるライフステージに対応してリハサービスが継続的に提供できるシステムを地域に作っていくことが求められる
- 2. 医療においては廃用症候群の予防及び機能改善のため、疾病や障害が発生した当初よりリハサービスが提供されることが重要であり、そのサービスは急性期から回復期、維持期へと遅滞なく効率的に継続させる必要がある
- 3. 機能や活動能力の改善が困難な人々に対しても、できうる限り社会参加を促し、生あるかぎり人間らしく過ごせるよう専門的サービスのみでなく地域住民も含めた総合的な支援がなされなければならない
- 4. 一般の人々や活動に加わる人が障害を負うことや年をとることを家族や自分自身の問題としてとらえるよう啓発されることが必要である
この活動指針をまとめると、機能回復を目的としたリハビリテーションはもちろんのこと、予防に関する取り組みの充実や、発症からの円滑なサービス提供のためのシステムづくりが必要だということです。
さらに、地域住民の参画のもと、自治体やいくつかの組織や団体が一団となりつくり上げる社会参加の場づくりや、ネットワークづくり、地域住民を対象とした教育啓発活動を通した地域での見守り・支え合いづくりなどの必要性も見えてきます。
このように、地域リハビリテーションはマクロからミクロまで多岐にわたります。
では、今私たちが地域リハビリテーションとしてできる取り組みには、一体どのようなものがあるでしょうか。
【活動指針】一般社団法人日本リハビリテーション病院・施設協会
地域リハビリテーション機関の取り組み
まず挙げられるのが、地域リハビリテーション機関です。
地域リハビリテーション機関には、各都道府県のリハビリテーション協議会、地域ごとのリハビリテーション支援センター(選定された医療機関)などがあり、これらが中心となって、地域リハビリテーション推進の役割を担っています。
なお、私の勤務地である東京都には、区中央部から北多摩北部まで12の圏域に分かれ、12か所の病院が地域リハビリテーションセンターに指定されています(2022年4月1日時点)。
センターの必須の役割として次のものがあります。
・地域リハビリ体制の強化
・訪問・通所リハビリの利用促進
・地域リハビリ関係者の連携強化
3つ目の「地域リハビリ関係者の連携強化」ですが、具体的には、地域リハビリ施設、自治体、関係団体などが協議会を開設して、地域リハビリに関する課題などについて意見交換したり情報共有を図ったりするなどを行っています。
しかし、これらの機関だけでなく、セラピストの皆さんが日頃の業務で行っている地域での取り組みも、地域をフィールドとしたリハビリテーションの実現には非常に重要なことだと考えています。
次に、地域リハビリテーションとして筆者が取り組んでいる活動の一部を紹介します。
筆者の実践1 地域のニーズの把握
まず私が実践しているのが、勤務地の町会への参加です。町会では、その街に住む方々が集まって議論を行うため、実際にそこに住んでいる方、勤めている方のお話を聞けます。
また、筆者は参加していませんが、地域で行われている協議会に参加してもよいでしょう。さらに、各地域には民生委員という地域の相談窓口になる方も存在します。
このように、地域の集まりに参加することで顔の見える関係づくりができ、その地域のニーズや課題を知れます。それによって、地域の方々が生き生きと生活してもらうため必要な取り組みも見えてくるようになります。
筆者の実践2 教育啓発活動
2つ目は地域での教育啓発活動です。
筆者はときどき、市区町村で行われる住民向けの健康講座でお話をさせていただくことがあります。
例えば、「リハビリテーションについて」など、私たちの職種や役割について話したりします。住民が疾患に興味がある場合は、「認知症」や「うつ病」などについて話をしてもいいかもしれません。
これをきっかけに、困ったときの相談窓口などが案内できれば、地域の方々のたくさんの目によって、救える方が出るかもしれません。
このような教育啓発活動も、地域リハビリテーションの土台の1つといえます。
「つながること」がこれからの地域ケアの柱になる
今回は地域リハビリテーションのテーマでお話をしてきました。
これからの地域ケアは、それぞれがそれぞれの立場の役割を認識し、つながることが非常に重要になると思います。
それも、つながることを「待つ」のではなく、つながるための「アクションを起こす」ことで、地域のネットワークはさらに広がり、ネットワークができればできるほど、地域リハビリテーションも充実したものになるはずです。
地域づくりの土台として、今地域で行える取り組みを実践していくことが大切ではないかと考えています。
鎌田 康司
得意分野は精神科、高齢者、訪問看護、障害福祉サービス、施設マネジメント、地域ケア。
介護老人保健施設で勤務後、精神科単科の病院で院内作業療法を経験。患者さんの実生活を知るため、地域の訪問看護ステーションに転職。今は生活訓練という障害福祉サービスの管理者として、精神障害や発達障害、知的障害の方たちの地域生活のサポートをしている。3人の子どもがおり、子育てと家事にも奮闘中。
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