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【管理栄養士執筆】便秘解消には甘酒がおすすめ!高齢者の薬に頼らない食事対策

公開日:2021.05.17 更新日:2021.08.30

便秘には甘酒が効く

文:篠塚 明日香
(管理栄養士・分子栄養学カウンセラー)

高齢者の体の悩みでとく多いのが便秘です。加齢とともに、運動量、食事量、水分摂取量などが減ることで、便秘になりやすい条件が増えてくるのは仕方ないことかもしれません。しかし、対策を講じずに便秘の症状を放置してしまうと、免疫力や認知機能の低下を引き起こすこともあるので注意が必要です。

また、「便秘薬に頼って排便をうながすことで、逆に下痢になってしまって辛い」という悩みもよく聞かれます。

今回は便秘を解消して、自然な排便を促す効果がある「甘酒の活用方法」を紹介しましょう。

便秘の定義と便秘がもたらすさまざまな悪影響

そもそも便秘というものがどんな状態かというと、日本内科学会では「3日以上排便がない状態」、または「毎日あってもすっきりしない状態」と定義しています。感じ方に個人差はあるのですが、本来排泄されるべき便が、腸内に長時間停滞していることを表しています。

排便とは、人間にとっての最大の解毒作業です。便が体内に長時間停滞してしまうと、排泄されるはずだった有害物質(化学物質や有害ミネラルなど)によって腸が炎症を起こしたり、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなったりします。

腸には体のなかに入っていいものと排泄するべきものを選択するバリア機能や、免疫細胞が集まっている場所があります。そのため、腸に炎症などのダメージがあれば、免疫力も低下し、細菌やウイルスが侵入しやすくなってしまうのです。

また、便が体内に停滞することは栄養吸収を邪魔するので、低栄養を起こして認知機能の低下につながることもあります。

脳は、ぶどう糖やケトン体(脂質から体内合成する物質)をエネルギー源として使うことでよく働きますが、低栄養によってビタミンやミネラルが不足していると、ぶどう糖を脳細胞に取り込んだり、ケトン体をつくったりする能力が低下したりします。

これが、認知症の原因のひとつともいわれています。

このように、慢性化した便秘はあらゆる病気の発生源となることを知っておきましょう。

高齢者に多い弛緩性便秘、原因は腸の働きの低下

便秘には甘酒が効く
便秘にもいろいろな種類がありますが、高齢者にとくに多いのが「弛緩性便秘」といって腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)の低下が原因で起こるものです。本来、腸自らがグニャグニャと動くことで食べ物と消化液を混ぜたり、便を送り出したりしているのですが、蠕動運動の力が弱まることで便秘を起こしやすくなります。

蠕動運動は、リラックスしているときに働く副交感神経が担っていますが、40代以降は誰でも副交感神経の働きが低下傾向になっていくことが分かっています。

その理由ははっきりしていないのですが、血管や筋肉の柔軟性が低下することで呼吸が浅くなったり、血圧が上昇しやすくなったりして、副交感神経が働きにくくなると考えられています。これらのことから、加齢とともに便秘になりやすくなるという仕組みがあります。

だからといって、「加齢が原因だから仕方ない」とあきらめる必要はありません。このタイプの便秘は、食事をはじめとした生活習慣の改善がとても有効なのです。規則正しい睡眠や食事で自律神経を整えることができますし、食べ物には蠕動運動を活発にする力を持つものも多く存在します。

腸内環境を良好にして善玉菌を増やすことでも便秘を改善する手助けとなりますので、食事のちょっとした工夫はとても大切なことですが、あまり手の込んだことをするのは大変です。

そこで、高齢者や介護者でも簡単に取り入れられる「便秘改善に効果抜群の甘酒」について紹介したいと思います。

甘酒のすごいパワーを利用しよう

腸の蠕動運動を促進して善玉菌を増やすこと——。これが、高齢者の弛緩性便秘の食事対策です。腸内環境の重要性は近年広く認知されており、乳酸菌やビフィズス菌のサプリメントや飲料も手軽に買えるようになっています。そういったものを利用するのはいいことですが、実はそれだけでは足りません。

便秘の改善には「菌」+「エサ」を摂取することがポイントです。例えばビフィズス菌は、エサとなる食物繊維やオリゴ糖を食べることで、腸の炎症を抑えてバリア機能を高める効果のある酢酸を産生します。ですから、ビフィズス菌だけ足しても、食物繊維がとれていなかったらうまくいかないということです。

