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セルフコントロールとは?自己コントロール能力を鍛える4つの方法

公開日:2021.07.08

医療従事者が身につけたい「セルフコントロール能力」とは?

文:中山 奈保子
作業療法士(教育学修士)

医療従事者や対人援助職は、職業性ストレスが多いと言われています。

ストレスにさらされ続けると、不安や葛藤、意欲や集中力の低下といったストレス反応が起きます。体も心も疲れ切ってしまい、「仕事に行きたくない…」「少しくらいサボってしまおうかな…」など、ネガティブな思考や望ましくない衝動に駆られることもあるのではないでしょうか。

このようなときストレスへの適切な対処が必要なのはもちろんですが、思考や行動を自らの意思で制御する「セルフコントロール能力」が重要な役割を果たします。

そこで今回は、医療や介護の現場で働く専門職の皆さんに向けて、セルフコントロール能力の高め方や、私が実際に取り入れてきた方法をご紹介します。

セルフコントロール能力とは?自分の思考や行動を統制するスキル

セルフコントロール能力とは、ちょっとした誘惑に負けないよう、思考や行動をコントロールするスキルのこと。

どうするのが望ましいかわかっていても、目の前の誘惑や欲望に惑わされる…と言う経験は、誰にでもあるものです。

たとえば、このような葛藤をした経験はありませんか?

・今すぐ起床しないと遅刻!わかっているけれど、もう少し寝ていたい…
(今日は少し遅れて行こうかな)
・事務作業がまだ終わらない、今日もあっという間にこんな時間。でも…
(スマホに手が伸びSNSをチェック)
・もっと技術や知識を磨かないといけないけれど、どうしてもやる気が起きない…
(今日の勉強会は参加を見送ろうかな)

頭の中で天使と悪魔が言い合いをするなか、「今、欲望に負けたら大変なことになってしまう!」と、自らの思考や行動を統制する力こそが、セルフコントロール能力です。

セルフコントロールはできなくて当たり前!?

医療従事者が身につけたい「セルフコントロール能力」とは?
セルフコントロール能力には、多かれ少なかれ「葛藤」がつきもの。長期的に大きな価値をもたらす目的があるにもかかわらず、その達成を妨げるような小さな目的があらわれたとき、葛藤が生じます。

たとえば、ダイエットで考えてみましょう。「夏までに痩せる!」という大きな目的と、目の前にあるケーキを今すぐ食べたいという小さな目的。それぞれの目的を満たすための行動は、当然ながら相容れません。

小さな目的は、手を伸ばせばすぐに叶えることができ、「とろけるように甘くておいしい」という具体的なイメージも容易に浮かんでくるので、抗いがたい魅力を持っています。

対する「痩せる」という大きな目的は、容易には手が届かず、達成したときのイメージも抽象的なので、ともすれば先送りにしがち。「食べないほうがいいことはわかっているけれど、どうしても食べたい」という強い葛藤が生まれます。

このような葛藤状況は、私たちは日常生活の中で大小さまざまに経験しています。欲望や誘惑に負けてしまい、「自分はなんてダメなんだろう」と落ち込んでしまうこともあるのではないでしょうか。

研究論文「セルフコントロール尺度短縮版の邦訳および信頼性・妥当性の検討 尾崎 由佳(東洋大学)後藤 崇志(京都大学)小林 麻衣、沓澤 岳(東洋大学)」によれば、葛藤状況において望ましくない目標に従ってしまう割合は48%にも上るそうです。

セルフコントロールの失敗は、誰もが日常的に経験しているのです。

しかし、セルフコントロール能力によって衝動的な欲求や行動をコントロールすることができれば、長期的な価値を持つ大きな目的に到達しやすくなるのは間違いありません。

「なりたい自分」に近づくためのスキルこそが、セルフコントロール能力だといえます。

セルフコントロール能力を高める4つの方法

セルフコントロールがうまくいかないと、誘惑に負けてしまう、ネガティブな感情を引きずって仕事に差し障るなど、さまざまな悪影響があります。自分の意志の弱さや、精神的な弱さが原因だと考えがちですが、やり方しだいで行動や感情をセルフコントロールすることは可能です。

①ストレスを減らす

セルフコントロール能力には、その時の気分や欲望、意欲(モチベーション)の状態が影響します。その時々の環境(人間関係の状態や置かれている立場など)の影響を受けるため、いつも一定の能力を維持できるとも限りません。

特にストレスで心身が弱っているときは、セルフコントロールも難しくなります。2015年に発表されたチューリッヒ大学による実験でも、ストレスを感じるとセルフコントロール能力が急激に低くなることが示されています。

