五十肩の方必見!自宅でできる棘下筋のストレッチで肩をラクにする方法を紹介
公開日:2024.06.12
文:柴田 太資(トレーニング指導者 大分高校・中学校サッカー部トレーナー)
「けがをしているわけではないけど、肩に違和感がある」「肩が痛くて動かしにくい」と感じている方はいませんか?
40代頃から肩の違和感や痛みに悩まされる方も多く、医師や整体で五十肩と言われた方もいるのではないでしょうか。こうした痛みに対してアプローチする筋肉の1つが、肩甲骨と肩関節をつなぐ「棘下筋(きょくかきん)」です。
この記事では棘下筋の役割を解説するとともに、肩の痛みにおすすめのストレッチ方法を紹介します。棘下筋をやわらかくして、肩の悩みを解決していきましょう。
棘下筋とは?棘下筋の役割
棘下筋は、肩甲骨から上腕骨(腕の骨)に向かって伸びる筋肉で、胴体と腕を繋ぐ役割をしています。ボールを投げるなどのダイナミックな動きを行うとき、ボールと一緒に腕が前に飛んで行かないように繋ぎ止めてくれる役割をしています。
棘下筋は主に、腕を横に広げて後ろに引いたり、腕を外側にひねったりするときに働きます。そのため、棘下筋が損傷したり固くなったりすると、腕を後ろにまわす動作などが難しくなり、スポーツをするときだけでなく、日常生活でも困る場面が増えます。
ストレッチで棘下筋の柔軟性を維持し、肩の痛みや違和感を改善していきましょう。
棘下筋のストレッチ効果とは
棘下筋のストレッチの効果は次の3つです。
● 棘下筋の柔軟性向上と可動域拡大
● 肩全体の活性化
● 肘や手首の負担軽減
棘下筋は肩甲骨のある背中から肩をつなぐ役割があるので、ストレッチによって棘下筋以外の部分にも効果が表れます。詳しく見ていきましょう。
⒈ 棘下筋の柔軟性向上と可動域増大
棘下筋をストレッチすることで筋肉がやわらかくなり、腕を前後に大きく動かしたり、ひねったりするといった可動域が広がります。
上着に腕を通す、ブラジャーのホックをする、背中を洗うといった背中側に手をまわす動きがやりやすくなるほか、五十肩や腱板損傷などの予防にもつながります。
⒉ 肩全体の活性化
ストレッチによって棘下筋が正常な状態になることで、肩全体の筋肉も活性化されます。
棘下筋が固くなったり傷ついていたりすると、棘下筋のまわりの筋肉に負担がかかります。腕を上げる役割のある三角筋や、肩甲骨の動きをサポートする僧帽筋などが、棘下筋のサポートのために本来の役割を果たすことができず、その結果、肩全体の動きが悪くなってしまいます。
棘下筋が本来の役割を果たすことができれば、肩まわりの多くの筋肉が本来の役割に徹することができるので、腕や肩の動きがスムーズになるのです。
⒊ 肘や手首の負担軽減
棘下筋を含む肩まわりの柔軟性は、肘や手首の負担軽減のためにも重要です。
棘下筋が固くなり肩関節の動きが悪くなると、腕全体をひねる動きが硬くなるので、からだは自然と肘や手首でその分をカバーするようになります。肘や手首がその負担に耐えられなくなると、肘や手首を痛める可能性もあります。
たとえば、テニス肘、ゴルフ肘、野球肘などのスポーツによる痛みや、手首の腱鞘炎など、肘や手首の使いすぎが原因と言われるけがも、棘下筋などの肩まわりの固さが要因になっていることもあるのです。
肩まわりをやわらかくする棘下筋のストレッチ
棘下筋のストレッチのポイントは腕を内側にひねることと、腕を体の前にひっぱることの2点です。
棘上筋の固さによって、必要なストレッチやエクササイズが変わります。
ここからは、棘下筋の固さに合わせたストレッチやエクササイズをレベルに分けて紹介していきます。
1. 立って行う棘下筋のストレッチ【レベル1】
2. 心地良い伸び感を感じた場合、そのままの状態をキープしましょう。片方の腕を20秒ずつ2セットを目安に、左右で同じように行いましょう。
2. 立って行う棘下筋のストレッチ【レベル2】
2. 肘の角度はそのままで手を腰から離さずに、筋肉の伸びを感じるまで、肘を前方に突き出しましょう。片方の腕を20秒ずつ2セットを目安に、左右で同じように行いましょう。
3. 立って行う棘下筋のストレッチ【レベル3】
2. 肘を約90度に曲げたまま、手を腰から離さずに、筋肉の伸びを感じるまで反対の手で肘を前方にひっぱりましょう。片方の腕を20秒ずつ2セットを目安に、左右で同じように行いましょう。
4. 片ひざを立てて行う棘上筋のストレッチ
ひざの上に肘をのせて行う棘上筋のストレッチです。力加減の微調整がしやすく、痛みの不安がある方におすすめです。
