オンライン理学療法の注意点は?リハビリの意義と対面との違い
公開日:2021.02.02 更新日:2021.03.31
文:伊東浩樹 理学療法士
NPO法人 地域医療連繋団体.Needs 代表理事
社会福祉法人もやい聖友会 地域医療連携室 室長
例年では冬場になるとインフルエンザなどの感染症が流行し、医療機関には多くの患者さんが集まります。
しかし、2020年は新型コロナウイルスの感染リスクを不安視する患者さんも多く医療機関を利用する人は減少傾向にあります。
そうしたなか誰もが医療を安心して受けられるようにと普及し始めたのが「オンライン診療」です。オンライン診療は便利なものですが、理学療法士の立場としては複雑なものがあります。
今回は「理学療法士が配慮すべきオンライン診療のあり方」、そして「直接リハビリテーションをする意義」について考えます。
オンライン診療とは?日本における歴史と変化
オンライン診療とは、医療機関に行かず、在宅でインターネットを経由したビデオや音声通話を通して診察を行う仕組みです。診断結果、薬の処方箋発行も含めて全てオンラインで完結します。
オンライン診療の始まりは、1997年にさかのぼります。その後、2018年4月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針(ガイドライン)」が発表されました。
さらに、2020年4月には新型コロナウイルス感染症の影響を受け、細かい内容が見直されています。改めて、オンライン診療の詳細について確認してみましょう。
オンライン診療の変化
2018年の指針により、それまで「初診については原則対面で行うべき」とされていたものが、「医師の判断のもと、初診であってもオンライン診療が許容される」ことになりました。ただし、この場合も、オンライン診療後に対面診療を行うことが原則でした。
しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりオンライン診療の必要度が増したことで、厚生労働省はオンラインを活用した医療提供体制を強化。
初診を含め、現在は電話や情報通信機器のみでの診療も可能となっています。ただし、あくまでも「時限的・特例的な対応」とされているため、今後の状況によって変更される可能性があります。
オンライン診療の料金体制
オンライン診療には保険適用と自由診療の2つの料金体制が存在します。
オンライン診療で自己負担3割(年齢により1〜2割となる)の保険適用となる疾患は限られており、内科、小児科、在宅診療などの一部にて診療報酬点数が認められています。
保険適用外の疾患に関しては自由診療となるため、患者さんの必要に応じて実施し10割負担で行います。
個人確認の方法
オンライン診療を実施するにあたり、特に初診の場合には、明確に個人を特定する必要があります。
厚生労働省は患者さんが医師に対して心身の状態に関する情報を伝えるにあたり、「医師は医師であることを、患者さんは患者さん本人であることを相手側に示す必要がある」と指示しています。
オンライン診療においても同様に、姓名をしっかりと名乗ってもらうなど、直接の対面診療と同様に行うことが望ましいでしょう。状況に応じて患者さんには、保険証やマイナンバーカード、運転免許証等を用意してもらうことになります。
オンライン診療における2つのメリット
メリットとして代表的なものは、以下の2点です。
1.感染のリスクが減る
上述したように、患者さんが抱える感染への不安を回避しながら、診察ができるのがオンライン診療の最も大きなメリットです。診察側、患者さん側双方の感染リスクが軽減されます。
2.気軽に医療提供ができる
医療を受ける側も医療を提供する側も、医療提供のハードルが下がる点もメリットです。患者さんにとっては移動の負担や感染リスクが少なく、診察側はオンライン上で患者さんの待ち時間などを調整できるため、双方に負担の少ない医療提供が可能となります。
支払いにおいてもカード決済が利用でき、薬を郵送で届けることも可能です。こういった仕組みによって、よりスムーズな対応が可能になるのも利点でしょう。
オンライン診療における2つのデメリット
一方でオンライン診療にはデメリットも存在します。メリットと同時に考えておきたいのが、以下のような課題点です。
1.オンライン診療で対応できない疾患もある
現状、オンライン診療で対応できる保険診療には制限があります。
触診が欠かせない疾患や、機器による検査が必要なケースなどは、オンラインのみで判断することができません。
2.対応する機器がないと、オンライン診療が実施できない
オンライン診療を実施する際によく使用されるのがインターネットにつながる通話機器です。施設側が設備を整えたとしても、そうした機器類になじみのない高齢者や、使い方がわからない患者さんとオンライン診療を行うのは困難です。
現状を受け入れつつ理学療法士としての誇りを保ち続けよう
オンライン診療は、自宅にいながら他者と接することなく医療を受けられるというメリットがあります。しかし、デメリットにも挙げたように、直接的な検査や治療が必要なケースがあることも事実です。
例えば、リハビリテーションもそのひとつ。自宅でのプログラムを患者さんに指導して実施してもらうリハビリテーションであれば、オンラインを利用することが可能かもしれません。
しかし、理学療法士を含むセラピストの本質は、直接筋肉や関節の動きを診て、触れて、療法を選択し、実施するところにあります。オンライン診療にはメリットも多いものですが、身体的アプローチに関してはやはり直接的な介入が必要になるでしょう。
新型コロナウイルス感染症はまだまだ収束の見込みがなく、感染リスクも依然、高いままの状況です。そうしたなかでも、日々の手指衛生やマスクの着用といった予防策を行いながら必要な人に医療提供できる仕組みを整えるのがセラピストの役割です。
自分と周囲を守るためにしっかり予防に取り組みつつ、必要な人に必要なリハビリテーションを実施していける方法を考えなければいけません。もどかしい状況ではありますが、自分の資格に誇りを持ちながら、どんな情勢になっても困りごとを抱えた人たちに対応する方法を、理学療法士の立場から考えていきたいものです。
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