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言語聴覚士による直接嚥下訓練 評価指標のポイントは?

公開日:2022.08.31

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文:近藤 晴彦
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長

本記事の概要

言語聴覚士の臨床では、摂食嚥下障害の患者さんにお会いすることが多くあります。
摂食嚥下障害の訓練は、直接飲食物を用いて訓練をおこなう「直接嚥下訓練」と、飲食物を用いないでおこなう「間接嚥下訓練」の大きく2つに分類されます。言語聴覚士の日常臨床では、直接嚥下訓練を実施することが少なくありません。そこで今回は、摂食嚥下障害における直接嚥下訓練を取り上げ、評価指標について解説していきます。

 

《問題》嚥下障害の直接訓練(経口摂取訓練)における効果指標でないのはどれか

【言語聴覚士】第21回 85問
嚥下障害の直接訓練(経口摂取訓練)における効果指標でないのはどれか。

<選択肢>

  1. 1. 食物形態
  2. 2. 経口摂取量
  3. 3. 食後の吃逆
  4. 4. 食事中のむせ
  5. 5. 食事の所要時間

解答と解説

正解:3

直接嚥下訓練では、最大限に誤嚥の防止をおこない、安全かつ適切に経口摂取ができているか評価しながら訓練を実施します。そのため、誤嚥の兆候が見られないか、体位や姿勢、食形態や食器の工夫などの代償手段が有効であるかなどを評価しながら進めていきます。 

今回の設問の中では、1.2.4.5はどれも直接嚥下訓練における重要な効果指標と考えられていますが、3.食後の吃逆(しゃっくり)は、直接的な誤嚥の兆候とは考えにくいものです。しかし、食後の吃逆からは、逆流性食道炎などの症状が疑われることがあるため、医師や看護師への報告や相談をおこなうことが重要です。

実務での活かし方

(1)直接嚥下訓練の目的
直接嚥下訓練の目的には大きく、残存能力を有効に活用する「代償的摂取法」、繰り返し用いることにより損なわれた機能を改善する「機能回復訓練」という2つの側面があります。
残存能力を有効に活用する代償的摂取法には、姿勢の調整や食物形態の設定があります。
繰り返し用いることにより損なわれた機能を改善する機能回復訓練には、各種訓練手技の選択、食具・補綴物の選択があります。
直接嚥下訓練では、代償手段が適切・有効かどうか、訓練効果が見られるかどうか、といった視点から介入していくことになります。

(2)直接嚥下訓練の評価指標
それでは、実際の臨床ではどのような評価指標で直接嚥下訓練をおこなっていくのでしょうか。
直接嚥下訓練の評価指標として、誤嚥の兆候がなく、安全な摂取ができているか評価するものが挙げられます。具体的には、食事中や食後のむせ、咳、声質の変化、痰の量の変化などを観察することが該当します。
また、先ほど直接嚥下訓練の目的には2つの側面があることを解説しましたが、このような、代償手段が有効であるのか、機能の改善が見られているのかといった指標も重要な評価になります。
臨床においては、これらの評価について、食事時間、摂取量、一口量、ペース、疲労、口からのこぼれ、咀嚼などから見ていきます。

(3)臨床におけるポイント
直接嚥下訓練における評価指標について解説してきましたが、ここで強調しておきたいことは、現在の摂食嚥下リハビリテーションでは、VF検査(嚥下造影検査)やVE検査(嚥下内視鏡検査)がゴールデンスタンダードになっているということです。直接嚥下訓練の開始時には、このような画像検査を用いて直接嚥下訓練の安全性や有効性を評価し、適応について判断したうえで実施することが極めて重要です。そのため、実際の臨床においては医師を含め看護師、理学療法士、作業療法士などの関連職種との連携が欠かせません。

まとめ

直接嚥下訓練における評価指標について解説しました。直接嚥下訓練では、誤嚥を防止しながら、安全かつ適切に経口摂取ができているか評価することが重要な指標になります。そのため、実際の言語聴覚士の臨床では、代償的摂取法が有効であるのか、機能の改善が見られているのかといった視点から評価し、直接嚥下訓練を実施します。 
また、直接嚥下訓練の開始時には、VF検査などで直接嚥下訓練の安全性について評価することが極めて重要であるため、医師をはじめとした、関連職種の連携が重要です。

[出典・参照]
才藤栄一 植田耕一郎.摂食嚥下リハビリテーション 第3版.医歯薬出版株式会
社,2016
聖隷嚥下チーム.嚥下障害ポケットマニュアル 第3版. 医歯薬出版株式会
社,2011

近藤 晴彦

近藤 晴彦(こんどう はるひこ)

東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
国際医療福祉大学大学院 修士課程修了。
回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。
東京都言語聴覚士会ロゴ 東京都言語聴覚士会
http://st-toshikai.org/
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。

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