作業療法士は文系でもなれるか?受験に必要なこと、仕事で求められること
公開日:2022.06.13 更新日:2023.09.11
文:田口 昇平
(作業療法士、福祉住環境コーディネーター2級)
「作業療法士は文系でもなれる?」 文系から作業療法士を目指すとき、理系でなくてもよいのかどうか、疑問を感じることがあるでしょう。作業療法士の受験資格を取得するためには、医療系大学・専門学校の卒業が必須です。
そのため、作業療法士に理系のイメージを持たれる人も多いことでしょう。筆者は、文系に特化した高校を卒業後、作業療法学科に進学しました。今回は、文系出身の作業療法士として、自身の受験や学生生活・仕事の経験をもとに、「作業療法士は文系でもなれるのか?」の疑問にお答えします。
作業療法士は、文系からでも目指せる
作業療法士として患者さんのリハビリをおこなうには、人体のつくりや動きの仕組みといった「生物」、「物理」など、理系の知識が求められます。そうした点で基礎知識が必要であることを考えると、作業療法士を目指すうえで、理系のほうが有利といえるでしょう。
しかし、そうした理系の知識は、作業療法士の養成校で基礎から学びます。「解剖学」「生理学」「運動学」というカリキュラムがあり、具体例を挙げると、筋肉の名前や働き、運動時のエネルギー代謝、てこの原理などを実践的に学ぶことになります。養成校に進学し、人体のつくりや動きの仕組みをしっかりと理解できれば、患者さんに効果的なリハビリがおこなえるようになるでしょう。
養成校で、作業療法士に求められる知識を一から学ぶ気持ちがあれば、文系でしか学んだ経験がなくても、問題なく作業療法士を目指せます。
作業療法学科は、文系の授業もある
作業療法学科では、理系科目のほかに文系の学問も学びます。その代表的なものが、心理学です。心理学は、人の心を理解し、サポートするための知識・技術を研究する学問であり、精神的な病気を治療したり、問題を解決したりする作業療法士にとって、患者さんの心の状態を理解するための基礎となる学問でもあります。
作業療法をおこなうには、患者さんの心を理解することが不可欠です。というのも、同じ病気や障がいを持った患者さんでも、趣味や嗜好・人生経験などが異なるため、作業療法でおこなう活動内容も大きく変わってくるからです。そして、患者さんの心を理解するには、まずは相手の話をしっかりと聞くことが大切です。また、患者さんの抱える悩み・問題を解決するには、カウンセリングなど、本人の思いを引き出す技術も必要になります。
このように、身体面だけでなく、精神面もサポートできるリハビリ専門職を育成するために、文系の学問もカリキュラムに組み込まれているのが、作業療法学科の特徴です。
国公立大学・私立大学への進学は、理系のほうが有利
作業療法士の養成校には、国公立・私立大学、専門学校があります。このなかでも、国公立・私立大学は、理系のほうが受験に有利です。なぜなら、ほとんどの大学は、作業療法学科の入学試験で、数学や理科を必須受験科目としているからです。
文系科目だけで作業療法学科のある大学入試にチャレンジしようとしても、そもそも受験できる学校が少ないのが現状です。
実は、筆者自身も、主に英語・数学ⅠA・生物で大学入試に臨みましたが、遠方まで試験を受けにいったり、苦手な数学の勉強に嫌気がさしたりと、理系科目での受験には苦労したことを覚えています。文系の人が、理系科目のある国公立・私立大学を受験することは可能ですが、試験に合格するには、入試に向けてしっかりとした準備が必要です。
理系科目に自信がないなら、専門学校のほうが受験しやすい
一方で、専門学校のなかには、文系科目だけで受験できるところも少なくありません。専門学校は、倫理・教育学といった一般教養のカリキュラムが少ないものの、大学と同じように、作業療法士に必要な知識・技術を学ぶことができます。
専門学校は、大学に比べて、学内や病院・介護施設での実習に力を入れているところも多いため、現場経験豊富な教員や実習指導者からリハビリの実技をしっかり学べるのが利点です。また、専門学校によっては、作業療法学科の夜間部が設置されています。昼間はアルバイトや正社員として一般企業で働き、夜間は養成校でリハビリの勉強をするといったチャレンジも可能です。学業と仕事を両立しながら、作業療法士を目指しやすいのも専門学校の魅力といえるでしょう。
入試に向けて数学や理科に自信がないという方は、自身が得意とする文系科目で受験しやすい専門学校を選んでみてはいかがでしょうか。
「困っている人の力になりたい」気持ちがもっとも大切
理系科目を選択していると、希望校の選択肢が広がり受験に有利になることもありますが、文系からであっても養成校でしっかり学べるため問題はありません。
作業療法士として働くには、「困っている人の力になりたい」という気持ちがもっとも大切です。そうした気持ちがあれば、文系理系を問わず、作業療法士を目指すことができます。
作業療法士の仕事は、教科書では学べない知識や技術を必要とするケースがほとんどです。目の前にいる患者さんの気持ちに、どれだけ寄り添えるかが重要なポイント。困っている人を思いやる気持ちがあれば、患者さんの生活をしっかりサポートできる作業療法士になれるでしょう。

田口 昇平
作業療法士/福祉住環境コーディネーター2級
2008年に作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や特別養護老人ホームなどの施設で医療や介護業務に従事。2018年より、フリーライターに転身。医療介護職の働き方や働きやすい労働環境づくりなど、幅広いテーマで執筆。心理学・脳科学分野の書籍を愛読し、学んだ内容をブログやSNSで情報発信している。
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