筋膜リリースとは?筋膜ローラーの正しい使い方から効果を高める方法を解説
公開日:2024.02.09
文:加藤真太郎(理学療法士)
筋膜リリースは筋膜を解きほぐすことをいいます。この筋膜リリースを行うと、肩こりや腰痛の改善が期待できるのです。しかし、どのように筋膜リリースを行えばいいのかを理解できている方は少ないと思います。
そこで本記事では、筋膜リリースがどのようなものなのか、筋膜ローラー(筋膜リリースを行う道具)の正しい使い方と、より効果的な方法などをわかりやすく解説します。最後までご一読いただければ、きっと正しい筋膜リリースのやり方がわかると思います。
筋膜リリースとは?
筋膜リリースとは、筋膜と呼ばれている組織が何かしらの原因によって癒着してしまっているのを解きほぐすことをいいます。
筋膜は筋肉のまわりだけではなく、血管や神経、内臓など、頭から手足の先まで、身体のありとあらゆる組織を包み込んでいます。また、それぞれの組織が、適切な場所に位置するように支えています。
不良姿勢で長時間座っていたり、偏った姿勢で作業を続けたりすると、筋肉と一緒に筋膜も引き伸ばされます。筋膜は引き伸ばされても、元の形に戻ることができる性質がありますが、長時間の不良姿勢が続くと自力で元の形に戻ることが困難になる場合があります。
筋膜が元の形に戻ることができず、癒着が生じて、肩こりや腰痛などの身体の不調につながっている場合があるのです。このような癒着を解きほぐすのが「筋膜リリース」で、筋膜リリースを行うことで、筋肉の柔軟性や関節の可動性の改善が期待できます。
筋膜リリースを行うメリット
筋膜リリースを行うメリットは次の5つです。
・姿勢改善
・パフォーマンスの向上
・肩こりの改善
・腰痛の改善
それぞれについて解説します。ただし、筋膜リリースを行うだけですべてが改善するわけではありません。症状がひどい場合は、医療機関の受診を検討してみてください。
身体の柔軟性改善
身体のあらゆる組織のまわりを包んでいる筋膜が癒着すると、組織間の滑走性が低下するため柔軟性が低下します。筋膜の癒着を解きほぐすことで、身体の柔軟性向上が期待できます。
姿勢改善
筋膜リリースにより、身体の柔軟性や関節の可動性が向上し、姿勢改善につながります。
姿勢改善を目的とする場合は、筋膜リリースだけではなく、姿勢を保持するために必要な筋肉の筋力強化も一緒に行うといいでしょう。
パフォーマンスの向上
筋肉が持っている本来の能力が発揮できるようになれば、スポーツのパフォーマンスも向上します。筋膜が癒着して筋肉の柔軟性が低下していると、本来持っている能力を発揮できません。筋膜リリースにより、筋肉が持っている本来の能力を引き出せます。
肩こりの改善
筋膜リリースを行うと、肩こりの原因の一つである「血液やリンパの流れ」を改善できる可能性があります。
筋膜の癒着により筋肉の働きが弱くなると、筋ポンプ作用による血液やリンパの流れが悪くなる場合があります。筋膜リリースにより、筋肉の柔軟性が改善することで、本来の働きに戻り、肩こりの改善が期待できます。
腰痛の改善
筋膜リリースを行うと筋膜の癒着が解消されるため、筋肉の柔軟性が向上したり、血液やリンパの流れが改善したりするため、痛みの軽減が期待できます。
ただし、腰痛はさまざまな原因によって引き起こされるので、筋膜リリースを行ってもよくならない場合は、医療機関の受診を検討してみてください。
筋膜リリースを行うデメリット
正しい方法で筋膜リリースを行わない場合は、次のデメリットが考えられます。
・炎症が起きてしまう
正しい方法で筋膜リリースを行わないと、筋膜を傷つけてしまい痛みが出現したり、症状が増悪したりする可能性があります。また、傷がつくことで筋膜に炎症が起こり、腫れや赤み、熱感などの症状が出ることも考えられます。
ケガをしていたり、痛みやこりなどの症状が重い場合は、医師や理学療法士などの専門家に相談してから行ってみてください。
筋膜ローラーの正しい使い方
筋膜ローラーは筋膜リリースを行うための道具です。ここでは筋膜ローラーの正しい使い方を紹介します。
使用手順
1.筋膜ローラーを床に置きます。
2.ほぐしたい部位を筋膜ローラーの上に乗せます。
3.ゆっくりと体重を乗せて、痛みのない範囲で前後に動かします。
刺激の強さ | 痛みを感じない強さで行う |
---|---|
1回の使用時間(1部位) | 1部位20〜30秒程度から始め、慣れてきたら90秒程度行う |
実施回数 | 1週間に3回程度行う |
まずは短い時間から行い、筋膜ローラーを使用した後に、痛みやだるさなどが出ないことを確認してから、徐々に時間や回数を増やしましょう。
