理学療法士として知っておきたい「天気痛」のメカニズムと対処法
公開日:2015.09.24 更新日:2015.10.13
理学療法を受ける患者さんのなかには、その日によって体調が変わる人も少なくありません。外部からさまざまな影響を受けて体調の変化を訴える患者さんのなかでも、気候の変化を敏感に感じ取り、痛みを訴える方に対しては、どのようなアプローチを行えばよいでしょうか。リハビリ中に活用したい「天気痛」のメカニズムと対処法を紹介します。
気象病と天気痛
患者さんのなかには「雨が降ると関節が痛い」「古傷が痛むとその後、雨が降り出す」と天候に反応する方がいらっしゃいませんか? 気象の変化は知らず知らずのうちに、わたしたちの身体に見えない刺激を与えています。こうした気象の影響を受けて起こる症状を「気象病」といい、天気が悪くなると痛みが悪化する現象は「天気痛」と表現されます。気象病には、痛みだけではなく憂鬱(ゆううつ)な気分になるといった精神面での変化が起こる場合もあります。
天気痛のメカニズム
天気痛が起こる原因のひとつに、自律神経があります。自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、そのバランスで身体のさまざまな臓器の機能を調節しています。
気圧の変化は、副交感神経を刺激するというメカニズムがあります。
低気圧下では酸素濃度が低下するために、エネルギー産生が弱り、生命維持のために身体を休ませようとする反応に傾きます。心身のリラックスを司る副交感神経も、優位になりすぎれば脱力感を招きます。そのため日中でも眠たかったり気だるかったりして、体調に合わせて精神的にも落ち込みやすくなるようです。また痛覚神経にも影響を与え、痛みにも敏感になってしまうのです。
こうした気圧の変化を感じるのが、内耳にある気圧センサー。自律神経のバランスが崩れるとセンサーの機能が混乱し、痛みや不調を招きやすくなるとされています。
気圧変化で促される炎症物質「ヒスタミン」の影響も
天気痛を引き起こす、もうひとつの要因として考えられるのは「ヒスタミン」の影響です。ヒスタミンは毒物やアレルギー物質などが体内に侵入した際に、痛みや炎症を引き起こす物質で、低気圧のときに多く分泌されるといわれています。また、ヒスタミンによる刺激で筋肉や関節では血管を収縮させてしまいます。気圧の低い場所では血行が悪くなり、ますます痛みが出やすくなるというわけです。
天気痛緩和の対処法
気圧の影響を受ける根底には自律神経の乱れが隠れています。天気痛緩和のためにも自律神経の反応をより安定させる対策を提案してみましょう。通常の有酸素運動やかるいストレッチに加え、質のよい睡眠や休養を促します。ただし、ヒスタミン由来の炎症症状をもつ患者さんの場合、有酸素運動で患部に負担をかけると悪影響となることもあるので注意が必要です。また、自律神経安定のためには、食事からのアプローチも効果的です。特にマグネシウムは神経情報の伝達に関与しているため、積極的に摂取したいミネラルです。精神を安定させる役割もあり、不足するとイライラしやすくなります。食品では、豆類、種実類、海草類、魚介類に多く含まれています。
気候変化による症状への新たなアプローチを
このように、天候による体調の変化は、自律神経の乱れとヒスタミンの影響が考えられます。このメカニズムを理解すれば、患者さんの変化にいち早く気づける理学療法士として周囲からの信頼につながることでしょう。患者さんだけでなく自分自身のメンテナンスにも活用しながら、新たなアプローチ法としてケアの一環に取り入れてみてはいかがでしょうか。自律神経を整える運動、休養、食事を心がけ、気圧の変化に負けない日々を過ごしましょう。
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