夏の屋外歩行訓練はNG? やるべきリハビリを安全に進めるために
公開日:2015.07.30 更新日:2015.08.07
実用歩行を獲得するために行いたい屋外歩行訓練。とはいえ、夏の日差しのなかで、本当に実施すべきか悩んでしまうことはありませんか? 屋外歩行訓練は、季節を問わず必要となるリハビリのひとつです。夏に起こりやすいリスクをしっかり理解しながら取り組みましょう。
屋外歩行訓練の重要性
病院や介護施設内はバリアフリーに整えられており、安全を重視するうえでは最適な環境です。患者さんはそうした屋内での歩行練習に慣れてきた頃、新しい環境として屋外歩行に挑戦することになります。
屋内のフラットな環境で訓練を繰り返すうちに、屋外で歩行する感覚が鈍くなってしまう患者さんも少なくありません。一見平らに見える屋外のアスファルトでも、細かい凹凸やわずかな傾斜があります。バランス能力や筋力が低下している患者さんにとっては大きな障害であり、足先がひっかかって思わぬつまづきにつながることも。こうしたわずかな段差は屋外ならではのもの。実地での訓練ほど有効なものはありません。
また、実際に屋外歩行を行うことで、新たな課題が見つかることもあります。歩行スピードが遅すぎて横断歩道を渡れなかったり、グレーチングに杖先がはまって移動に支障が出たりと、今後のリハビリプランの見直しが必要な場合もあるでしょう。
一方、患者さんにとっては、外の環境に触れることが大きな刺激につながります。退院後の生活を身近に感じられれば、リハビリへのやる気も高まり、生きる活力へとつながるでしょう。日常生活に戻る患者さんにとって、屋外歩行訓練がどれほど重要なリハビリか、改めて理解する必要があります。
夏の屋外歩行訓練にかかるリスクとは
夏の屋外歩行訓練は、さまざまなリスクが考えられます。屋外を歩行することによる精神的緊張に加えて、熱中症や脱水など、体調が悪くなる可能性も。さらに、屋外ならではの刺激として、日光がまぶしかったり、向かい風や追い風が強かったりと、立っているだけでも大変な状況になることも考えられます。歩行訓練の前に、患者さんがどれだけ環境に対応できるかを評価するのも大切な仕事です。
多くの問題を前にして、ついつい「涼しい屋内で不整地を設定すればよいのでは?」と考えがちですが、療法士や施設の都合で屋外歩行という貴重な機会を失うわけにはいきません。屋外の環境に慣れてこそ、日常生活に戻るための訓練といえるからです。実際の屋外環境において、患者さん自身でそうした気づきを得てもらうこともリハビリの一部ではないでしょうか。
夏だからこそ、貴重な屋外歩行
前述のとおり「夏だから屋外歩行訓練ができない」と判断するのは早計です。屋外歩行を必要とする時期が、たまたま夏だったというだけのこと。患者さんにとっては、必要な訓練であるということを忘れないようにしましょう。
ただし夏場の屋外歩行には、より慎重な対応が求められます。患者さんの体調や、外の環境、実施時刻などをしっかりチェックしましょう。場合によっては中断し、リスクを回避する判断力も必要です。
また、なるべく日陰の場所を歩行するだけでなく、施設側で屋外歩行訓練用に帽子を用意したり、時間が許せば近くのお店まで歩いて涼をとったりと、柔軟な工夫を取り入れます。
患者さんにとって、屋外歩行に付き添う療法士は不安な屋外での訓練を支えてくれる存在です。「病院で外を歩いたときにね、リハビリの先生が帽子をかぶせてくれたのよ」「リハビリの先生が、横断歩道を渡る練習してくれたのよ」と、当たり前のことでも患者さんの心を打つ気遣いとして喜んでもらえるでしょう。
歩行しながら励ましの言葉をかけ、この訓練が今後の生活にどう影響するのかを話すことで、さらなるモチベーションアップにもなります。そのうちに、患者さん自らが目標設定を掲げるという思わぬ収穫も。このような屋外歩行訓練なら、患者さんにとってもステキな夏の思い出になることでしょう。
夏の屋外歩行を楽しもう
社会復帰や在宅復帰するための屋外歩行訓練に、季節は関係ありません。特に夏の暑さと日差しはリスクの高いものですが、そうした環境要因も含め、屋外歩行を行う価値があります。患者さんの体調と相談しながら、楽しめる訓練を目指しましょう。それこそが「活動」「参加」に焦点をあてたリハビリの推進のひとつといえるのではないでしょうか。
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