廃用症候群のリハビリって?プログラム内容を施設種類別に解説
公開日:2023.08.08 更新日:2023.09.11
廃用症候群とは、病気や怪我で不活発になった際に起こる二次的な障害の総称です。病院勤務の場合、医師から廃用症候群の予防に向けたリハビリ指示を受けることも多いのではないでしょうか。
しかし、廃用症候群予防のリハビリは病院だけにはとどまらず、介護施設や自宅で生活を送る高齢者にとっても必要です。廃用症候群の進行により、高齢者のQOLが著しく損なわれ、その人の人生そのものに大きく関わってくるからです。
今回は、廃用症候群の概要を解説するとともに、施設種類別のリハビリプログラム例を紹介します。
廃用症候群の原因と症状
はじめに、廃用症候群の原因と症状を確認しておきましょう。
廃用症候群の原因
廃用症候群の原因は、病気やけがにより心身が不活発になることです。長期間の安静状態を強いられると、全身の骨や筋肉、臓器の機能が低下します。全身の運動機能が低下すると倦怠感や精神活動面の鈍化により、運動意欲が乏しくなります。運動意欲が低下すると運動量が減少し、その結果として廃用症候群が進行するという悪循環が生じます。
廃用症候群の原因となりうる疾患は多岐にわたり、代表的なものとして脳卒中や感染症、認知症や骨折などが挙げられます。
廃用症候群の症状
廃用症候群の症状は以下のとおりです。
● 循環器の障害:起立性低血圧、心拍出量の低下、循環血液量の低下、血栓症
● 消化器系の障害:食欲低下、逆流性食道炎、便秘
● 泌尿器の障害:尿路感染症、尿路結石、排尿障害
● 皮膚の障害:褥瘡
● 認知・精神面の障害:認知症、睡眠障害、うつ傾向、せん妄、見当識障害
【施設種類別】廃用症候群のリハビリプログラム
廃用症候群が進行すると、完全に元の状態に戻すことは困難です。したがって、廃用症候群を“予防する”、または廃用症候群の進行を“遅らせる”観点からプログラムを考える必要があります。
では、廃用症候群に対するリハビリプログラムはどのように考えればよいのでしょうか。施設種類別にみていきましょう。
一般病院
一般病院での廃用症候群に対するリハビリ指示は、多くが急性期の場合です。そのため、医師に安静度や禁忌事項の確認をした上でプログラムを立案しましょう。また、急性期は症状の憎悪や合併症を防ぐために、バイタルを測定しながらリハビリを進める必要があります。
具体的なプログラムとしては、良肢位を保ち、褥瘡予防するためのポジショニングや関節拘縮を防ぐための関節可動域訓練があります。加えて、意識レベルや疼痛の有無にもよりますが、早期離床を促すことが廃用症候群の予防には効果的です。ベッドサイドレベルから端坐位での訓練を取り入れるなど、積極的に早期離床を促していきましょう。
入所系介護施設
介護施設においては、予防の観点からは積極的に身体を動かすよう提案をしましょう。個別での歩行練習や筋力トレーニングも必要ですが、他の入居者さんを巻き込んで行うレクリエーション活動も有効です。
すでに廃用症候群が進行している利用者さんに対しては、これ以上、廃用症候群が進行しないようポジショニングや関節可動域訓練、端坐位での作業活動を取り入れます。
リハビリ対象者が多い場合には、看護師や介護士の協力を得て、日常生活の中に軽い運動を組み込むのもよいかもしれません。利用者さんの生活様式や希望に沿ったリハビリプログラムを立案しましょう。
通所・訪問系事業所
自宅で生活を送る対象者が廃用症候群に陥る原因として「社会的孤立」が挙げられます。外部との関係が分断されると自宅で引きこもりがちになり、結果不活発な状態になるため徐々に全身機能が低下していくのです。
自宅で生活する対象者へのリハビリは、身体的なプログラムに加えて、地域との交流を促したり介護保険サービスの見直しを提案したりすることもセラピストの重要な役割です。
廃用症候群の予防にはバランスのとれた栄養が必須
廃用症候群の予防には、リハビリプログラムとともに、バランスのとれた栄養摂取が欠かせません。低栄養状態に陥ると、全身筋肉量の低下や骨密度の低下につながります。万が一、転倒などにより骨折をすると、一気に廃用症候群のリスクが高まるため注意が必要です。セラピストは患者さんや利用者さんが十分な栄養を摂れるように食事のサポートも行います。
具体的には、食事をする際のポジショニング調整や補助具の提案、生活リズムの改善が挙げられます。セラピストだけでは十分なサポートができない場合、看護師や介護士、管理栄養士などと協同してチームとしてアプローチをする必要があります。
廃用症候群のリハプログラムは予防を意識して立案しよう
廃用症候群は、症状が進行すると元の状態に戻すのが難しいため、予防がとても大切です。また、患者さん・利用者さんの状態や、施設の種類によってリハビリプログラムは異なります。看護師や介護士、管理栄養士と協同し栄養管理や食事環境整備にも配慮しながら、対象者の希望に寄り添ったリハビリ内容を立案しましょう。
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■参考
廃用症候群の概念分析|大久保暢子(聖路加看護大学基礎看護学)
廃用症候群とは|みどり病院
廃用症候群予防のリハビリ80代女性のケースを紹介します|医療法人賛健会城内病院
高齢者の廃用症候群の機能予後とリハビリテーション栄養管理|国立研究開発法人科学技術振興機構
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平岡 泰志
作業療法士/医療介護分野専門ライター
地方の二次救急指定病院にて5年間勤務。その後、デイサービス立ち上げに携わり、
『高齢者の尊厳を守る』を念頭に主任として現場を統括。作業療法士歴16年の知識と経験を活かし、現在はWEBライターとして、医療介護分野の役に立つ情報を精力的に発信している。
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