ストレスの原因から距離を置く、気持ちを開放できる方法を見つけておくなど、自分にあったストレスケアを日ごろから意識しましょう。

②強制的な環境をつくる

魅力的な誘惑の前では、誰だってセルフコントロールがうまくいかないもの。なるべく葛藤を減らす環境をつくることも、有効なセルフコントロール方法です。

たとえば「勉強中はスマートフォンを別の部屋に置く」「ダイエット中なら食材を買いだめしない」など。目の前にあるものに惑わされないよう、「どうすれば〇〇をせずにいられるか」を考え、大事な場面では思い切ってシャットアウトした環境をつくってみてはいかがでしょうか。

③小さなゴールをつくる

合理的な行動を選択するために、いつも我慢するのはかえってストレスが高まります。「ここまで勉強したら、15分間は好きなことをする」「1週間に一度だけ好きなものを食べる」など、小さなゴールとそこまで到達したご褒美を用意してみてください。

大きな最終ゴールまでの道のりは長くても、手が届くところに小さなゴールが見えていれば、今やるべきことに集中できます。

また、ときどきガス抜きして一定の満足が得られることで、その後のセルフコントロールがしやすくなることも期待できます。

④「どんな自分でいたいか」を明確にする

一時的な葛藤に惑わされず、「自分にとってどちらが有益か」を冷静に判断するためには、前提として「(近い将来)どんな自分でいたいか」を常に意識できていることが必要です。

それを実現するために、今日1日をどのように過ごし、どう終えたいかまで具体的に考えてみましょう。この2つのビジョンがいつもしっかりと見えていれば、セルフコントロール能力が発揮しやすくなるはず。紙に書き出すなどして視覚化すると、意識しやすくなります。

セルフコントロール能力に欠かせない「自分らしさ」とは?

医療従事者が身につけたい「セルフコントロール能力」とは?
いろいろな方法をご紹介してきましたが、セルフコントロール能力は自分に厳しくすれば高まるわけではありません。「こうしなくてはいけない」という思いだけでは、ストイックにやるべきことを継続することはできないと思いますし、できなかった自分を責める悪循環に陥りかねません。

誰にでも、意思の力だけではどうにもできない、得手不得手や好き嫌いがあります。

自分はどんな人間なのか、つまり「自分らしさ」を知ることが大事だと考えます。そうすれば、葛藤が生じる場面でも自分らしいやり方を選択することができますから、苦手意識を感じずに済み、無理せずセルフコントロールできるようになるでしょう。

例えば、職場で上司から新しい仕事をお願いされた時。そのお願いごとは、自分が望むポジションではなく、できればやりたくない仕事内容だったとします。でも、上司の頼みを断れば関係性が悪くなるかもしれない、受け入れれば昇格できるかもしれない…こうして客観的に考えると、どちらが正しい、誤っているとも言えません。

どちらの選択にもメリット・デメリットの両面が存在すると言えます。

しかしながら、「どちらがより自分らしい選択か」と立ち止まることで、他者が望む自分ではなく、自分が望む自分に一歩近づくことができます。自分を強く保てていれば、周囲への過剰な気遣いも必要なくなります。

本当の自分らしさを見つけて「セルフコントロールできない自分」から脱する方法

セルフコントロール能力を高める前提としての「自分らしさ」は、どのように強固にしていったら良いのでしょうか。これもいろいろな方法があると思います。

私の場合、SNSで知った専門のコーチ(コーチングの先生)に相談し、定期的に「いま、自分が実現したいことはなにか。それを実現するには、どのような課題があるか?」を言葉にするのをお手伝いいただきました。

一口に「自分らしさ」といっても漠然としています。でも、プロの手を借りて「何をしている自分が最も自分らしいのか?」を言葉にして表明できるようになったことは、常に自分らしい選択をするための強い武器を持つことにつながったと思っています。

私のことを全く知らないコーチと出会い、客観的な視点が得られたことも大きかったのでしょう。コーチとはじめて出会った時の自分と、セッションを終了した時の自分を比べてもらい、自分の言動に何が足りなかったのか実感することができました。

自分らしさを内包したセルフコントロール能力が発揮できるようになると、自然に「自己開示」が上手になると思います。「私はこういう人」「私は、それに同意できない」などと躊躇なく言葉にできるようになります。

セルフコントロール能力と聞くと、「自分を律すること」「意志の強さ」といったイメージが先行してしまう方が少なくないかもしれませんが、自制できない時があっても良いのです。

本物のセルフコントロール能力とは、自分らしい判断や選択をするための、程よい「調整力」なのではないでしょうか。

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参考

8月11日:ストレスと自己管理(8月5日号Neuron掲載論文) | AASJホームページ

中山 奈保子

中山 奈保子

作業療法士(教育学修士)。1998年作業療法士免許取得後、宮城・福島県内の医療施設(主に身体障害・老年期障害)に勤務。
現職は作業療法士養成校専任教員。2011年東日本大震災で被災したことを期に、災害を乗り越える親子の暮らしを記録・発信する団体「三陸こざかなネット」を発足し、被災後の日常や幼くして被災した子どもによる「災害の伝承」をテーマに執筆・講演活動を行っている。

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