第33回病院・施設でのエレベーター乗降マナー(前編)
「乗る前」と「乗り方」
公開日:2019.06.03 更新日:2021.04.07
文:村尾 孝子
薬剤師/医療接遇コンサルタント
エレベーターに乗る前から周囲へ気配りを
エレベーターに乗るときは、まずボタンを押して待ちますね。患者さんや上司とエレベーターを待つときは、目下の人がボタンを押します。他に待っている人がいない場合、ボタンのそばに立って待っていると、その後の対応がスムーズにできます。エレベーターの乗り降りでは、降りる人が最優先。降りる人の邪魔にならないよう、扉の前ではなく扉の脇で待ちましょう。特に患者さんが降りる人とぶつかるようなことがないよう十分配慮しましょう。どんなに急いでいても、降りようとしている人を押しのけて我先にと乗り込むのはマナー違反です。
院内ではストレッチャーやベッド等での移動もありますし、セラピストが車椅子の患者さんを案内することもあります。満員の場合や乗るスペースがない場合は、無理せず次を待ちましょう。待つと決めて、扉が閉まっている途中でボタンを押してしまうと、閉まりかけた扉が再び開いてしまいます。見送るエレベーターの扉が完全に閉まり動き出したのを確認してからボタンを押すのも、思いやりのマナーです。

「乗る時」は患者さんの安全確保を最優先で考えて
1人の患者さんと乗る場合、エレベーターホール側のボタンを押しながらもう一方の手で扉を押さえ、「お先にどうぞ」と誘導して患者さんを先にエレベーターへ乗せます。患者さんが安全に乗ったことを確認したら自分も乗り込み、操作盤の前に立って【閉】ボタンを押します。
目下の人はエレベーター内の安全を確認してから患者さんを中に誘導し、操作盤を操作する役割があります。先に乗っている人がいない場合、目下の人が先に乗り込むと、エレベーター内に患者さんを一人にしないという配慮が伝わります。その際は「お先に失礼します」と言ってから自分が先に乗り込み、操作盤の前に立って扉が閉じないように手で押さえながら、患者さんを中に誘導します。
複数人で待っている場合は、目下の人が先に乗ります。全員が乗り込んだことを確認してから【閉】ボタンを押します。エレベーター内に人が乗っているときは、エレベーターホール側のボタンを押して、もう一方の手で扉を押さえ、すべての患者さんが乗りこんでから自分も乗りましょう。患者さんと上司が同乗する場合、患者さんが先に乗り、その後上司が役職順に乗ります。

エレベーター内では目下の人がボタン操作
エレベーターに乗ったあとも、操作をするのは目下の人の役目。操作盤の前に立ち、途中の階から乗ってくる人がいれば開閉ボタンを操作したり、「何階ですか?」と行き先階をたずねてボタンを押したりします。目上の人が操作盤の前に立っていてスペースに余裕があるときは、「代わりましょうか」とひと声かけて操作を代行しましょう。
なお、操作盤の前に立つときは、目上の人に後姿を見せるのは失礼に当たるため、できるだけ壁に背中を向けるようにします。身体を少し斜めにすると、乗っている人の状況や要望を把握しやすくなります。
他の人に操作してもらうときは、操作ボタンを押してもらったら「ありがとうございます」、降りる際にも「ありがとうございます」「失礼いたします」などの挨拶や会釈をしましょう。
混雑しているときは上座・下座を考え実践するのが難しいこともありますが、どんな状況でも患者さんの安全確保が最優先。患者さんや同乗者が気持ちよくエレベーターに乗れるよう、常に思いやりの気持ちで行動しましょう。
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村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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