給食委託会社で働くメリット・デメリットとは?
公開日:2023.04.21
文:広田千尋(管理栄養士)
管理栄養士や栄養士の就職先の1つである給食委託会社。求人募集でよく見かけることも多く、「人手が足りないのでは?」「大変?」と心配になる方もいるかもしれません。
筆者は、実際に給食委託会社で働いてみて、メリットやデメリットを知ることができました。
今回は給食委託会社への就職を迷う方に、ぜひ知っておいてほしい情報をお伝えしたいと思います。
給食委託会社とは
給食委託会社とは、給食に関する業務を請け負う会社のことを指します。正式には「給食受託会社」といいますが、「委託会社」「委託」などと呼ばれることもあります。
受託先の施設には、病院や高齢者施設、保育園、社員食堂などがあり、さまざまな場所で給食を提供しています。集団給食の専門の会社であるため、「給食のプロ」というイメージをもってもらうとよいかもしれません。
給食委託会社の仕事内容
具体的な仕事内容は、献立作成、調理、発注、在庫管理、衛生管理などがあります。契約内容によって仕事内容が変わるため、施設によって業務が異なります。
施設の規模によっては管理栄養士や栄養士が複数人いるため、これらの仕事を分担して行う場合がほとんどです。
責任者になると、スタッフのシフト管理、施設側との打ち合わせや会議への出席、本社のスーパーバイザーなどとのやり取りなどの仕事も増えます。
はじめからすべての仕事を担当するわけではなく、まずは厨房の作業を中心に仕事を行い、慣れたころから徐々にほかの仕事を覚えていく、という流れが一般的です。
給食委託会社で働くメリット
まずは、給食委託会社で働いて感じたメリットからお伝えします。
マニュアルがあるため未経験でも働きやすい
施設側への就職は経験が求められることもありますが、給食委託会社では教育制度や社内研修もあるため、未経験でも働きやすい仕事です。
書類なども決まった書式に沿って作成すればよいため、自分で調べたり作ったりする必要もありません。
またわからないことがあっても、近くに管理栄養士や栄養士の先輩や同僚がたくさんいますので、気軽に聞くことができる点も安心して働けるポイントです。
さまざまな仕事を経験できる
施設を異動することによって、病院、高齢者施設、保育園、社員食堂など、さまざまな職場を経験できるのは、給食委託会社ならではのメリットです。
施設によって仕事内容はガラリと変わります。たとえば、高齢者施設であれば和食中心の給食ですが、保育園であれば子ども向けの給食となるなど、献立作成、発注、調理もまったく別物です。
実際に私は大規模の急性期病院から小規模の病院、高齢者施設などに携わる機会があり、対応力も磨かれました。
異動することで経験を積めるだけでなく、どんな施設でも対応できるスキルを身につけると会社から重宝される人材となり、給料アップなどの待遇改善にもつながりやすいです。
大量調理のスキルが身につく
栄養や食に関する知識は勉強すれば身につきますが、大量調理は経験してこそのスキルです。
大量調理ができるようになると、作業効率を考えられる献立作成ができるようになり、在庫のイメージがしやすくなるため、在庫管理や発注もうまくできるようになってきます。また調理スタッフの立場を考えられるようになるため、信頼を得られやすくなり、仕事をスムーズに進められるようにもなるでしょう。
私は給食委託会社の後にほかの職場を経てから病院へ転職をしましたが、献立作成や調理スタッフとコミュニケーションをとる際に、とても役立ちました。給食委託会社で経験をして、本当によかったと思っています。
年代の近い同僚がいる
給食委託会社では、比較的若い年代の方が多いため、仕事仲間を作ることができるのも魅力です。
たとえば施設側に就職すると、年の離れた先輩がいる場合や、栄養士が1人だけという場合もあり、気軽に相談できる環境でないこともあります。
実際に私が働いていたときは、同年代の管理栄養士や栄養士が多く、悩みを共有し合うこともあり、とても心強かったのを覚えています。
配属施設が違うとなかなか知り会えないため、新人研修などで交流する機会を逃さないようにするとよいでしょう。
給食委託会社で働くデメリット
このように給食委託会社にはメリットもたくさんありますが、デメリットもあります。どの会社や職場にも少なからずマイナスな点はあるものですが、働く前に一度知っておきましょう。
調理や盛りつけなどの作業が多い