2. 手首をもち、地面の方向に筋肉の伸びを感じるまで押し倒します。片方の腕を20秒ずつ2セットを目安に、左右で同じように行いましょう。
5. アームツイストエクササイズ【レベル1】
体操のように動き続けるエクササイズです。
棘下筋とそのまわりの筋肉との協調性を高める訓練にもなります。
2. 反対の腕も水平に伸ばし、手のひらを地面に向けます。
3. 空と地面に向けた手のひらが互い違いに入れ替わるように、テンポ良く肩のつけ根から腕全体をひねります。交互に10往復2セットを目安に行いましょう。
6. アームツイストストレッチ【レベル2】
アームツイストストレッチは、肩に痛みのない方向けのストレッチです。
2. 反対の腕も水平に伸ばし、肘を約90度に曲げて指先を地面に向けます。
3. 空と地面に向けた指先が互い違いに入れ替わるように、テンポ良く肩のつけ根から腕全体をひねります。交互に10往復2セットを目安に行いましょう。
⒎ コンプレッションストレッチ
フォームローラーやテニスボールなどの道具を使って、棘下筋を圧迫しながら伸ばすストレッチで、肩こり(棘下筋あたりのこり)がある方におすすめです。
2. 心地良い圧痛を感じる程度の力を加えながら、ゆっくり小刻みに動きます。片方30秒ずつ2セットを目安に、左右同じように行いましょう。
上記で紹介したストレッチとエクササイズをすべて行う必要はありません。紹介したものの中でやってみて心地良いと感じるものを選んで試してみてください。どのストレッチも姿勢や使う道具などの違いはありますが、腕がまわしやすくなったり、血行が良くなる、肩まわりが温まるなどの効果が期待できます。自分のお気に入りのストレッチを見つけてください。
棘下筋ストレッチの注意点
紹介したストレッチはどれも効果が高いものですが、間違った方法で行うと効果が出ないどころか、けがにつながるおそれもあります。注意するポイントを押さえて、安全にストレッチを行いましょう。
姿勢に注意する
ストレッチをするときに猫背のような悪い姿勢では、肩甲骨が開いたり、肩がすくんで肩甲骨の位置が動いてしまうと、棘下筋をうまく伸ばせません。胸を張り、背筋をスッと伸ばしたままストレッチを行いましょう。
ストレッチをするときだけでなく、日常生活でも猫背や肩が上がった状態をできるだけ減らし、背筋を伸ばすことも大切です。
心地良い力加減で行う
ストレッチが強すぎると力が入りすぎてしまい、交感神経が刺激されリラックスしにくくなります。リラックスしていない状態では、ストレッチの効果も弱まります。また棘下筋は特別強い筋肉ではない上、棘下筋のまわりには小さい筋肉や靭帯、関節包など繊細な組織もあるため、力のかけすぎは禁物です。
ストレッチでけがをしないためにも、心地良いストレッチ感を感じる力加減でやさしく行いましょう。
ストレッチとセットでトレーニングも行う
棘下筋が固くなり、けがをしやすくなる原因の1つに、棘下筋を使っていないことが挙げられます。日常生活のなかではあまり使われない筋肉の1つなので、意識して腕を大きくひねったり、後ろに伸ばしたりして、棘下筋を動かしましょう。
またストレッチに慣れてきたら、チューブやダンベルを使って強化するトレーニングもセットで行うと、さらに効果的です。
棘下筋のストレッチで健康な肩を維持しよう
棘下筋は、デスクワークやスマホの長時間視聴などで猫背になりやすい現代人の生活では、知らないうちにどんどん固くなってしまう筋肉です。逆に、スポーツでしっかりと腕を動かしている方も安心はできません。ダイナミックな動きを支えるために棘下筋を酷使しており、これもまた棘下筋を固くしてしまうことにつながります。
どちらの方にも棘下筋のストレッチは、健康な肩を維持するためにとても大切です。ポイントを押さえて無理のないストレッチを継続し、痛みや違和感のない肩をつくっていきましょう。
<参考文献>
身体運動の機能解剖学 / 著:Clem W.Thompson R.T.Floyd 翻訳:中村千秋
肉単 語源から覚える解剖学英単語集筋肉編 / 著:原島広至
柴田 太資
プロアスリートのトレーニング指導、放課後等デイサービスセンターや学童保育など子どもの運動指導、健康増進のためのパーソナルトレーニングなど、幼児から高齢者まで幅広い世代を対象にトレーニングを指導する。専属契約する大分高校サッカー部はプロ選手も多数輩出する全国大会常連の強豪校。パーソナルトレーニングジムの経営や24時間型フィットネスクラブの運営にも携わる。
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