また、食物繊維そのものに腸の蠕動運動を活性化させる働きがあります。筋力が弱まって便を押し出す力が低下している高齢者は、食物繊維をしっかりととって蠕動運動を助けたいところです。

そして、このふたつ「菌」+「エサ」が同時にとれる食材が「甘酒」なのです。こうじ菌+食物繊維がすでに含まれている甘酒は、腸の蠕動運動を促進する、善玉菌を増やす、という効果が期待できます。

甘酒には酒粕由来のものと、米麹由来のものがありますが、使いやすくておすすめなのはアルコールを含まない米麴の甘酒です。甘酒は発酵食品のひとつですが、奈良時代から飲まれていた歴史があります。

江戸時代には感染症や体力減退で死亡率が高くなる夏場に飲む習慣があったことからも、栄養価が高く免疫力を助けるものであったということがうかがえます。

以下に、甘酒の有効成分をいくつか挙げてみます。

①こうじ菌
三大栄養素や食物繊維を分解する酵素を含み消化を助ける

②ビタミンB群
エネルギー産生や脳機能維持に必須のビタミン

③必須アミノ酸
体を構成する成分やホルモンの材料となる

④オリゴ糖と食物繊維
腸内細菌のエサとなり善玉菌を増やし、腸の蠕動運動をうながす

このように甘酒には便秘に効果的な栄養素や成分がたっぷり入っているのです。

便秘に効果のある甘酒の選び方とおすすめの飲み方

甘酒の活用方法はたくさんあり、飲むだけでなく料理にも使うことができます。肉の漬け込みに使えば酵素の働きで肉が柔らかくなり高齢者の消化の手助けをしてくれます。また、煮物、厚焼き玉子、スープの調味料としてつかえば旨味が出ますし、ドレッシング、野菜ディップに砂糖の代用としても美味しく使うことができます。

しかしながら、週に1回甘酒を摂取したからといって便秘が改善できるわけではありません。慢性化した頑固な便秘を改善するためには、100~200mlの量を毎日コツコツと継続して飲むことです。

そして、市販品の甘酒を選ぶときは材料を必ずチェックしましょう。本来は、米と米麹だけで甘酒をつくることができますので、それ以外に余計な添加物が入っていないことが理想です。

白米でなく玄米でつくったタイプはさらに栄養価が高くなりますし、濃縮タイプは甘みが濃いので砂糖の代用としても便利です。

さらに、自宅で手づくり甘酒がつくれると最高でしょう。

ヨーグルトメーカーがあれば、炊いたご飯と麹を入れて数時間保温するだけで、簡単にたくさんつくることができます。市販の甘酒は殺菌処理で加熱しているものが多く、その時点でこうじ菌は死菌となりせっかくの酵素が活性を失っています。

加熱されていても腸内環境改善には役立ちますが、酵素のパワーを最大限に活かしたいのなら、手づくりがベストです。

甘酒を手づくりしたら、より飲みやすく、より便秘改善に効果があるオリジナルドリンクをつくってみましょう。

菌(こうじ菌)+エサ(オリゴ糖)たっぷり! 甘酒の簡単ドリンク

菌(こうじ菌)+エサ(オリゴ糖)たっぷり! 甘酒の簡単ドリンク

写真/櫻井健司

——材料(2人分)
豆乳 150ml
甘酒 150ml
はちみつ 大さじ1杯

鍋に材料を入れて弱火にかけ、ほんのり温めて完成です。豆乳とはちみつもオリゴ糖が豊富に含まれていますので、便秘改善に最適なドリンクといえます。とくに、腸内環境改善に効果が高い朝の摂取がいいでしょう。

スムーズな排便は健康だけでなく、生活のQOLにも影響します。甘酒習慣をぜひ取り入れてください。

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篠塚明日香
管理栄養士・分子栄養学カウンセラー
1977年、茨城県に生まれる。管理栄養士、分子栄養学カウンセラー。東京家政大学短期学部栄養科卒業後、老人介護保健施設での給食管理の実務を経て管理栄養士となる。現在は、フリーランスとして分子栄養学のセミナー開催やエステサロンでのダイエット指導、企業商品の考案などにも携わる。
所属:合同会社スリップストリーム
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