給食委託会社では、管理栄養士や栄養士も調理や盛りつけ、配膳などの作業に携わる場合が多くあります。
特にはじめのうちは1日の大半が厨房作業になることもあり、ギャップを感じることもあるかもしれません。
しかし先ほどお伝えしたとおり、大量調理の経験は、献立作成や発注の仕事をするうえで欠かせないものです。
慣れないうちは大変さを感じるかもしれませんが「下積み」は大切です。
事務の仕事に取り組みたい場合は、面接時や仕事開始時などに、いつごろから携われるのか、見通しを聞いておくのもよいでしょう。
朝や土日も出勤が必要
病院や高齢者施設など、365日食事提供をする施設では、早朝や土日祝日の出勤が必要であり、シフト制になることがほとんどです。固定制がよい方にとっては、デメリットといえる部分でしょう。
しかし、平日に休みがあったり、早番の日は早く帰れたりすると、人込みを避けられるメリットもあります。
希望休も出せるため、考え方によってはプライベートも充実しやすいでしょう。
職場によっては忙しい場合もある
限られた人材で決められた時間に給食を提供する必要があるため、やはり忙しい仕事であるといえます。
急に休むスタッフがいる場合、栄養士がその分をカバーすることもあり、残業しなければいけないときもあるのは事実です。
しかし、最近では働き方改革もあり、待遇面を改善しようという会社は増えてきています。また受託先によっても業務量が異なるため、同じ会社でも残業なしで仕事を終えられる場合もあります。
残業については、平均的な残業時間や自身の希望などを面接の際にしっかりと確認しておきましょう。
人間関係の悩み
給食委託会社は、会社側と施設側の2つの関わりがあるため、いろいろな人間関係の悩みが出てくる場合があります。
たとえば、会社側の調理スタッフは年齢や性別、雇用形態(正社員・パート)もさまざまです。栄養士は調理スタッフにお願い(指示)をする立場になりますが、ときには聞いてもらえなかったり、嫌味を言われたりすることもあります。
また、施設側の管理栄養士ともコミュニケーションをとらないといけないため、多方面に気を遣ってヘトヘト、という方もいるでしょう。
しかし、人間関係の悩みはどの仕事をしていても大なり小なりあるものです。うまく切る抜ける術を身につけておくのも、仕事をしていくうえで大切でしょう。
またどうしても合わない場合は、異動願いを出すことも可能です。辞めずに別の仕事をできるのは、キャリアを築くうえでもよい点といえるでしょう。
給食委託会社が向いている人
就職に失敗しないためには、メリットとデメリットを知るほかにも、自分に向いているかどうかを考えてみることも大切です。
下記のような方は、給食委託会社で働くことが向いているのではないでしょうか。
・調理が好き、得意な人
・1つの仕事だけでなく、さまざまな仕事をしてみたい人
・人に喜んでもらうことにやりがいを感じる人
給食委託会社のやりがいとして、提供した給食で喜んでもらえることがあります。人から感謝される仕事をしたい方は、ぴったりだといえるでしょう。
給食委託会社が向いていない人
反対に、向いていない人についても見てみましょう。
・固定シフト制がよい人
・栄養指導をやりたい人
・事務作業メインの仕事がよい人
やりたい仕事内容と、給食委託会社の仕事内容が大きく違う場合は、就職後のギャップになりやすいでしょう。
募集要項をよく確認するだけでなく、面接の際にも話を聞くようにし、「こんなはずじゃなかった!」という事態を防ぎましょう。
さまざまな仕事を知り、理想の就職を
給食委託会社のメリットとデメリットなどを紹介しました。
私自身は、給食委託会社で働いて、本当によかったと思っています。そのときの経験がなかったら、できなかった仕事もたくさんあります。
会社によって仕事内容や待遇面が異なるため、よく下調べをして、可能であれば会社見学やOB・OG訪問なども積極的に行ってみてください。
さまざまな仕事や会社を知り、理想の就職先に出会えることを願っています。
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広田 千尋
管理栄養士
病院や保健センター、保育園などに13年間勤務した後に独立。現在はフリーランスとしてコラム執筆やレシピ作成を中心に活動中。インターネット上にたくさんの情報があふれるなか、専門家として正しい情報をわかりやすく伝えている。
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