患者さんの異常をカルテから読み解く! リハビリ前に見ておきたい検査値の読み方
公開日:2016.08.01 更新日:2022.02.07
患者さんの状態を把握するためにカルテを見たものの、各種検査データや薬、点滴など、あまりの情報の多さに、何を確認すればいいか途方に暮れたことはありませんか? 特に血液データは項目が多く、苦手意識を持っている人も多いのではないでしょうか。患者さんのより正確な評価のために、リハビリで優先して確認しておきたい検査値について紹介します。
検査値を読む必要性について
患者さんを評価する際、視診や触診など、外側からの評価だけでは、症状の原因になかなかたどりつけません。そんなとき、血液データがあれば、評価の大きな助けになります。
例えば、母趾(ぼし)に腫れがある患者さんがいたとして、尿酸値が基準よりも高ければ、痛風の可能性が考えられます。また、眼球に黄疸(おうだん)が見られ、総ビリルビンの数値が高ければ、肝疾患や胆道系疾患を疑う……というように、多くの情報を得ることができます。
また、血液データの確認はリスク管理の観点からも重要です。血小板数が基準を下回る場合には、止血に時間がかかることが予測できますし、カリウムの濃度が高ければ、不整脈を起こしやすい状態であることが事前に把握できます。このように血液データをあらかじめ確認することで、評価の妥当性向上や、患者さんのリハビリ中におけるリスクを減らすことができるのです。
リハビリと栄養状態
リハビリで行うことの多い筋力増強トレーニングですが、実施する前提として、栄養状態の確認は必要不可欠です。なぜなら、低栄養状態で運動負荷を上げれば、逆に筋力の低下を招きかねないからです。総蛋白(たんぱく)とアルブミンの数値は合わせて確認し、正常値を下回るようであれば栄養不足を考えましょう。
逆に高値であれば、体内の水分量低下のため、血中濃度が高い可能性があり、脱水症が疑われます。低栄養時の対策としては、まずは患者さんがきちんと食事を摂取できているかを調べます。もしできていなければ、なぜ摂取できないのかまで考えてみましょう。嚥下機能が低下しているのか、患者さんの嗜好(しこう)による問題なのか、そもそも食欲がないのかなど、原因はいくつか考えられます。また、食事をきちんと摂れているにもかかわらず低栄養状態なのであれば、提供する食事量の増加を検討する必要があります。看護師や管理栄養士と連携を取りながら、栄養状態の改善に努めましょう。
確認しておきたい数値
リハビリ前に確認しておきたい数値として、炎症反応の指標であるCRP(C反応性蛋白)とWBC(白血球数)があります。どちらも基準値を超える場合、体内の炎症が疑われるものです。CRPは現在の身体の状態が数値に反映されるまでに1~2日かかることや、肝障害やステロイド治療中の患者さんは数値が実際より上昇しにくくなる傾向があるため、注意が必要です。
WBCは数値に反映されるまでの時間差が少ないという利点がありますが、強い炎症では逆に数値が下がることもあり、CRPとWBCを関連づけて評価する必要があります。その他、ヘモグロビン、ヘマトクリット、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球血色素量)、MCHC(平均赤血球血色素濃度)の数値が基準を下回る場合は、リハビリの阻害因子である貧血が疑われます。立位や歩行時にめまいによる転倒のリスクが考えられるため、十分注意してリハビリを進めましょう。
検査値から読み取れること
血液データは、患者さんを評価するうえで大きな情報源であり、リハビリ中のリスク管理についても、重要な情報を教えてくれます。効果的で安全なリハビリを提供するためにも、検査値を確認し、効果的に活用していきたいですね。
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