働きながら管理栄養士国家試験に合格するために 一発合格者が秘訣を伝授
公開日:2023.05.23
文:広田千尋(管理栄養士)
社会人が管理栄養士国家試験の合格を目指すには、限られた時間のなかで効率よく勉強することが大切です。筆者である私は、栄養士として働きながら受験し、一発合格することができました。
私の経験ではありますが、効率のよい勉強のコツやNG勉強法についてお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
管理栄養士国家試験の受験資格について知ろう
管理栄養士の国家試験は、毎年2月下旬に行われています。受験を決めたときに、まず確認しておきたいことは、受験資格についてです。栄養士としての実務経験が必要ですが、栄養士養成施設の修業年限により必要とされる年数が異なります。
栄養士養成施設の修業年限 | 実務年数 |
---|---|
2年 | 3年以上 |
3年 | 2年以上 |
4年 | 1年以上 |
第32回の国家試験から「見込み年数」での受験はできなくなったため、国家試験の受験申込締め切り日までに、上記の年数が必要です。
例えば、修業年限が2年の栄養士養成施設を卒業し、栄養士としてすぐに就職したとします。その場合、丸3年働き、4年目にあたる時期に受験できるようになります。
詳しい受験資格については、毎年7月ごろに厚生労働省のウェブサイトで発表されるため、必ずチェックしておきましょう。
参考:厚生労働省 管理栄養士国家試験
社会人の国家試験合格率は?
社会人の国家試験合格率は、平均して2割前後となっています。毎年1,000人前後が合格している計算です。
一方で、管理栄養士養成施設の合格率は毎年9割以上です。数字から見てわかるとおり、社会人で合格を目指すのは険しい道となっています。
勉強が本業である学生と同じようには勉強時間が確保できないため、社会人がスムーズに合格するには「計画的に」「効率よく」がなにより大切になります。
そこで次からは、さっそくそのポイントやコツを解説したいと思います。
勉強を始める前に、スケジュールを立てよう
勉強を始める際に、まずは年間スケジュールを立て、国家試験までの見通しを立てましょう。無計画に勉強をすると、時間がかかったり全範囲の勉強ができなかったりと効率的ではありません。月単位のざっくりとしたものでよいので、一度考えてみましょう。
4月から勉強を始めるとした場合の、スケジュール例を考えてみました。
<スケジュール例>
・4~7月:参考書と過去問を使って全範囲の基礎を勉強
・8~11月:過去問を中心に勉強
・12~1月:模擬試験を受け、勉強が足りない分野を勉強
・2月:暗記を中心に勉強
社会人の場合は、基礎に時間をかけ過ぎるよりは、過去問や模擬試験などの実践的な勉強に時間をかけるほうが効率的です。詳しくはのちほど改めてお伝えします。
やってしまいがちなNG勉強法
社会人は、時間に余裕のある学生とは違う勉強法が必要になります。勉強のコツを知る前に、避けておきたいNG勉強法について知っておきましょう。
全範囲のまとめノートを作る
参考書などをノートに書き写す「まとめノート」を作るのは、いくら時間があっても足りません。またノートを作っただけで満足してしまい、結局暗記できていない状況になることもあります。
まとめノートではなく、参考書にメモを書き込んだりラインマーカーを引いたりするなどし、参考書を活用して勉強を進めましょう。
しかし「書いて覚える」作業は、暗記に役立つ場合もあります。どうしても覚えられない部分だけノートに書くなど、臨機応変に勉強していきましょう。
教科書を使う
学生時代に使っていた教科書を使って勉強するのは、効率的ではありません。範囲が広過ぎるため、勉強すべき点がわかりづらいからです。
社会人がスムーズに勉強を進めるなら、教科書ではなく、管理栄養士国家試験用の参考書や過去問集を準備して勉強するようにしましょう。
参考書は受験対策がなされているため、試験に出やすいポイントや、間違えやすいポイントなどがわかりやすくまとまっています。イラストや図などが使われている参考書が多いため、授業の内容を忘れていても勉強をしやすいでしょう。
