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高齢者に多い大腿骨頸部骨折!リハビリの流れと再発予防のポイントを解説

公開日:2025.03.16

高齢者に多い大腿骨頸部骨折!リハビリの流れと再発予防のポイントを解説

文:加藤真太郎(理学療法士)

大腿骨頸部骨折は高齢者に多い骨折の1つで、骨折の早期回復には手術だけでなく、術後のリハビリも欠かせません。そのため、大腿骨頸部骨折の概要やリハビリの流れ、重要なポイントを把握することがとても大切になります。
本記事では、大腿骨頸部骨折の主な症状やリハビリの流れ、具体的なアプローチ方法を紹介します。大腿骨頸部骨折後のリハビリでお悩みの方や、そのご家族の皆さまに役立つ情報をまとめていますので、ぜひ最後までご一読ください。

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大腿骨頸部骨折とは

大腿骨頸部骨折とは、太ももの骨である大腿骨の首にあたる部分が折れてしまう状態を指します。体重を支える大腿骨のなかでも頸部は細いため、外力が加わった際に骨折しやすい特徴があります。

大腿骨頸部は血流が乏しい部位であることから自然治癒しにくく、骨折の種類や状態によっては人工関節への置換手術が行われるケースもあります。

大腿骨頸部骨折は、骨粗鬆症や筋力の低下、バランス感覚の衰えなどの複数の要因によって起こります。いずれも高齢者に多く見られるものなため、必然的に大腿骨頸部骨折になる方の多くは高齢者です。

高齢者が骨折をすると寝たきりになるリスクが高まる場合もあり、日常生活への大きな影響が懸念されるため、転倒予防が重要になります。

大腿骨頸部骨折の主な症状

高齢者に多い大腿骨頸部骨折!リハビリの流れと再発予防のポイントを解説

大腿骨頸部を骨折すると、まずは股関節付近や太ももの付け根に強い痛みが生じ、脚に力が入らなくなるため、立ち上がったり歩いたりが難しくなります。多くの場合、家族が転倒したところを発見して救急車を呼んだり、本人がなんとか電話をかけたりして病院に搬送されます。

一度骨折すると、骨折への不安や痛み、筋力の低下などの影響で歩行が困難になり、さらに動く機会が減少すると、股関節や膝関節の可動性が落ちたりバランス感覚が低下したりする場合があります。

大腿骨頸部骨折の治療法とリハビリ

大腿骨頸部骨折の治療には、骨折の程度や患者さんの全身状態に合わせて「保存療法」と「手術療法」が検討されます。

骨折のずれが小さかったり、年齢や内科疾患の状態など理由から手術に耐えられないと判断されたるケースでは、ギプスや装具を用いて骨折部位を固定し、安静を保つ保存療法が選択されます。

しかし、特別な理由がない場合は、手術療法が一般的です。手術には、骨折した骨を金属の器具で固定する「骨接合術」や、関節を金属製の人工関節に置き換える「人工骨頭置換術」「人工股関節置換術」など、骨折や患者さんの状態に応じてさまざまな方法が用いられます。

手術後のリハビリの進捗は患者さん1人ひとりの身体状態によって異なりますが、いずれのケースでも「早期に適切なリハビリを開始する」ことが、合併症の予防や早期退院につながるため非常に重要になります。

大腿骨頸部骨折後のリハビリの流れ

高齢者に多い大腿骨頸部骨折!リハビリの流れと再発予防のポイントを解説

大腿骨頸部骨折後は、手術や保存療法などの治療と並行してリハビリを行うのが一般的です。
リハビリは大きく分けて、術後すぐの「急性期」、痛みや腫れがある程度落ち着き本格的なリハビリを開始する「回復期」、そして自立した生活や再骨折の予防を目指す「維持期」の3つの段階に分かれます。

各段階で求められるリハビリの目標や取り組み方は異なるため、患者さんの状態や医師の指示に合わせて適切に進めていくことが大切です。

急性期のリハビリ

手術療法を選択した場合には、まず痛みや創部の管理が優先されます。ベッド上での安静が必要なケースもありますが、可能な範囲で拘縮や筋力低下を防ぐためのリハビリに取り組むことが望ましいでしょう。早期離床が許可されれば、立位や歩行訓練を段階的に行い、身体機能の回復をサポートします。

術後早期には、患者さんが自分の脚を思うように動かせないことがあるため、ポジショニングによって患部や全身に無理な負荷がかからないよう配慮します。このように、急性期に適切なケアを受けることで、回復期のリハビリへスムーズに移行しやすくなるメリットが期待できます。

回復期のリハビリ

回復期では、歩行や日常生活動作の改善に向けた本格的なリハビリが始まります。術部の痛みに配慮しながら徐々に荷重をかけ、歩行訓練を行うことで、下肢の筋力維持や運動感覚の回復を図ります。

