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リフレーミングの効果とは?リハビリや介護・看護での活用事例

公開日:2021.10.08

リフレーミングとは?「ものごとの捉え方」を変える技術とリハビリ現場での活用法

文:中山 奈保子
作業療法士(教育学修士)

私たち人間の行動やものの見方・考え方は、自分で認識している以上に過去の経験や思い込みによる影響を受けています。

たとえば、何か苦手な場面に直面し、つらさや不安を感じているとき。「私にはどうせできない」「また同じ失敗してしまった。自分はなんてダメなんだろう…」などと、ネガティブな思考からなかなか抜け出せずにいるとき。これらは「経験からくる自身の“思い込み”(心理的枠組み)がもたらすもの」です。

しかし、いままでとは違った視点や考えを持つことができれば、「これは上手になれるチャンスかもしれない」「この経験を活かせば次はきっと大丈夫!」など、一瞬にして目の前の景色が明るくなるのではないでしょうか。

そこで今回は、心理的枠組み(認知・思考・イメージ)の変化を促す概念「リフレーミング」についてお話しします。

リフレーミングとは?心のフレームをプラスに転換する考え方

▼リフレーミング(reframing)とは?
これまで当たり前のように自分自身に組み込まれていたものの見方・考え方といった「心の枠組み」(フレーム)を組み直し、新しい見方・考え方に転換すること(転換できるようになること)です。

悩みや問題を抱えて落ち込んだり、行き詰まったりした状態にあるとき、「リフレーミングによって、新たな選択肢を見いだしたり、やる気を取り戻したりできる理想的な心理状態にしていくこと」を目的としています。

リフレーミングは、1970年代のアメリカで生まれた心理学:Neuro Linguistic Programing(神経言語プログラミング:NLP)をベースとした技法で、物事を前向きに楽観的に考えようとするポジティブシンキングと共通する部分もありますが、リフレーミングでは新たな気づきを得るためにいくつかの手段があります。

「失敗」の定義を「チャレンジしたからこそ感じる思いや経験」と再定義したり、「本当に失敗だったのか」ともう一度問い直してみたり、「自分以外の人がこの事象をどう感じるのか」を考えてみたりするのもそのひとつです。

リハビリテーションで活用できるリフレーミング技法

リフレーミングとは?「ものごとの捉え方」を変える技術とリハビリ現場での活用法
リフレーミングは、自分自身が行き詰まった状況を打開する方法としてはもちろん、医療、福祉、教育をはじめとした対人支援においても活用できます。

看護領域の文献からリフレーミングを促す技術について、具体的な記載がある複数文献を比較検討した研究報告があります。そこでは「リフレーミングを促す技術には、『情緒的サポート』『意味の捉え直し』『強化』の3つに分類できる」としています。

参照文献
高知女子大学看護学会誌 VOL39,pp43~50 2013
研究報告 困難事例に対応する看護師のリフレーミングを促す技術
兼折 友美子・畦地 博子

リハビリセラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)の業務での活用例を紹介しつつ、解説していきましょう。

(1) 情緒的サポート

対象者の心理的枠組みの変化を促すためには、情緒面でのサポートが必要になります。

具体的には、対象者がいま抱えている思いを聞き取ったり、否定的な感情にある対象者にいまできていることを肯定的に評価したりする関わり方です。「あなたがそう思うのも当然です」「大丈夫ですよ」など、相手を尊重しつつ、精神的な支えになることが求められます。

対象者の心理状態を理解することが、リフレーミングを促すことにつながります。

(2) 意味の捉え直し

リフレーミングの中核となる、「ものごとに対する見方」の変容を促す技術です。

いくつかの方法がありますので、代表的なものをご紹介しましょう。

2-1.人の視点に立ってみる

自分ではなく、違う人の立場からものごとを見つめ直すことを促します。

たとえばやる気を失っている対象者に「お子さんは何と言っておられますか?」と尋ね、子どもの立場からものを見るように促すことで、意味の捉え直しをサポートします。

2-2.逆説的にものを見る

否定的な見方を逆説的に考え、意味の捉え直しを行うものです。

具体的には、本人がマイナス要素と捉えていることを、逆に強みとして言い換えることで意味の捉え直しを行います。

たとえば、次のように言い替えられます。

「飽きっぽい」→「好奇心旺盛」
「頑固」→「自分の意見を持っている」

2-3.変化に注目する

変化を実感できるように導くことで、意味の捉え直しを促します。

対象者の身体状態やリハビリで改善した部分などを丁寧に伝えることで、「リハビリが前進している」「希望が見えてきた」と感じてもらうこともできるはずです。

2-4.知識を提供する

対象者が知らない知識を提供することで、意味の捉え直しを促します。

対象者が抱える課題を分析し、その時点で課題解決に効果的だと思われる知識や技術を教えるものです。リハビリの専門家であるセラピストが本領を発揮できる部分だと言えます。

