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管理栄養士が給食委託会社とよい関係を築くには? ~2つの職場の経験者がそのポイントを語る~

公開日:2023.11.22

管理栄養士が給食委託会社とよい関係を築くには? ~2つの職場の経験者がそのポイントを語る~

文:広田千尋(管理栄養士)

病院や高齢者施設などの施設に雇用されている管理栄養士(以後「施設側」)は、給食委託会社と立場が違うことから、関係性に悩むこともあるのではないでしょうか?

筆者は給食委託会社で働いたあと、病院で施設側としても働いた経験があります。どちらの立場も経験したからこそ、気づいた点や気をつけようと思った点が多々ありました。

今回の記事では、良好な関係を築くために施設側が気をつけたいことを中心にお伝えしますが、給食委託会社で働く方や、学生さんにもぜひ知っておいてほしい内容です。仕事の悩みが少しでも軽くなるよう、ぜひ参考にしてみてください。

施設側と給食委託会社の目的の違い

良好な関係を築くために、まずはお互いについてよく知っておきましょう。相手を理解することで、相手の立場に立ってものごとを考えられるようになるため、信頼関係を築くためにも大切です。

まず施設側と給食委託会社は、仕事をするうえでの目的が違います。

・施設側:給食サービスの質の向上
・給食委託会社:利益の追求

給食委託会社は利益を追求するため、コストカットに重きが置かれる場合があります。施設側は利益を追求する立場ではないため、理解しづらい点かもしれません。すれ違いが起きやすい部分ですが、会社である以上、利益がなければ経営していけなくなることは理解しておきたい点です。

筆者も給食委託会社で働いていたときは、施設側からの要望と、予算や人員の都合の間で板挟みになり、困ったことが多々ありました。そのため病院で働くようになったときは、なるべく給食委託会社の都合も考え、相談しながら物事を進めるようにしていました。

給食の質はもちろん大切なことではありますが、給食委託会社に委託している以上は、性質を理解しておくと、すれ違いを防ぎやすくなると思います。

施設側の立場として知っておきたいこと

給食委託会社との目的の違いのほかにも、施設側の立場として知っておきたいルールや大切なことがあります。

業務委託契約のルールを知る

施設側と給食委託会社は「業務委託契約」という契約のもと、仕事が行われています。業務委託契約にはいくつかのルールが定められているため、ルール違反とならないためにもぜひ知っておきましょう。

【業務委託契約におけるルール】
・直接指導してはいけない
・作業工程の指示をしてはいけない

まず施設側が給食委託会社の調理スタッフに、指導や注意を直接してはいけません。例えば、爪が伸びている調理員に「爪を切ってください」といったことも、ルール上は直接言ってはいけないのです。指導や注意をする際は、責任者を通す必要があります。

また作業工程に関して、仕事の順序や方法、割り振りを指示するのもいけません。例を挙げると、「○○さんはお菓子づくりが得意だから、イベントではデザートを担当してください」というのもNGです。誰がどう作業をするかは、口を出してはいけません。

これは難しい話になりますが、どちらも「偽装請負」とみなされたり、業務委託ではなく「労働者派遣事業」とみなされたりする可能性があることが理由です。どちらもつい口を出してしまいそうなところではありますが、法律で定められたルールであるため、注意しましょう。

契約内容を把握する

施設と給食委託会社における業務委託契約は、先ほど伝えたとおり基本的なルールはあるものの、独自で取り決めをしている場合も多くあります。特に理解しておきたいのは業務や費用負担の割り振りで、下記のような点が契約によって異なる場合があります。

・献立作成はどちらがするのか
・費用負担はどちらが行うのか(イベント食、食器、光熱費、設備修繕、備品など)
・設備や器具の修理対応はどちらがするのか
・清掃の頻度や衛生面に関する取り決めはあるか

このような契約内容を理解せずに契約以上のことを求めてしまうと、トラブルになってしまうこともあります。反対に、給食委託会社が契約内容に準じた業務を行っていない場合は、改善を求めなければいけないため、そのためにも把握しておかなければいけません。

可能であれば契約書のコピーを手元に置いておくなどし、しっかり内容を把握しておきましょう。

関係性が悪くなることのデメリット

良好な関係を保つのが基本ですが、関係性が悪くなってしまうこともないわけではありません。その場合、どのような影響が出てきてしまうのでしょうか。

栄養管理のために必要なことを断られる

施設と給食委託会社はすべてのことが契約書に取り決められているわけではなく、細かなことは話し合いで決定していくことが多々あります。話し合いはコミュニケーションが大切であるため、関係性がよくないと、業務上必要なことも断られてしまう可能性があります。