理学療法士や作業療法士は、患者さんの状態や退院に必要な動作に合わせてトレーニング内容や補助具(杖や歩行器など)を選定し、日常生活動作の自立度を少しずつ高められるよう訓練を進める場合が多いです。また、患者さんの生活環境を聴取し、生活場面に合わせた訓練を行ったり、ご自宅を訪問して住宅改修の提案を行ったりもします。

こうした取り組みは、医師や看護師、介護職など多職種が連携するチーム医療によって、より効果的に進められます。

維持期のリハビリ

維持期では、骨折からの回復をさらに確かなものにすると同時に、再骨折の予防や生活の質(QOL)の向上を目指してリハビリが継続されます。

患者さんによっては、通所リハビリや外来リハビリ、訪問リハビリなどを活用しながら身体機能の改善・維持を図る場合も多く、現在の生活レベルを保つために継続的なリハビリが重要となります。

急性期~維持期で大切なこと

大腿骨頸部骨折後のリハビリは、急性期から維持期まで段階的に取り組むことで、回復を最大限に促進し、再骨折のリスクを軽減するとともに、寝たきり状態への移行を防ぐことが期待できます。

各段階のリハビリ内容は患者さんの状態や治療方針に応じて個別化されます。そのため、医師や理学療法士、作業療法士など多職種のチームと連携しながら、本人の意欲を引き出しつつ無理なく進めていくことが大切です。

リハビリにおける大腿骨頸部骨折のアプローチ

大腿骨頸部骨折からの回復を目指すリハビリでは、手術の有無や体力などを含め、患者さん1人ひとりの状態を総合的に考慮しながら、次のような複数のアプローチを組み合わせて進めていきます。適切な時期に適切な方法を取り入れることで、機能回復が早まるでしょう

可動域訓練

大腿骨頸部骨折による痛みや長期の安静状態が続くと、股関節や膝関節などの可動域が徐々に狭まってしまう場合があります。初期の段階では、セラピストの介助を受けながら、無理のない範囲でゆっくりと関節を動かし、少しずつ可動域を広げていきます。

大腿骨頸部骨折ではとくに股関節の可動域が重要となるため、ベッド上や椅子に座った状態で行う軽いストレッチから始めるケースが多く見られます。

痛みが強い場合は慎重に進める必要がありますが、歩行訓練や筋力強化訓練をより円滑に行うために、筋肉や関節が硬くなる前に適切な可動域を維持・改善しておくことが重要です。

筋力強化訓練

高齢者は安静によって筋力が低下しやすく、下肢だけでなく体幹や上肢を含めた全身の筋力が落ちてしまう場合があります。そこで行われるのが筋力強化訓練です。その目的は、最低限の日常生活動作を自力でこなせるだけの筋力を回復し、再び転倒を起こさないように身体を安定させることです。

訓練の方法としては、寝たままで行う軽い負荷のエクササイズから、ゴムバンドや重錘を使ったトレーニングなどさまざまです。

とくに大腿四頭筋(太ももの前面)や中殿筋(お尻の外側)は歩行の安定に大きく関わるため、重点的に強化することが重要です。さらに、腹筋や背筋などの体幹トレーニングを取り入れることで姿勢が改善され、骨盤の安定にもつながるため、転倒のリスクを一層効果的に減らすことが期待できます。

歩行訓練

骨折によって歩行能力が大幅に低下した方にとって、歩行訓練は大腿骨頸部骨折後のリハビリの中心的な取り組みといえます。

手術後しばらくは痛みや恐怖心の影響で、脚をしっかりと地面につけられないケースも多く、早期に歩行訓練を始めるのが難しい場合も多いでしょう。しかし、医師の判断で荷重が許可された段階から、平行棒での歩行や杖、歩行器などの補助具を使用しながら、荷重訓練や歩行練習を行います。

荷重が困難なケースでは、静止立位での荷重練習から始め、徐々に平行棒内歩行へ移行しながら、体重をのせることに慣れてもらいます。こうした段階的なアプローチをとることで、患者さんの身体機能や自信の回復をサポートできるのです。

まとめ

大腿骨頸部骨折は高齢者の骨折のなかでも頻度が高く、転倒をきっかけに寝たきりになる可能性もあるため、適切な治療とリハビリが重要です。

急性期から回復期、維持期にかけての段階的なアプローチによって、機能回復や再骨折の予防が可能となり、日常生活への早期復帰やQOL向上が期待できます。

医師や理学療法士、作業療法士など多職種のチーム医療で、患者さん1人ひとりの状態に合わせた総合的なサポートが大切になります。

加藤真太郎

加藤真太郎

理学療法士/ダイエットインストラクター/姿勢改善アドバイザー
回復期の病院で8年間勤務し、その後は養成校の教員として働いている。副業として介護・医療分野を中心にライター業、筋トレ関連のブログ運営を行っている。プライベートでは3児の父親であり、日々子育てと仕事に奮闘している。

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