今、理学療法士が起業し地域活動するために必要なこと (1)
公開日:2018.09.24
文:伊東浩樹 理学療法士・ NPO法人 地域医療連繋団体.Needs 代表理事
リハビリテーション専門職と呼ばれる理学療法士は、年々増加傾向にあり、近年では、病院や施設以外でも需要が高まっています。なかでも注目すべきなのが、地域医療への参入です。
私は、福岡県で理学療法士として活動しながら、臨床現場で働いたあと「皆で支え合う地域医療の実現」を目指して、医師や看護師らを含めたメンバーでNPO法人を起業、従事しています。
理学療法士としてのこれからを考える際の参考として、私自身が地域で活動するなかで見えてきた課題や、これからも需要が増えると予想される地域での働き方について、具体的な事例をはさみながら2回に分けてお伝えします。

地域活動をするきっかけ
理学療法士として病院や施設に勤務するとき、患者さんは受傷、発症した後に外来受診や入院となり、その後、症状に合わせてリハビリテーションを実施していくという流れが一般的です。
理学療法士としての役割は果たしているものの、病院勤務時代に複数の患者さんから聞いた言葉がいつも頭の中をよぎっていました。
それは「もっと早く、こんな(医療的な)知識があれば、自分でも対処できたかもしれないね」というもの。リハビリテーションを繰り返すなか、理学療法士を含む今の医療資格者はこのまま病院や施設に勤務して完結する状況に満足していてよいのか、もっと「自分ごととして物事をとらえ」、地域に出て、広く医療知識の共有をするべきではないのかという気持ちが強くなっていったのです。
地域で活動するにあたって
しかし実際に、地域に出て何ができるのか、何をすべきなのかは悩みどころです。
理学療法士として地域医療に関する仕事をしようとした場合、地域に根付いたデイサービスセンターに勤務することや、訪問リハビリテーションが行える病院や施設に勤務すること、自身で健康予防教室を実施することなどが思いつくかもしれません。すでに多くの理学療法士が実践している地域活動であり、状況に合わせて密接に住民と関わることは可能でしょう。
しかし、さらに先を見た場合、これから改めて地域医療に関わっていこうとするのであれば、理学療法士として、その地域性を知ることが大切です。他職種の人たちを含めて、これまでその地域において、どんなことが実施されているのか、さらに自分たちはどんな風に協働できるのかを正確に把握しなければいけません。自分ひとりで何かを作り上げるのではなく、すでに地域で活動している同職種や他職種、住民といかに連携するかが重要となります。
今後、地域医療が必要となる理由
加えて、社会全体としてなぜ、地域医療が必要とされているかを理解しておくことも大切です。内閣府が発表した「平成28年版高齢社会白書」によると、高齢者が最期を迎えたい場所は「自宅」が54.6%と最も多くなっています。
しかし、実際に人が最期を迎える場所で一番多いのは「病院」の73.9%であり、「自宅」はたったの13%でしかありません(厚生労働省発表「平成28年人口動態統計の概況」より)。
高齢者の多くは、自身の暮らす地域で最期を迎えたいと願っており、地域医療の充実は政府が考える施策にとどまらず、地域住民全体の願いともいえるでしょう。
こうした現状を把握しておくことで、健康維持、向上を得意分野とする理学療法士が地域活動において何を求められるのかが見えてくるのではないでしょうか?
次回は、自身の活動内容から、実際に既存の地域活動とどのように結びつけて働いているのか、実例を踏まえてお伝えします。
【参考URL】
他の記事も読む
- 勉強についていけずに、くじけそうになるときに大切なこと ~養成校の現役教員が真心アドバイス~
- 私の働き方~支援者として、管理者として~
- セラピストが理解しておきたい「バーセルインデックス」とは?特徴や評価項目について解説
- BBS(バーグバランススケール)の具体的な評価方法について徹底解説
- 作業療法士に英語力は必要?英語が役立つ具体的なシーンや例文を解説
- 理学療法士としてキャリアアップするために必要なこととは?|役立つ資格やスキルアップとの違い
- 生活(自立)訓練事業所で働くOTの仕事 生活に密着した訓練ができる!
- 引っ込み事案な人が作業療法士になるまで 現役教員が2つの方法を伝授
- 個別機能訓練計画書の目標設定はどうする?具体例を交えながら解説!
- 【副業OK?】言語聴覚士(ST)におすすめの副業|稼ぐ方法と注意点を解説
- 地域リハビリテーションって何? 地域で生き生きと暮らすために
- リハビリの第一歩は、信頼関係を築くこと!
- 令和4年度診療報酬改定によるリハビリへの影響をわかりやすく解説
- 【需要ない?】現役言語聴覚士による仕事の本音|転職需要や向いている人について解説
- 理学療法士とスポーツトレーナーは何が違う?それぞれの特徴について解説
- 経験者から学ぶキャリアアップのための転職
- 職場に管理栄養士が1人の場合の働き方|メリットやデメリットも解説
- 【理学療法士実習生向け】「統合と解釈」と「考察」の違いと書き方について
- 理学療法士の腕が試される?歩行分析のポイントや歩行訓練の種類について解説
- 作業療法士が治療で「折り紙」を用いる目的とは