例えば、パン食や禁止食などの嗜好に対応してほしい場合や、自助食器や自助具を使用してほしい場合など、細かい対応をお願いしたいことはよくあることです。

しかしこれらは、給食委託会社にとっては業務の負担になることばかりです。普段から一方的なお願いばかりだと、断られてしまうかもしれません。結果的に利用者さんに必要なサービスを提供できなくなることもあり、栄養管理の質にも関わってきてしまいます。

給食の質が低下する

関係性がよくないと、施設側と調理スタッフの間に溝ができてしまい、給食の質が低下してしまうことがあります。

例えば、利用者さんの食事量を見て献立の内容を見直すことは多々ありますが、関係性がよくないと、なかなか意見を取り入れてもらえない、といったことが起きてしまうかもしれません。

良好な関係づくりに役立つこと

施設側と給食委託会社は契約にもとづいた仕事とはいえ、実際に仕事をするのは人と人です。良好な関係をつくるためには、心構えや気遣いが必要だと思っています。

筆者も初めからできていたわけではありませんが、さまざまな職場を体験したり、先輩の姿を見たりして学んできました。そのなかで特に大切だと思ったことをお伝えします。

100点を求めない

良くも悪くも、100点を求めずに「70~80点くらいでOK」という気持ちを持つと、自分も相手(給食委託会社)も仕事を進めやすくなります。

施設側の栄養士は利用者さんとの距離が近いため、「よりよい給食を提供したい」と思うのは自然なことです。しかし利用者さんのためだからといって、理想を高く持ちすぎてしまうと、一方的な要求ばかりになってしまいやすくなります。

実際、施設側として働いていたときは「もっとこうしてほしい」と思うことは多々ありました。例えば、冷凍野菜でなく生の野菜を使ってほしかったり、旬の野菜や果物をもっと取り入れてほしかったり……。しかし「冷凍野菜でも、給食自体がおいしければOK」というふうに割り切って考えるようにしていました。

どこを「落としどころ」にするかは、職場の状況や個人の考えにもよりますが、考え方の一例として参考にしてください。

思いやりの気持ちを持つ

給食委託会社の栄養士や調理スタッフとは、毎日顔を合わせる関係性です。「給食委託会社は自分の職場の人ではないから」と区別して考えすぎず、同じ職場で働くもの同士、思いやりの気持ちを持ってコミュニケーションをとることが大切だと思っています。

例えば、厨房での作業は、重いものを持ったり暑いなか作業をしたりと、仕事とはいえ大変なものです。筆者は完璧にできていたわけではありませんが、感謝の気持ちやねぎらいを伝えるように意識していました。会話を交わすことでコミュニケーションにもなるため、距離も近くなると思っています。

またそのなかで、給食について「今日の○○は大好評でした」「盛り付けがきれいで喜ばれていました」などのうれしい反応も、できるかぎり伝えるようにしていました。これは実際に筆者が給食委託会社で働いていたときに、給食の感想を聞けるとうれしかったからです。調理スタッフは利用者さんの声を直接聞くことが少ないため、ぜひ意識して伝えてみてください。

何事も相談して決める

業務上の変更が起きるときは、一方的に決めるのではなく、何事も相談して決めていくことが大切です。やはり一方的な仕事ばかりでは、不満やトラブルにつながりかねません。

しかし話し合いをしていても、ときには「難しい」「できない」と言われることもありました。例えば、新しい栄養補助食品を取り入れたいときや、行事食のメニューの要望をしたときなどです。そのときは「どうすればできるのか」「どこまでならできるのか」について、双方が納得できるまで話し合いをして解決するようにしていました。

しっかり話し合いをすることで、同じゴールを目指す「仕事仲間」という意識も芽生えるのでは、と思っています。

給食委託会社と連携して、質の高い給食サービスを目指そう

給食委託会社としっかり連携することが、給食サービスの質の向上にもつながるため、施設側の目的も果たせるようになります。

どうしても「業務を委託している施設側のほうが立場が上」というふうに考えられがちですが、どちらも経験した筆者としては、対等な立場として思いやりを持って接するほうが、うまくいくことが多いと感じています。

毎日気持ちよく仕事ができ、質の高い給食サービスを提供できるよう、ぜひ参考にしてみてください。

広田 千尋

広田 千尋

管理栄養士
病院や保健センター、保育園などに13年間勤務した後に独立。現在はフリーランスとしてコラム執筆やレシピ作成を中心に活動中。インターネット上にたくさんの情報があふれるなか、専門家として正しい情報をわかりやすく伝えている。

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