筋膜ローラーを使用した後に、「身体が軽くなる」「動きがよくなる」といった効果が実感できる刺激の強さ、使用時間、実施回数を探してみてください。
筋膜ローラーの注意点
筋膜ローラーは、使い方を間違えると逆効果になる可能性があります。筋膜ローラーを使用する際の注意点は次の2つです。
・炎症が起きている部位は行わない
それぞれについて解説します。
痛みを感じる強さや部位で行わない
筋膜ローラーに体重を乗せ過ぎないようにしましょう。痛みが出るほど体重を乗せてしまうと筋肉や筋膜が傷ついてしまい、炎症を引き起こす原因になる可能性があります。
また、骨や関節に筋膜ローラーが当たると痛みが出る場合があります。周囲の皮膚や筋肉の損傷を引き起こす可能性があるので、注意してください。
炎症が起きている部位は行わない
腫れていたり赤みがあったりする部位は炎症が起きていることがあるため、そのような部位で筋膜ローラーを使用するのは控えましょう。
炎症が強くなったり痛みが出たりする可能性があります。炎症が落ち着いてから、少しずつ再開しましょう。
筋膜ローラーの効果を高める方法
筋膜ローラーの効果を高める方法は次の4つです。
・筋肉が硬い部位を重点的に行う
・ストレッチも合わせて行う
・入浴後に行う
それぞれについて解説します。
不調の原因になっている筋肉の場所を知る
肩こりや腰痛などの原因となる筋肉の場所を調べて、その部位で筋膜ローラーを行うと効果的です。
肩こりであれば「肩こり 原因 筋肉」と検索すると、原因となる筋肉の画像が出てきます。その筋肉の場所をイメージして、筋膜ローラーを使用してみてください。
筋肉が硬い部位を重点的に行う
筋膜ローラーを使用している部位で、硬くなっているところがあるかを触って確認してみてください。硬くなっている部位を重点的に行うと効果的です。
触っても硬い部位がわからない場合は、「親指で押したときに痛みがあるか」を確かめてみてください。強い痛みでなくても、「ほかのところと比べると痛い気がする」という部位は、筋肉が硬くなっている可能性があります。
ストレッチも合わせて行う
ストレッチにより、さらに筋肉をほぐすことで筋肉の柔軟性向上、疲労回復の効果が期待できます。筋膜ローラーを使用した部位の筋肉のストレッチも合わせて行ってみてください。
入浴後に行う
入浴後に筋膜ローラーを使用すると効果的で、かつ組織を傷つけるリスクも下げることができます。
身体が冷えている状態では筋膜や筋肉などが硬くなっているため、この状態で筋膜ローラーを使用すると、組織に損傷を与えてしまう可能性があります。
入浴後で筋膜や筋肉が温まって、柔くなっている状態で筋膜ローラーを使用すると効果的です。
筋膜ローラーの効果を実感できる代用品
筋膜ローラーと同じような効果を実感できるものに、テニスボールやゴムボールがあります。
硬いボールでは、痛みが出たり組織を傷つけてしまったりする可能性があるので、柔らかいボールで試してみてください。これらを痛くない程度に身体に押し付けた状態で転がして使います。
ゴルフボールのような硬いボールしかない場合は、足の裏で踏みつけて転がしてみましょう。足の裏がスッキリする感じが得られるはずです。
筋膜リリースに興味はあるけど、筋膜ローラーをいきなり買うのに抵抗がある方は、代用品で試してみてください。
まとめ
筋膜は身体の骨や筋肉、血管、神経など、あらゆる組織の周りを包んでいます。デスクワークや長時間の偏った姿勢で作業すると、筋膜が歪んだり癒着したりします。
その結果、筋肉の柔軟性が低下したり、関節の可動性が低下したりして、肩こりや腰痛につながる場合があります。筋膜リリースを行うと、このような身体の不調の改善が期待できます。
筋膜リリースを手軽に行うために筋膜ローラーがあります。筋膜ローラーを正しく使用すると肩こりや腰痛が軽減するでしょう。
まずは代用品のテニスボールやゴムボールからでもいいので、筋膜リリースの効果を実感してみてください。
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加藤真太郎
理学療法士/ダイエットインストラクター/姿勢改善アドバイザー
回復期の病院で8年間勤務し、その後は養成校の教員として働いている。副業として介護・医療分野を中心にライター業、筋トレ関連のブログ運営を行っている。プライベートでは3児の父親であり、日々子育てと仕事に奮闘している。
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