まずは対象者の課題を明確にし、必要に応じて多職種連携を行うことで、より効果が高まることが期待できます。

2-5.見方のモデルを変える

「こういう見方をしたらどうなるか?」を変えることで、意味の捉え直しを促します。たとえば対象者が不満を訴えてきたとき、クレームとして捉えるのもひとつの見方です。

見方を変えれば、「不安や心配があるのかもしれない」とも捉えられます。あるいは「言いにくいことをあえて言ってくれた」とも捉えられます。見方のモデルを変えることで、対象者の本心やニーズをくみ取ることもできるかもしれません。

(3) 強化

リフレーミングによって変えられた心理的枠組み(認知・思考・イメージ)を対象者の中で強め、問題の解決や、継続を促す技術です。新たに得た気づきを日常に還元できるよう繰り返し意識付けることにあたります。

具体的な方法としては、「意味の捉え直し」を促す技術を繰り返すことで、リフレーミングの強化が期待できます。

たとえば、「知識を提供する」技術で枠組みを変える促しを行った後、一緒に新たな取り組みを行い、「変化に注目する」技術で改善点を指摘して気づきを与えるなど、複数の「意味の捉え直し」を促す技術で強化を図ることもできそうです。

対象者と繰り返し関わりながら精神面でも丁寧なケアを行うことが、リフレーミングの強化につながります。

リハビリや介護の現場で役立つリフレーミングの具体例

リフレーミングとは?「ものごとの捉え方」を変える技術とリハビリ現場での活用法
ここまでお話ししたことでわかるように、リフレーミングの中核である「意味の捉え直し」を促すためには、「情緒的サポート」が不可欠です。そして、課題解決に向かわせたり、前向きな心理状態を継続したりするためには、「強化」のプロセスが欠かせません。

これらを踏まえて、リハビリの現場でどんなふうに活用できるのか、具体例を考えてみましょう。

歩行訓練に励むAさんを対象にした場合

脳卒中により手足や脳に後遺障害を負い、新たな生活に適応しようとリハビリに励むAさんは、近い将来の生活を見通せず前向きな気持ちになれずにいる。そのような中、歩行訓練中になんども同じ場所で失敗をしてしまい、「もともと集中力がないのに、病気のせいでいまはもっと…」と落ち込んでいた。

まずはご本人の心理的枠組みがどのようなものか、いまどのような心理状態にあるのかを理解することが必要です。集中力が本人にとってどのような力なのか、その力はいま必要としている力なのか、集中力があれば失敗はしないのかなど、対話と傾聴を繰り返して、少しでも多くの感情を引き出すことが求められます。

不安に思っていること、自信を失っている理由などがわかれば、「意味の捉え直し」の技術を用いて、リフレーミングを行うことが可能です。

「足だけではなく、お腹や肩、身体全体の使い方や角度、たくさんのことに意識を向けられていたのですね!(いろいろなところに意識できるのですね)」(逆説的にものを見る)
「今日は昨日より1mも多く歩けましたよね!そこまで意識できるなら、よりキレイで安定した歩行を目指せますよ」(変化に注目する)
「Aさんなら、こういうリハビリのほうが向いているかもしれません。もう少し歩けるようになったら試してみませんか」(知識を提供する)

セラピストは利用者に寄り添いながらリフレーミングをサポートすることが可能ですが、相手の気持ちや状況に十分配慮できていないところで、無理に心の転換を図ろうとするのは危険です。十分な情緒的サポートがないまま相手の心に触れようとすれば、不信感を与えるだけではなく、さらなる劣等感や自尊心の低下を招く恐れがあります。

情緒的サポートについても常に念頭に置きながら、リフレーミングを促す関わりを続けていくことが重要です。

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中山 奈保子

中山 奈保子

作業療法士(教育学修士)。1998年作業療法士免許取得後、宮城・福島県内の医療施設(主に身体障害・老年期障害)に勤務。
現職は作業療法士養成校専任教員。2011年東日本大震災で被災したことを期に、災害を乗り越える親子の暮らしを記録・発信する団体「三陸こざかなネット」を発足し、被災後の日常や幼くして被災した子どもによる「災害の伝承」をテーマに執筆・講演活動を行っている。

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