参考書や過去問集を選ぶ際は、新しい情報のほうがムダなく勉強できるため、なるべく最新のものがおすすめです。まずは1~2冊、使い勝手がよさそうなものを準備し、必要に応じて買い足すようにするとよいでしょう。
効率のよい勉強の仕方
ここからは、「とにかくコツコツ勉強する」という勉強法でなく、限られた時間のなかで効率よく勉強するコツをお伝えします。
過去問を中心に勉強する
過去問を使って勉強することで、範囲が絞られ、勉強する量を抑えられます。また、単に書いたり見たりして覚えるよりは「解きながら覚える」ほうが、知識が身につきやすくなります。
そうすることで、全範囲をやみくもに勉強せずに済み、頭を使いながら勉強できるため、勉強期間が短くても合格のゴールにたどり着きやすいでしょう。
おすすめは、過去問をベースに作られている参考書です。出題傾向に沿って勉強すべきポイントが明確にわかるため、ムダなく勉強できます。
正答を中心に勉強する
過去問で勉強をする際は、正答を中心に勉強をするほうが効率的です。正答には「覚えたいポイント」や「間違えやすいポイント」が詰まっています。
ほかの選択肢まで勉強しようとすると、勉強量が5倍になってしまいます。すべて勉強するのが理想的ではありますが、時間のないなかでは、ひとまず正答と正答周辺の知識を完璧に覚えることを目指すほうがよいでしょう。
模擬試験で実力をチェックする
ある程度勉強を進められたら、模擬試験にチャレンジしてみましょう。実力試しができるだけでなく、勉強不足の箇所がわかるようになります。模擬試験を受けたあとは必ず見直しを行い、勉強の対策を練り直しましょう。
模擬試験を受ける方法は3つあります。
・会場で本番さながらに受験する方法
・決められた日時にオンライン受験する方法
・書籍で販売されているテキストを利用する方法
です。自分に合った方法でOKですが、緊張しやすい方は会場で受験する練習をしてもよいかもしれません。
勉強時間の作り方
忙しい社会人は、どうやって勉強の時間を確保するのかも考えなければいけません。どのように作るとよいのか、そのヒントをお伝えします。
仕事の日の取り組み方
仕事の日は「毎日1時間」などとルールを決めるようにするとよいでしょう。時間を決める際は、無理のない時間にしておくことが大切です。試験が近づいたら増やすなどの調整は必要ですが、無理なく長期的に勉強できる時間のほうが、挫折せずに勉強を続けやすくなります。
勉強する時間帯は、仕事後でもよいですが、夜は疲れて集中力が低下しやすいため、早めに就寝して朝に勉強する方法もあります。
休みの日の取り組み方
休みの日は「集中しやすい午前中に行う」など、平日と同様にルールを決めると取り組みやすいでしょう。
働きながら勉強を続けるには、メリハリをつけることも大切です。「午前は勉強、午後は自由に過ごす」という、ゆるい方法にするのも、長く勉強を続けるうえではよいかもしれません。
試験が近づくと勉強量を増やす必要があるため、時期によって臨機応変にルールを変えていきましょう。
すき間時間を活用する
すき間時間を活用することで、時間がないなかでも勉強量を増やすことができます。
スマートフォンアプリで勉強できるものもあるため、通勤時間や休憩時間に活用するのもよいでしょう。また暗記したいものを紙にまとめ、目に見えるところに貼っておくと、家事や作業の合間にも眺めながら覚えられます。
合格を目指して効率よく勉強しよう
仕事をしながら勉強をするのは、とても大変で努力のいることだと思います。決して楽な道ではありませんが、苦労した分、合格したときの喜びはひとしおです。管理栄養士免許を取得すると、仕事の幅が広がるだけでなく、待遇面の改善や転職に有利になるなどのメリットもあります。ぜひ合格を目指して、がんばってください!
■関連記事
職場に管理栄養士が1人の場合の働き方|メリットやデメリットも解説

広田 千尋
管理栄養士
病院や保健センター、保育園などに13年間勤務した後に独立。現在はフリーランスとしてコラム執筆やレシピ作成を中心に活動中。インターネット上にたくさんの情報があふれるなか、専門家として正しい情報をわかりやすく伝えている。
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